第25話幕間1 深紅の悪魔


「ちょっ、回復!ヘイト取らないようにしてって何度も言ってるのに!」


洋館の長い廊下に場違いに大きな声が響き渡る。


「ひんっ!ごめんなさぁい…。ユーリ悪気があるわけじゃないんですけどぉ…。」


注意された本人は眉をハの字にいかにも反省してます、という顔をするが内心こっちをバカにしているのがバレバレだ。



「そうだよ、椿!ユーリちゃんも反省してるしね?ね、ユーリちゃん!」


しかし、特別美人なわけでもなく可愛いわけでもないが垂れ目で特別巨乳な女に男はまんまと騙されるものだ。

わざと布の少ない装備をつけて恥ずかしがっている女でも。



「はぁい!ユーリ次はぜぇーったい出来ます!だから椿さん信じて!!」


…何を信じるんだよこのポワポワ女!

こっちが必死こいて慣れない肉壁やってやってんのに考えなしに回復しやがって!

日頃から注意しててもなんも学習しねぇじゃねぇーか!!


ポワポワ女もとい、肉食獣の行動に巻き込まれた女性には迷惑な話だ。

本人に全く反省も見られない、でもそんな肉食獣を愚かな男たちは擁護する。



「アルフレッドさんてほぉーんと優しいですね!」


その愚かな男が自分の彼氏なら尚更のこと…。


アルフレッドもでれでれ鼻の下伸ばしやがって

誰の彼氏だよ!


はぁーあ、ゲーム内でも一緒にいたいとか言われたのが遠い記憶のようだ。


このパーティは外から見たら完全に地雷なんだろうな。

姫(ポワポワ女)、親衛隊(アルフレッド、その他3名)、邪魔者な私(仮)


正直、私がいつもほとんどモンスター倒してるし?

なんなら壁なんて必要ない速さで倒してるし?

まぁ、ラストアタックは絶対クソ野郎どもに取られるけどな。



え、これ私パーティ抜けていいよね?

もうソロでもイベントクリア出来ちゃう気しかしてこないんだけど?



「おい、椿。何止まってんだよ、どんどんモンスター釣ってこいよ壁の仕事だろ?

もしや本当の足手まといはお前なのか?」


そう下卑た笑い声を上げる過去の想い人の姿は椿の100年、いや1万年の恋を醒めさせた。


本性みたり、ってところかな。



「胸がデカイだけの女に惑わされてる男ってこんなに醜いのね。」


「は?なんだよ。それが彼氏に言う言い方かよ!」


「そうですよぉ、椿さんひどいです!さすがのユーリも怒っちゃうんだからぁ!」



「あぁ、あぁ、勝手に怒ってなさい。

私はこんなパーティー抜ける、こんな掃き溜めにいても何も楽しくないし成長もしないわ。」


そう言って私はその場でパーティーを抜けた。



変に止められるのはめんどくさいから持ち前の脚力ですぐに全力疾走する。

一刻も早く離れたかったのだ。



遠くから叫び声がきこえるが、開放感に喜ぶこの体は誰にも止められない。



「今ならレイドボスだって倒せちゃうわ!」



前方にスケルトンが3体、1人で抜けられるだろうか、いや悩む必要もない私なら余裕。



「ガード、ブレイブオーラ。」


私にだけ補助魔法を使わない魔法使いに幻滅して覚えたスキルを呟く。

そして相手の攻撃なんておかまいなしにぶちかます。



「乱れ突き!」


相手が倒れるまで攻撃する。


「ファイアヒール」


回復してくれる仲間はもともといなかった、あのポワポワ女のせいで。

私は何にも絶対に負けない、負けたくない。



彼女は止まらない、目の前の階段を走り降りさらに先を見続ける。



その後、彼女はイベントをソロで最速クリアという驚異的な結果を達成し、掲示板を大いに騒がせることになる。


その姿は赤い目に赤い髪、まるで炎そのものだ。


そんな彼女の種族はランダム限定の種族サラマンダー、火魔法と高い親和性のある硬い鱗をもち、その特性は彼女の持ち前の能力をさらに引き出した。



彼女が“深紅の悪魔”と呼ばれ、ケイたちと出会うまであと少し…。


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