↓第15話 ちょっと、食べすぎました……。
「うっぷ! 到着でっす!」
口の周りを生クリームだらけにして、迷子は次の場所へとやってきた。
生徒会・副会長、『
海の家とはいえ、南国植物に囲まれた敷地内のほとんどが、広大なライブ会場になっている。
入り口のところに警備員が立っており、入場チェックをクリアした人だけが中に入れる仕組みだ。
「チケットはお持ちですか?」と、さっそく警備員が質問してくる。
「チケットはありませんが熱いハートがあります。中に入ってもいいですよね?」
「どうぞお引き取りください」
「ありがとうございます」
「オマエら会話噛み合ってねぇぞ」
素知らぬ顔で施設内に入ろうとする迷子の首筋を掴むうらら。
こんなこともあろうかとあらかじめ入手しておいたチケットを三枚出して、ゆららが入場許可を得た。
「さぁ、行きましょぉ」
三人はアーチ状の入り口をくぐる。
中は真っ白なボードウォークが広がっていた。
ドリンク片手の男女が、遠くから聞こえる音楽にノって身体を揺らしている。
いたるところに植えつけられた背の高い南国植物を見上げて、迷子たちはさらに奥へと進んだ。
すると中央のステージから、腹の底にズンズンと響く重低音が聴こえてくる。
水着姿のオーディエンスはタオルをブン回し、野外ロックフェスさながらの熱気で叫び続けていた。
「なんだ、みんなパリピかよ」
「すごいトランスしてるわねぇ」
辺りを見渡すうららとゆらら。
その横で迷子が前方を指さして、
「あっ! あそこです!」
両サイドに巨大なスピーカーが設置された中央のDJブース。
そこに一人の男性がハンドサインをキメて、会場を沸かせていた。
「ウェーイ!!」
こんがり焼けた肌に筋肉質な身体つき。
サーフパンツと派手なアロハシャツ姿で、ヘッドフォンを首に掛けている。
ターンテーブルを回すその人こそ、ここのオーナーにして生徒会・副会長『日鷹高志』だった。
「ち、ちょっと失礼しまふっ!」
ひしめく人混みを掻き分けて、迷子はDJブースへと進む。
あとに続く二人も、背の低い迷子を見失わないように必死だ。
途中で何度もタオルを振り回すオーディエンスにぶつかりながら、なんとか足を前に出して人の隙間を抜ける。
ようやく前列にたどりつくと、そこでちょうど曲が終わった。
会場からは大きな歓声が巻き起こる。
「ウェーイ! みんなアガってるかーい!?」
日鷹の
「ん、あれは……」
彼の視線がステージ前列に引きつけられた。
どこで拝借したのかわからないが、うららとゆららがタオルを広げてアピールしている。
その布地には、
【楽屋まで☆ by才城財閥】
こう書かれていた。
「…………」
日鷹は迷子たちの衣服に光る『藍の葉の家紋』に目を細める。
彼女たちが何者なのかを理解すると、
「ふぅ……」
いったん汗をぬぐって、軽くため息を吐く。
「よーし、みんなァ! 次のステージまで休憩だウェーイッ!」
ハンドサインで会場を煽りながら、そのままステージを降りていった――
――――――――――――
●お読みいただきありがとうございます。
次回の更新は、10月7日の予定です。
お時間のある方は、ごゆるりとお立ち寄りください。
それではまた(^^)
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