第5話



それから数日間、チョウとうさ子は挨拶をかわす仲になりました


時折、うさ子から手を差し出すと

チョウが手の平に乗るような関係になりました



「今日もキレイな姿を見せてくれて、ありがとう」


「僕も、うさ子ちゃんと会えて嬉しい、ありがとう」


うさ子はニコッと笑い

チョウはパタパタと手の平に留まりながら応えています





次第に、うさ子は


『もしかしたら助けたイモムシかな?』


と思うようになりましたが

その頃にはもうチョウと会えなくなっていました



「会えるかな?」

うさ子はもう一度チョウに会いたくなりました





一方、

その頃のチョウは、とても衰弱していました


もう羽ばたくチカラも残っていません




「僕はもう、ありがとうって言えたからいいや…」


と目を瞑ろうとした時


「チョウチョさん?」


と、うさ子の声がします



なぜ、そこにうさ子がいたのか

チョウには全くわかりませんでした


うさ子も、たまたまかき分けた葉っぱの傍に、チョウがいるとは思ってもいませんでした



互いにビックリしながらも

うさ子はチョウに話しかけました




「あの、蜘蛛の糸にかかってたイモムシさんはチョウチョさん?」



チョウは返事をしたかったのですが、声を出す元気がありません


目を瞑って訴えました



「…そっか、あの時のイモムシさんだったか。

気にしなくてよかったのに」


チョウは抗議しようとしましたが、もう足一本動きません



「でもね、チョウチョさんが頑張って会いに来てくれたおかげで、とても素敵な時間が過ごせたよ、キレイな姿を見せてくれてありがとうね」



チョウチョは泣きたい気持ちになりました

チカラを振り絞って


「ありがとう」


そう言うと、チョウは動かなくなりました




「こちらこそありがとうだよ」



うさ子はポロポロと大粒の涙をこぼします



「もっとお話したかった

もっと一緒にいたかった

もっと……もっと…」



と横たわるチョウに訴えかけます


それでもチョウは動きません

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