孤独な屍人
暫くして涙が止まった後も、僕らの間に会話は一切無かった。
夜の冷気で耳が少し痛い。
警戒してノシロンと共に
「リヒト。ノシロン」
ノヴォさんとカシミールだった。僕は2人の姿を
ノシロンもスネイクを下げながら胸を
「奴らは?」
「去ったよ。ひとまず休止だ。おそらく今日はもう来ないと思うが、皆はいつも通りネメア礼拝堂で待機。休むんだ」
ノヴォさんは夜空を見上げた。
「今日は幸いにも丁度
言われて気がついた。
誰も口を開かない。
辺りには白い
そんな僕らを見兼ねてノヴォさんが
「みんな、新年おめでとう。良く頑張ったよ」
僕らは言われて初めて年が明けていることに気が付く。
ノヴォさんは続けて僕の頭を
「リヒト、どうしたんだい?」
「え?」
「顔……」
ノシロンが振り向いて口を開いた。
「ノヴォ兄すまねぇ。俺が……」
「何でもない!」
僕は慌ててノシロンの声を
「足が
ノシロンは下を向いて、それから何も喋らなかった。
ノヴォさんは一瞬
足が重い。まるで瓦礫を引き
僕はふと前を歩く3人の背中を眺めた。
今まで背負ってきたものの重さが、その背中をとても大きく見せて、僕はいつか皆と並んで歩ける日が来るのかなと、また下を向いた。
今日までのことを振り返り、皆の言葉を思い返しながら、3人の後をついて歩いてゆく。
故郷の夜は僕らに何の声も掛けずに、ひたすら静寂を保って佇んでいた。
「珍しいわ……」
やがて長く続いた
急に歩みを止めた彼女に僕らも釣られて足を止める。
「屍人?」
ノシロンが
もう街とバリケードの中間に差し掛かっているこの辺りで、屍人を見かけることが珍しそうだった。
「あれホントに屍人か?」
「屍人以外に無いでしょう?」
そう言ってピオッジアを構えるカシミールを制止してノシロンが前に出てゆく。
「いいぜ。弾
ノヴォさんも2人と同じように
その脇から顔を
他の屍人とは明らかに違う。
ノヴォさんと同じくらいの
肌も真っ白な部分とそうでない部分があって
服はボロボロでその役割を果たさず、ただの布切れのように体にぶら下がっていた。
「何故襲ってこない?」
ノヴォさんが呟くと、彼もこちらに気付いたようにゆっくりと視線を向ける。
僕はその屍人と目が合うと思わず驚いて息を飲んだ。
目の前の光景を信じられずに、しばらくの間硬直してしまった。
『時間が止まったよう』だとよく言うけれど、その時まさに僕の時間は止まった。
「ま……、待って……」
小さな声で言うと、ノシロンが
「ああ?……お前、また」
「違う……違うよ!待って!」
僕は駆け出した。
「お、おい!」
通りすぎたノシロンが驚いて声を上げる。
カシミールはピオッジアを
「待って!撃たないで!お願い!」
振り向いて叫んだ僕の目から
重たい足を必死に動かして地面を蹴る僕を、屍人はただじっと見つめていた。
───夢じゃ……夢じゃないよね?
───僕はもう……諦めてたんだ。
たくさんの感情が
それでも僕は鼻を
───ずっと、ずっと会いたかったよ……。
───どうして?……今まで何処にいたの?
今まで心の奥に締まっていた思いを、僕はありったけの声に変えて、呼び掛けた。
「お父さぁん!」
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