↓第18話 ここは、渡さないよ。

「……」


 テソロを去る直前。

 三人はしばしの休憩をとる。

 自販機のジュース片手に、フロアのソファに腰を下ろしていた。


「…………」


 束の間の休息。

 しかしどうも、あることが気になって休むどころではなくなっていた。


「……なんかSPの人増えてません?」


「だな」


「それに辺りを警戒しているようにも見えるわぁ」


 柱の陰や階段の辺りに、黒服の姿がある。

 いくらVIPのホテルとはいえ、これだけの警備が必要だろうか?

 そうこうしていると、カウンターに客らしき二人組が入ってきた。

 女性一人、男性一人。

 しかも、同じようなカップルが次々と入ってくる。


「なんだ? ここはリア充の巣窟かよ?」


「パーティーでもはじめるんでしょうか?」


「そういえば、上にパーティールームがあるって言ってたわねぇ」


 たしかに富裕層相手なら、そういったイベントもあるだろう。

 ただ迷子は、別のところで違和感を覚えていた。


「なんでしょう……女性の年齢若すぎません?」


「なんつーか、学生みたいだな」


「父親と同伴してるのかしらぁ?」


 受付を済ませたカップルは、そのままSPの案内で移動している。

 フロアが落ち着いてから、迷子たちは席を立つことにした。


「そろそろ行きますか」


「そだな」


「いよいよ最後ねぇ」


 迷子たちは、右左津うさつの聞き込みに向かう。

 テソロを出た一同。

 このあと、迷子がエレベーターの外から感じた視線の正体が明らかとなる――



       ☆       ☆       ☆



 一方で。

 屋上でアニメを観ていた仁紫室にしむろに連絡が入る。

 一階で迷子たちの様子を窺っていたSPからだ。


『仁紫室様、ターゲットがテソロを出ました』


「オーケイ。ご苦労さん』


『あとを追いましょうか?』


「いや、そのままでいい。どうせなにもできないだろうからさ」


 そう言って通話を切ると、仁紫室はデッキチェアの上に横になる。

 長いため息をついたあと、


「夢の国は、渡さないよ」


 そんなことを言って、静かに目を閉じた。

 

 ――――。


 鑑賞していたアニメは終わり、モニターにはスタッフロールが流れる――





――――――――――――

●お読みいただきありがとうございます。

 次回の更新は、10月10日の予定です。

 お時間のある方は、ごゆるりとお立ち寄りください。

 それではまた(^^)

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