第336話 死にそうな場面でイチャついてる二人を見るのはいかがなものか
レオルドは、テスタロッサからキャロラインの話を聞いて、急ぎゼアトヘ帰還した。ゼアトヘ帰還したレオルドは、早速キャロラインを探す支度を始める。
(キャロラインが転移魔法陣を利用してくれてたら、探す手間は省けたんだがな……)
ここでレオルドが思うのは、キャロラインが転移魔法陣を利用していてくれてたらということだった。実は、転移魔法陣は利用者の名前を記録する決まりになっているので、誰がどこに行ったのかを把握できる仕組みになっている。主に犯罪を防いだりするためだ。
(しかし、キャロラインがゼアトに向かったということは、馬車か? 平民なら、それくらいしかないが……流石に徒歩というのは考えられないが、可能性はゼロじゃない、騎士を派遣して、周囲を捜索させよう。キャロラインが野垂れ死にするとは思えないが、最悪を想定しておかないと)
そう簡単に死ぬとは思えないが、レオルドはキャロラインの捜索に全力を尽くす。バルバロトを呼び出して、捜索チームを結成させた。ゼアトの隅から隅まで探すように命令を下して、レオルドはシャルロットの元へ向かう。
シャルロットの元へやってきたレオルドは、頭を下げてキャロラインの捜索に協力してもらおうとした。
「シャル、お前の力が必要なんだ!」
「う〜ん、どうしようかしら」
「何が望みだ?」
「あのね、レオルド。別に、私は対価が目当てで意地悪してるわけじゃないのよ?」
「じゃあ、なんなんだ?」
「それは自分で考えなさい」
そう言われてレオルドは腕を組んで考える。シャルロットが何を考えているのかを。そして、一体何を望んでいるのかと、レオルドは今まで経験から推測していく。
しかし、やはり、どう考えても考えられるのは、必要な対価だけ。もうこれ以上、何も浮かばないレオルドは、答えを述べようとしたが、ある可能性が思い浮かんだ。
(まさか、無償で? いや、それは流石に……あり得るのか? なんだかんだ言ってシャルは、いつも助けてくれてた。なら、普通に頼めばいいのか?)
まさか、それはあり得ないだろうと考えながらも、レオルドはシャルロットに頭を下げるのではなく、対等な関係のように手を差し出した。
「頼む。シャル、手を貸してくれ」
「ふふ……。もう、仕方ないんだから、レオルドは〜」
などと言っているが、表情は大正解と言った感じに緩んでいる。そう、シャルロットは人探しという些細なことなら、別に対価など要求はしない。ただ、一言あればよかったのだ。一緒に手伝ってくれと。それだけで、シャルロットは満足する。
「でも、女の子を探すのを手伝ってほしいっていうのは、ちょっといただけないわね〜」
「む、そうか? 俺はキャロラインのことを女版ルドルフとしか思ってないぞ?」
「探すわよ、レオルド! 全力で!」
「お、やる気を出してくれたか! お前が本気を出せば、見つかるのも早いだろう」
「見つけたわ!!!」
「早すぎるだろうが!!!」
「そんなことより、早く行くわよ! さあ、手を出しなさい!」
「ちょ、待て! まだ、心の準備が!」
レオルドが慌てふためくが、シャルロットは待ってくれない。レオルドの手を引っ張ると、すぐに転移魔法を発動させた。一瞬で景色が移り変わり、レオルドは周囲を見渡す。ここはどこなのかと、周囲を確かめるが、分からない。
しかし、キャロラインはゼアトに向かっていたというので、ここがゼアトのどこかであることだけは確かだった。
「ここはどこなんだ?」
「使い魔の目を通して見ただけだから、知らないわ。でも、ゼアトだと思うけど、どこかしらね?」
「俺にもわからん。まあ、ここにキャロラインがいるのだろう?」
「ええ。ここから少し歩いたところにいると思うわ」
「ピンポイントで転移できなかったのか?」
「無理よ。だって、歩いているところを見つけたから」
「あー、そういうことか。なら、しばらく歩いて探すか。それで、どこに向かっていたんだ?」
「あっちよ」
「よし、じゃあ、行くぞ」
シャルロットが指を差した方向に歩き出すレオルド。しばらく、歩き続けるレオルドだが、ふと後ろにいるシャルロットへ振り返る。
「いつまで手を握ってるんだ?」
転移してから、二人はずっと手を握ったままだった。レオルドも特に気にすることなく、手を握っていたが、流石に気になったのかシャルロットに尋ねた。
「え? 嫌だった?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……俺には殿下がいるから、あまり他の女性と手を繋いだままというのは流石にな」
「そうね〜。でも、私ならシルヴィアも怒らないでしょ?」
「そういう問題じゃないんだが……」
「それとも私じゃ嫌なの〜?」
「…………お前と手を繋いだままというのは吝かではないのだが」
レオルドはいつも気さくに話しているが、シャルロットは絶世の美女と呼んでも差し支えない容姿をしている。しかも、シルヴィアにはない大人の色気も持ち合わせているので、意識してしまうと普段のことを忘れて照れてしまうのだ、レオルドは。
「すまない。イチャついているところ申し訳ないのだが、助けてもらえないだろうか?」
二人が妙な雰囲気になっていた時、どこからともなく女性の声が聞こえてきた。驚いた二人は周りを見回すと、植物の魔物に襲われて、今にも食べられてしまいそうなキャロラインがいた。蔦に捕まって宙にいるキャロラインを見つけた二人はすぐに助けるべく動き出した。
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