第15話 文明の誤謬 (ノヴォ)
歴史の代償
この命の最後に
もし、願いが一つだけ叶うなら……
───ノヴォ様……。
最後に私を振り向き
彼等は
必死の絶望に打ち
彼等は人として散ったのだ。ただ野性の
雪が降り始めた闇夜を駆ける私の
抑えていた怒哀の心情ではあったが、遥か先にルカの姿を捉えた瞬間、私は
「ルカァッ!」
「
即座に投げつけられた手投げ弾を
手元の針を、プレストの楽曲を奏でる指揮棒のようにしならせようとも、ルカの演奏は私のテンポを離さない。
「何珍しく
ルカの手足の切っ先は目で追えるものでは無かった。
肩先と視線の動きを読み取り、ようやくの
「どいつもこいつも役に立たねぇ!まだまだこんなもんじゃ足りねぇんだよ!魔女の国全部!破壊し尽くさねぇとなぁ!」
「もう止めろ!こんなことを続けてもガリヤに未来は訪れぬ!お前達、
一瞬、ルカの表情は固まった。
「テメェが……!……テメェが
爆砕したルカの
瓦礫に全身を叩きつけられながら、急ぎ立ち上がり対峙の構えを直す。
「元はテメェら穏健派が
ルカの声は、舞う雪をも溶かしそうな程に怒りを帯びていた。
「違う!他者の存在を認め、
「それが馬鹿馬鹿しいってんだ!じゃあ何でサルトランは無くなった!?忘れたなんて言わせねぇ!
ルカの口調は静かにはなったが、そこには絶えず揺るぎない怒りが込められていた。
「敵は他にいる?俺にとっちゃクラウディア全部が敵だ。あいつらは
私は目を
「サルトランの大火……。忘れることなど無い。そこから戦争は止められなくなった」
「全部テメェらがやったことだろうが……。元五高官筆頭、大罪の家名フォーマルハウト。父親は間抜けにも和平の餌に釣られて敵陣に乗り込んで殺された。挙げ句に息子のお前はガリヤを見捨てた裏切り者だ」
「違う!父上は全てを覚悟の上で調印に臨んだ!その後のサルトランのことは、どうしても止められなかった」
「言い訳はもういらねぇ。かつて『雷光』とまで
ルカは手投げ弾を両手に構えた。
「もうテメェらとの遊びにも飽きた」
「もう……、
私は息を吐き、手足に力を込める。
ルカは変わらずこちらを
「ああ。
私は心のどこかで、アリオス家の2人に引け目を感じていたのかもしれない。
違う歴史を辿っていれば、この2人もまた別の人生を歩んでいたのではないかと……。
ふと父の言葉が頭の中を過った。
───この世界に
憎しみは、片方が滅ぶまで終わりを見ない永遠の罰なのだろうか。
神が人に与えた、争いの
私は迷いを断ち切るべく身体中の血を
「ルカ……。もう、ここで終わらせよう」
左足の血管が音を立てて
───その怒りと
投げつけられ、炸裂した手投げ弾を合図にして、私とルカの足は時を同じくして
舞う雪と雪の合間を裂くような応酬を前にして、私は亡き父との記憶を思い返した。
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