第21話濃い3人

 今日は待ちに待ったイベントの日!

 意外とすぐだったんだね、まさかショッピングした3日後とは…。


 今回の公式イベントは内容について全くの告知がないらしい。

 僕は掲示板も公式ホームページも見ないからあまりかわりはないんだけど。


 この3日間はカズがソワソワして落ち着きがなかった。

 カズ曰く、レイドボスが出て街の防衛戦になるんじゃないかと予測していた。

ベータ版の最後では製品版で防衛戦が起こるかもという示唆が少しされていたらしい。



『みんなーー!盛り上がってるーー?』


 周りからおーー!という歓声が上がる。


 イベント開始予定時刻の午後3時ちょうど、噴水広場の上空に無数の花火とともに1人の小さな男の子が出てきた。


『僕はこのイベントを進行するAIのララルだよ!』


 彼はAIが操作しているんだ、中に人がいるようにしか見えない!



『今回はMiniature garden world初の公式イベント!!

 題して!「夏だ!お化けだ!!脱出だ!!!」』


『というわけで今回の公式イベントはお化けはびこる洋館からの脱出ゲームだよ!

 ルールを説明するね!


 ールールー


 ・スタート地点から出口を目指す。


 ・途中お化けに捕まるとスタート地点に連れ戻されてしまう。


 ・お化けに遭遇した時は逃げるか倒す。


 ・出口以外のところから出ると即座に奈落に呑まれスタート地点に戻る。


 ・パーティの1人でも外に出れたらそのパーティは脱出完了とする。



 スタート地点はパーティを組んでる人とは絶対に一緒だから安心してね!

 じゃあ5分後に開始する〜!

 準備がまだの人はいそげいそげ〜!』


防衛戦ではないみたい、大勢で戦うのは緊張するし少し安心した。

 なんだか最近脱出という言葉に縁がある気がする。

 あと約5分。

 僕はカズとパーティを組んでいるけど、パーティの枠はまだ4人空いている…。


「2人の方が動き回りやすいかな?でもお化けを倒すとなると2人じゃ無理だよね…。」


「そうだな、かといって知らないやつと臨時のパーティを組むのは大変だし…。」


 うーん、と僕らが頭を抱えているとそこへドルにぃが来た。

 久しぶりのドルにぃだ。


「ドルにぃ!!」


「よぉケイに、カズ久しぶりだな。

 すまん、時間がないから単刀直入に聞くがお前ら2人だけのパーティか?

 もし2人だけなら俺のパーティが4人であと二枠あるから来てくれると嬉しい。」


 ほかの3人の人格は保証するぞ!というドルにぃの言葉は願ってもないことだが。


「どうする、カズ?」


「ケイが良ければお邪魔させてもらおう、流石に2人じゃきついからな。」


「僕はいいよ!じゃあドルにぃよろしくお願いします!」


「あぁ、あと1分しかねぇ。すぐに誘う。

 ほかのメンバーの紹介は中で簡単にするな!」


 あと20秒でイベントが始まる。

 あー緊張する!

 頑張るぞー!!




『イベント開始まで10秒前!5.4.3.2.1!

 ゲームスタート!!!』



 ラルルの開始の合図を聞いた途端光に包まれ気づいた時には建物の中だった。



『みんなが今いるところがスタート地点だよ!

 スタート地点の部屋にはお化けがこないようになってるから休憩なんかはそこでしてね!!』



 スタート地点はロココ調な部屋だった、僕たちしかいない。

屋形内はパーティ別に区切られているみたいだ。


「とりあえずお互い自己紹介からだな。

 俺はドル、木工職人だ。

 武器は大木槌だ。」


「じゃあ次は俺かな、俺はアーサー。

 こんな名前だけどint極の魔法使いさ。

 武器は長杖か棍を使うよ!魔法が効きにくいやつは殴るためにね!」


 ちなみにMGに職業というものはない、その人のスキル構成や行動で周りが言ったり本人が自己紹介で自称するものみたい。

 たしかに職業で言ってもらうとどんなことが出来るのか想像しやすいよね。


「はいはーい次はあたしニャ!あたしはミャーチ!剣闘士だニャ!

 武器は大剣!前衛ニャー!」


「みんなそんなじゃ2人がびっくりしちゃうわよ!

 ごめんなさいね、私はサラ、神官よ。

 武器は棍とアイアンナックル。

 アイアンナックルつけながらでも棍って持てるのよ!暇な時は敵を殴るわ!」



 この4人はみんな元βテスターらしい。

 だからこんなに好戦的なのかな?

 神官が敵を拳で殴るって…。


「僕はケイです。魔道弓士です。

 武器は弓と木の枝で魔法を打ちます!

 不慣れですが頑張ります!よろしくお願いします。」



 よろしくー。と4人がいう。優しい人ばっかりで良かったー。


「最後、俺はカズです。

 農家で、武器は片手剣と盾で回避壁の真似事をしています。よろしく」



「ニャニャ!カズ農家になったのニャー!?」とミャーチさんが驚く。


 カズもβテスターだったなぁ、その時はもっと違う職業だったのかな?


「βの時の双剣の狂戦士からは想像できないね、なんで農家になったの?」


 カズが狂戦士…。なかなか似合うね。


「あーまぁとくにこれと言った理由はないんだが、のんびりしたいのとケイと何か店を開きたかったからな。」



 そうなのだ、僕がこのゲームを始めた理由は自分の店舗を持てること。

 僕の夢っていうか、僕たち2人の夢である何かのお店を開くということがここでなら簡単に叶えることができるからだ。

現実ではまだまだ夢の話だが練習がてらこうしたゲーム内でお店ができるのはとても楽しみなことなんだ。

早くお金を貯めて店舗が欲しいなぁ。



 カズとイベントの準備をしている時に、

 ゆくゆくはカズの畑をもっと広げてその隣に2人のお店を建てたいなと話した。

 いつになるかは分からないがカズと一緒なら意外とすぐに叶いそうだ。



「ニャるほどー、良い理由ニャ!お店ができたらミャーチが常連第1号になるニャ!」


「あらー私だって常連第1号になるわよ?」


「ニャニャ?!常連第1号の座を狙うライバルは多そうニャね!

 ここはケイくんとカズとフレンドにニャって逐一確認しておかニャいと!」



「あ、ミャーチだけずるい!俺ともフレンドなろうね!ケイくんカズくん!」



 それをみてドルさんもサラさんもみんな大笑いをする今日だけで3人もフレンドが増えちゃった!嬉しい!



「よーし、仲良くなれたところで、イベント行くぞ!

 1人捕まっても動じないで前に進むことを約束してくれ。

 落ち着いたら脱出なんて楽勝だ!」


 いくぞー!というドルさんの掛け声にみんなで声を上げる。



「頑張るぞ!!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る