放逐
地面に叩きつけれて、ルカは
先程の爆弾から体勢を立て直したノヴォさんとノシロンが、すかさずその瞬間を狙ってルカに跳びかかり針と鞭を伸ばす。
ルカは
「リヒト。今の君の疾さは……まるで」
舌打ちをして悔しがるノシロンの横で、ノヴォさんは驚いて目を丸くする。
その声を遮ったルカの
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!……
ルカは身を前に
「何だお前は!なんで俺らに
僕に殴られた口元から
「クソガキが
ルカは顔や手のあちこちに血管を浮かべると、目にも止まらぬ
僕とノシロンが慌てて後ろへ回避する中、ノヴォさんだけが数ある爆弾の中を
「ノヴォさん!」
「ノヴォ兄!」
2人でバリケード脇の瓦礫の壁に急ぎ隠れると、爆弾が一斉にけたたましい爆炎と爆風を起こす。
舞い上がった爆煙の先ではノヴォさんとルカが戦う影が見えた。
「邪魔すんな
「させる訳ないだろう!」
一瞬感情を
目に見えない組み手の
追撃を試みたノヴォさんは、突如現れた白い影に割って入られて動きを封じられてしまう。
それはツイストスパイラルの波打った白い髪と、耳や口に着けた輪っかピアスを揺らしながら消えるように加速するガリヤ人だった。
「シロン!」
白い
その後を追うように、夜風を突き抜ける甲高い音がヒュンッとルカ達の近くを
───奴の弟?じゃあ今のは、カシミールの銃弾?
ノヴォさんの追撃を振り切った2人は
「何だよ兄貴、もしかして演奏失敗した系?逃げて来てんじゃんよ」
「っるせぇ!俺は追っかけて来たんだよ!お前こそ何逃げて来てんだよ!」
ルカは自分の
「いやぁ、やっぱアイツ強ぇわぁ。でも今日は良い
「黙れよ!瞬間記憶しか能がねぇくせに!こっちは耳が腐りそうなんだよ!」
2人が兄弟喧嘩を始めるうちに現れたカシミールがノヴォさんの
「カシミール。無事で良かった」
ノヴォさんは驚いた顔を見せた。
カシミールは息すら上がっていない。それでも右
きっとカシミールがここまで追い詰められるなんて珍しいに違いない。
「何が『良い
彼女は普段の澄まし顔を変えず、右目でシロンを
言い合っていたアリオス兄弟は
──カシミール、めちゃくちゃ怒ってる……。
「なぁ兄貴、俺早く
「っるせぇっ!まだこれからだろ!1人で満足してんなよ!」
「だって兄貴も実はバテバテじゃん?」
ルカは不服そうに舌打ちをすると、僕をしばらく
「クソガキ、必ずもう一度災いを味わせてやる」
そう言い残して2人は
僕の心臓はそこでようやく落ち着きを取り戻し始めた。激しく脈打って十年は寿命が縮んだ気分だ。
僕は両膝に手をついて深く安堵の溜め息を吐く。
「これから追撃する。カシミール、遠距離補佐を頼む」
「了解」
ノヴォさんが腕当てを整えて、カシミールは慣れた手つきで素早くピオッジアの
「ノシロンとリヒトは警戒しながら少しずつ
「は、はい」
返事をするとノシロンは悔しそうに、そして珍しく沈んだ声で
「すまねぇ……ノヴォ兄……」
「何を言う。ノシロンのおかげで助かった」
「俺……何も……」
「そんなことはない。それに今日は騒がしいみたいだ。リヒトを頼むよ」
「うぃっす……」
ノシロンの小さな返事を聞き届けると、ノヴォさんとカシミールは2人の白い影を追い掛けて闇の中へと消えていった。
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