ビルオレアの奇人
ビルオレア区のほぼ中心に、その当主
3階分程の高さの
本ばかり読んでいて、美術観や
外門や玄関に
カシミールを引き連れて門を叩くと、執事のサンクトが現れて落ち着いた
サンクト・メイア。
ビルオレア家に仕え
スルグレアでいうぺフェタステリ家のような存在で、病気で早くに両親を亡くしたのによくやっている。
昔少し面倒をみてやったことがある。
「スルグレア様、新年おめでとうございます。久しく存じます。カシミールまで……大きくなったね」
「久しいなサンクト、ご苦労だよ。用件は鳥を飛ばした通りだ」
「その件なのですが、突然のことなので当主の都合が合わず、大変に
私は聞く耳も持たずにズカズカと屋敷の中へ入っていった。カシミールも無言で後をついてくる。
「ちょ……ちょっと、待って下さい!」
「いるのはわかっている。何が都合だ。どうせ仕事もせずに読書だろ」
「ちょ、ピアナさぁん、待って下さいよぉ。後で僕が怒られちゃいますよぉ……」
サンクトは慌てて横をついて歩く。
「時間が
「そんなぁ……」
泣き顔を
本人の姿は見当たらない。
───どうせ……ここだろ?
私はそのまま部屋のさらに
「カルナド!」
「ひっ!ピピ、ピアナ!」
幾つかの本が飛んだ。
しゃがみこんで、両手に持った本で顔半分を隠しながらカルナドは私を見上げた。
サンクトは横歩きでスッと死角まで逃げていった。
カルナド・ビルオレア
四高弟の1人、シーニャ・ビルオレアの
私より少し歳上の、昔から
本好きが
顔は悪くないのに
気が弱く、いつもルルゴアに気を
正直言って私はこいつとルルゴアが嫌いだ。
当主室の奥のこの部屋はいわばカルナドの
大昔の物から新しい物まで、
私が扉を蹴った衝撃で幾つかの書物が少し間を置いてからパタパタと崩れ始め、カルナドは慌てふためいた。
「た、たた大切な本が!」
「なぁに。
カルナドは急いで本を直しながら、こちらを
「だだ、黙れ。わ、私は忙しいのだ。ささ最近はこ、こ、古代言語とげ、現代言語の関連法則に忙しい」
続けてキョロキョロと辺りを見渡すと、本の上に
「だ、だだ、大体何だこの手紙は。人のつつ都合も考えずに。そそそれに文章に美しさの
私が昨日、鳥で急ぎ送った手紙だ。私は手に取って紙に出来た
親愛なるカルナド・ビルオレア殿
明日行く
茶は上物を
用意しろ
ピアナ・スルグレア
「素晴らしい出来じゃないか。用件も
私は自身の作に満足して目を閉じ、大きく息を吸って
「そそ、そんなの知ってる。ハ、『ハイク』という文化だろう?し、しかし、どどどどこが素晴らしい出来だ。
「流石、
「わ、わわ私は忙しいと言っただろう?……か、か、帰れ!」
そこまで言ってカルナドはそっぽを向く。
───ほぉ……「帰れ」とな……。
カルナドのくせに珍しく生意気なことを言うものである。
私は本を静かに踏みしめながら彼に近づくと、片手で頭を
「時間が無ぇんだ……。早くしろやコラ……」
「ひっ……」
威圧を込めた声で静かに
「そ、そそ、そんな言葉使い……、語学への侮辱だ……」
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