↓第47話 ようやく、わかりました。

 勝神の面会を終えた迷子は、一人で星蓮岬にやってきていた。

 夕日が沈みかけた岬は静かで、オレンジ色に染まる水平線に目を細める。


「…………」


 そして身につけていたショルダーポーチから、あるものを取り出す。

 それはカタルシス帳だった。


「…………」


 そこには迷子が気になったことや、彼女が解決してきた事件の詳細などが記されている。

 しかしそれは、なにも現実に起こったものだけではない。

 祖母であるリリィの小説の内容――つまりその中で起こった出来事についても記載されていた。


 ――よって。


 膨大な事件のデータが、その一冊に凝縮されている。


「…………」


 その果てしない情報の中から、事件解決に必要な要素を抜き出していく。

 謎を解いた迷子の経験値が、その奔流が、彼女の頭の中を駆け巡る。


「…………」


 ページをめくりながら、迷子は頭の中を整理する。

 迷走した手掛かりの断片が、一つ、また一つと繋がっていく。


「…………」


 頭の内側でパチッ、パチッと電気が弾けるような感覚がある。

 手掛かりのピースがどんどん埋まる。

 思いつくままに書き記した、手掛かりの『光の点』が、頭の中で『閃光』に変わる。


【岩礁で死んだ『X』】

【食堂から消えた石】

【お金持ちになりたい右左津】

【星蓮岬】

【レストラン『帝鯨』の看板】

【『帝鯨』の中に飾られたレコード】

【DJ日鷹】

【『X』に見覚えのない仁紫室】

【学園のアカウントに投稿された3つの動画】

【動画に映る木材のようなもの】

【食堂のテレビで流れた謝罪会見】

【星蓮学園の合唱団】

【星蓮荘を訪れた迷子のファン】

【星蓮海岸の伝説】


「…………ふぅ」


 迷子はゆっくりと目を開けた。


「――準備は整いました」


 静かに息を吐いて、パタンとカタルシス帳を閉じる。

 すると後ろから、


「よぉ、迷子」


「お待たせぇ」


 振り返ると、うららとゆららがやってきた。

 迷子は駆け寄って話しかける。


「どうでしたか?」


「迷子の言う通りだったぜ。漁船に乗ったのは正解だった」


「こっちも準備は整ったわぁ。明日の夜にはいけるわねぇ」


「わかりました。ありがとうございます」


 迷子は二人の手を握る。


「みおちゃんにはわたしから説明します。明日の夜、決行です!」


「ククク、いよいよだな」


「久しぶりに暴れるわぁ」


 三人は頷き合う。

 攻め込む準備は、整った。


「いきましょう! 最終決戦ですっ!」





――――――――――――

●お読みいただきありがとうございます。

 次回もお時間のある方は、ごゆるりとお立ち寄りください。

 それではまた(^^)

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