第7話 涙の流れ着く先 (シエロ)
作戦会議①
僕は出来る
だって僕は
兄ちゃんと同じ目を持ってるんだから……
今年最後の日のお昼過ぎ。
食堂で苺を洗いながら窓の外を見上げると、真っ青な空にうっすらとアルルのお月様が見える。リエラのお月様の方は青白いから、空に溶けてどこにあるのかわからなかった。
お菓子作りを手伝ってくれているリヒト兄ちゃんは、まだ落ち込んでいた。
「話が違う……」
「仕方ないよ、リヒト兄ちゃん。ノシロン兄ちゃんの時なんかもっと時間かかったよ?行かせてもらえるだけでもすごいよ。武器まで
ヒンメル兄ちゃんは小麦粉を大事に大事に
リヒト兄ちゃんの腰には
「確かにピアナ様は『行きたければ』って言ってただけだったけど」
すっかり治ってきた右手で卵をかき混ぜながら、リヒト兄ちゃんはため息をついた。
一度は元気に返事をしていたのにやっぱり納得していないらしい。
「リヒト兄ちゃん、よろしくね」
僕は少しホッとしてリヒト兄ちゃんに笑った。リヒト兄ちゃんは今回は戦いに参加せずに、僕らの護衛をするだけになったんだ。
お話はこんな感じ……。
今年最後の1日は、心臓まで
いつもなら楽しいはずの年越しの日。
僕は明日の火耀日のことを思うとせっかくの1日を素直に楽しめないでいた。
午前中、防衛に関わる僕らは全員ピアナ様に呼び出されて礼拝堂でお祈りをした。
ピアナ様は、いつも戦いの前日の
みんなが無事に帰ってこれますように。彼等の罪を御赦し下さい……って。
それからは奥の部屋に移って、街を
スルグレアの東地区と南地区はとても高い壁に区切られていて、南には壊れずに残った建物もあるけれど、誰もいなくなっている。スルグレアは半分まるごと立ち入り禁止地区だ。
そんな広い場所でノヴォ兄ちゃん達が敵の居場所に困らないように、僕と兄ちゃんはクラウディアブルーを使って見張り番をする。
敵が現れた方角に『発光弾』っていう光る弾を撃って、みんなに知らせるのがお役目。
作戦のお話の時はみんな静かで怖い顔になるから、僕は少し緊張しちゃう。
ピアナ様はお話を始めて間も無く、リヒト兄ちゃんに武器を授けた。
それはノヴォ兄ちゃんと同じ金属の腕当てで、まさかの武器に僕は驚いた。
「いいかい、リヒト。これは敵を倒すためのものではない。自分を、そして大切な人を守るためのものだ」
ピアナ様は静かにそう言いながらリヒト兄ちゃんの腕に腕当てを着ける。
「ここの金具の
丁寧に説明したピアナ様は心なしか気分が沈んでるように見える。
「はい」と返事するリヒト兄ちゃんに、カッコさんも横から声を掛けた。
「リヒト。この針、見たらわかるでしょう?」
まだ中に『ふぃぶりぃな』の入っていない腕当てから
「この針はね、本来は苦しむ人々を医療で救うためにあるものなの。絶対に忘れないで。命を決して
リヒト兄ちゃんはしばらく針を見つめて
「はい!」
僕は少し泣きそうになりながら隣の兄ちゃんに目を移す。
「素敵だ……」
兄ちゃんは
───に、兄ちゃん……。
「必ずお役に立ちます。それで……、敵はいつも何人くらいで来るんですか?何十人?何百人?」
緊張した顔で
みんな、何かを思い出すように嫌な顔をした。
黙り込んで一瞬の間があったから、僕はみんなに代わって答えた。
「最近はずっと2人だよぉ」
「え?……ふ、ふたり?」
「うん。今度もきっとそう」
「え?……た、たった2人?」
リヒト兄ちゃんは驚いて固まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます