リガーメの悲劇
それからリアトリス殿は
あまりに純真な彼女は、皇国4区の中で嫌がられる政務も喜んで引き受けた。
ただ人々を想う慈愛の一心のみで……。
政略的な側面に不向きな彼女を、妹と執務のぺフェタステリ家が支え、ルルゴアを
やがてスルグレアの評判は民のみならず四当主直属の議席権を持つ名家達にまで及び、本当にルルゴアを
共に議会政治を採用するクラウディアとガリヤの中で、その筆頭が和平に向けて力を注ぐ以上、調印まではトントン拍子で話が進んでいった。
私もピアナとは会談の度に毒を吐きあってはいたが、
しかし式典の直前まで、私に
「リアトリス殿を信用していない訳ではありません。しかし他民族から避けられている我々が、他国のど真ん中に
式典出立の前、私は父に正直に胸の内を明かした。
「ノヴォよ、それは互いにあって
父は続けて物思いに
「生みの苦しみあって当然。双方に根付いた憎しみは覚悟の上だ。この世界に
「父上……。いざという時は私が……」
「ノヴォ、お前は優しい子に育ってくれた。国内の組手試合で活躍したらしいな。あまりの疾さに『
父のおおらかな
式典当日───。
雪の舞う皇国内リガーメ広場に降り立った父は、リアトリス殿と調印前の挨拶を
それは
雪と花の
───私達は孤独なんかじゃあ無かった。クラウディアにも、こんなにも多くの和平を祝福する声が
その悲願の代表として、リアトリス殿と共に中央に立つ父の後ろ姿は本当に誇らしいものだった。
やがて小さな少女が緊張を
───スルグレアの執事筆頭ぺフェタステリ家の御息女か……。可愛らしいな。これから次の世代達には、
美しく光る世界の中で、
反対勢力のことなど忘れ去る程に見とれていた私は、耳をつんざく轟音に目を醒まされた。
───な……!?
赤い世界が薄らぐ程に
───銃声?……ち……父上……!
ピアナとペフェスタリ家長が慌てて広場中央へ駆け寄り、リアトリス殿と少女を
「父上!………父上ぇ!」
私は慌てて我に帰り、父の元へ駆け寄って上体を起こす。
散った血と傷口の血は、間も無く
「ノヴォッ!これが狙いか!?……何故だ!何故ここまできて裏切ったぁ!」
ピアナが獅子のように
「何を言う、ピアナ!そちらの陰謀では無いのか!自慢のプレアデスとやらは何をしている!?」
「ふざけんな!んなことする訳ねえだろ!
「こちらの仕業だと言うのか!?そんなことがあるはずが無いだろう!わざわざ貴国まで
ピアナは眉を吊り上げ泣きそうな顔を
「駄目よ、ピアナ……」
「リア姉……。喋っちゃ駄目だ!」
父も同じように、苦痛に顔を
「ノヴォ……、止めなさい。ここに来て疑うなど」
「父上!」
父は血霧によって周りを巻き込まぬように傷口を押さえると、
「霧散前の私の血を浴びてしまったのか……。すまない。リアトリス殿、ピアナ殿。貴国の大切な未来を傷つけてしまった」
ピアナは姉君の手を握りながら、父のその言葉にしばし呆然とすると
「す、すまない……、ノヴォ。取り乱した」
「い、いや……、私こそだ。ピアナ」
「と、とにかく治療だ!そっちに医師は帯同しているか!?フィーサ殿に個別の部屋を急いで用意する!」
「すまない。恩に着る」
私達は冷静を取り戻すように息を吐くと、互いに
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