第6話 新聞記者 三浦
「じゃあ、まずは乾杯!!」
幹事である葉室の音頭で、4つの生ビールのグラスが四方から寄ってきて、ガァンとなかなかの大きさの音をたてた。
一気に半分を煽り、はぁーと幸せなため息をつく。
葉室は改めて仲間たちの顔を見回した。
短く切った髪がゆるくウェーブしていて、どことなく洒落て見えるのは、警察官の今野だ。実際はオシャレではなく、ひどい天パで、雨の日などは爆発していると言っても過言ではない。
坊主に近い短髪の男は、消防士の横山。白いポロシャツから突き出た二の腕は、はち切れそうなほどに筋肉でパンパンになっている。
黒縁の眼鏡が妙に似合う神経質そうな男が三浦で、地元新聞の記者をやっていた。
「ヤッちゃんは?」
横山から聞かれて、葉室はお通しのきゅうり漬けに箸をつけながら答えた。
「仕事あがる直前に急患が来たらしくてね、ちょっと遅れるって連絡あった」
「そうか。まあ仕方ないよ、救命医は忙しいもんな」
それからしばらくは、お互いの近況を肴に酒が進んだ。
「今野は刑事になったんだろ。昔のよしみでとくダネくれよ」
新聞記者の三浦が言うと、今野は焼き鳥にかぶりつきながら「馬鹿言え」と悪態をついた。
「俺みたいなペーペーがとくダネになるような仕事させてもらえるかよ」
葉室が愉快そうに笑って今野に言った。
「でも刑事さんになるなんて、すごいじゃないか」
「別にすごくねえよ。刑事なんてきつい仕事、なり手少ねえんだ、手を上げればすぐに異動だよ」
「そうなのか。ドラマでは花形みたいに言われてるけどな」と横山。
「大都市ではそうかもしれんが、地方ではそんなたいしたもんじゃない」
ああ、変わらないなと思う。今野は昔からぶっきらぼうで、三浦は皮肉屋だ。横山は筋肉馬鹿で、そして薬丸は──
「あーごめーん、遅くなったー」
個室の障子が突然開き、ばたばたとなだれ込んできたのは、肩甲骨くらいまでの長さの黒髪を一つに束ねた化粧気のない女性。
「きたきた、センセー。お疲れぃ」
横山が手に持っていたグラスを軽く掲げて歓迎する。葉室が「とりあえずビールでいい?」と聞くと、「案内されてくる時に注文しといた」と返される。
薬丸は昔からエネルギッシュで男前だ。
まだビールが来ていないというのに、三浦の前にあった焼き鳥を2本手に取って口に運ぶ。三浦が焼き鳥の大皿ごと薬丸の前に場所を変えてから、メニューを見る。
「薬丸は唐揚げだろ。2皿頼……いや1つは山賊焼にしよ」
「なんでもいいよ、私は鳥なら差別しないでなんでも食べる」
「お前、いつか鳥に刺されるぞ」今野の物言いがおかしくて、葉室はけらけらと笑った。
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