第3話 出会い。AND SHE WAS

 リエが務める繊維課部門は、名前の通りの繊維に関わる案件、繊維生産プラントの設計や運営、繊維織物の輸出入、又アパレルブランドの設立や運営を行なっている。

 リエは繊維課に3年前の大学4年からバイトで入り、卒業後は契約社員で働いている。

唯一の肉親である母親が難病で昏睡状態になり、母の介護と歌手を目指すオーディション活動で効率良くお金を稼ぐ為に、リエの高学歴と仕事能力の高さから現職を得られた。


 リエが繊維課に出勤すると、別の先輩から部長が呼んでるからと言われ部長室に行く。

部屋には菱菱商事の社長と繊維課の秋山部長とイケメン白人大男と普通のスーツ姿の日本人男女がいた。

秋山部長から紹介される。

「リエくん、こちらは経済産業省の方で沖田さんと佐藤さんです」

「よろしく」リエ、沖田、佐藤が互いに挨拶する。

 続けて秋山部長からイケメン白人大男を紹介される。

「こちらの方はアレキサンダー・ジョバンニさん。ジョバンニさんはこの度、イタリアのカジュアルアパレルブランド「AND SHE WAS」の新ディレクターに就任しまして、極秘に日本市場を調べたいと言う事で来日しました。リエくんもご存知の通り「AND SHE WAS」さんと菱菱商事繊維課は取引先なので、繊維課でジョバンニさんを出向社員として預かることになりました」

 アレクセイが右手を上げて言う「ジョバンニではなくアレクと呼んでもらって結構です」


 近藤明日香が沖田とLINEで会話する。

近藤明日香(プロフィールの「アレキサンダー・ジョバンニ、イタリアのアパレル会社」って何?)

沖田(僕が考えたんですよ。アレクセイからアレキサンダー、商社の中でも石油課ではなく繊維課なら何かと便利でしょ。我ながらアタマヨスギー。)

近藤明日香(調子乗らないでよ!)


 秋山部長がかしこまり、一回咳をしてから言う。

「それでリエくん、今回君を呼んだ本題なんですが。リエくんには、アレクくんの社内でのサポートと、リエくんが住む高円寺のマンションの隣の部屋をアレクくんの家にするのでアレクくんの世話を1ヶ月だけお願いしたいのですが」

「はあ、社内でのサポートはさせていただきますが、家の方はちょっと・・・」躊躇するリエ。

「リエくん、その点はわかっております。アレクくんのサポートに関して臨時ボーナスを払いたいと思います。言葉に出して言うのは下品なので、1ヶ月これでどうですか?」

秋山部長がスマホに額を打ち込みリエに見せ、驚いた顔のリエはうなずき

「アレクさんの件、引き受けます」

リエは引き受けたが、後に臨時ボーナス額は300万円と判明する。


 アレクがリエに近づく

「アレクです、よろしくお願いします」

「仲河リエです。よろしくお願いします」

2mのアレクは日本語で流暢に挨拶し、153cmのリエと握手する。

「日本語上手いんですね」

「はい、語学が一番才能ありまして、日本語は美しい言葉で大好きですね」

「何ヶ国語くらいできるですか?」

「日本語、英語、イタリア語、ウクライナ語と15ヶ国語くらいは話せますね」

「アレクさん、すごいですね」

「ハハハ、家の方は後で、仕事は明日からよろしくお願いします。色々手続気しますんで。では」

「はい、後で」

部長室を社長と秋山部長と共に出て行くアレク。


 部長室から出て繊維課を通り過ぎていくアレク。アレクの見た目に感心する社員達。女性社員は「ハンサムね~」、男性社員は「俳優さんみたいにカッコイイな」と見惚れている。

我慢できなくなった女性社員が「アレクくーん」と声を掛け、アレクは右手で指2本敬礼をして笑顔で返し繊維課の部屋を出て行く。カッコよさに腰が抜ける何人かの女性社員達だった。


 部長室に残った、近藤明日香と沖田。

近藤明日香が沖田に聞く

「何故、仲河リエさんをアレクくんの担当にしたの?」

「ああ、二人の経歴を見たらね、互いに一人身で身辺に問題があって、そんな二人がくっ付いたら御の字で、僕は恋のキューピッド的な感じでハッピーかなと思いまして」

「沖田キッモ、サイテー」

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