第335話 唐突に現れる幼馴染
早速、レオルドはジークフリートを伴ってテスタロッサの元へ向かう事にした。最初は、フリューゲル公爵家に向かうのかと思われたのだが、テスタロッサは騎士団に所属しているというので、王都にある騎士団の詰所へ向かう。
貴族の女性が騎士団にいるのは、違和感があると思うが、この世界には魔法があるので男女関係無しに実力と人格が伴っていれば入団が出来る。
「ちょっと、待っててくれるか?」
騎士団が滞在している場所へ着くと、ジークフリートがテスタロッサを呼びに行く。レオルドもついて行こうかと考えたが、自身の立場を考えて待つことに。
しばらく、待っていると一人の女性騎士を引き連れて戻ってきた。勿論、その女性騎士がテスタロッサである。
「御機嫌よう、ハーヴェスト辺境伯。本日は、私にどのようなご用件でしょう?」
「畏まる必要は無い。ここには小言を言うような者はいないから、楽にするといい」
「そうですか。では、お言葉に甘えて。久しぶりね、レオ君」
「……確かに小言を言う者はいないが、随分と懐かしい呼び名じゃないか。テレサ」
二人は公爵家ということもあって、幼少の頃から見知った仲であった。しかも、テスタロッサはエリナとも仲がいい。年上なだけあって、レオルドのことも弟のように可愛がっていたのだ。
ただし、レオルドの素行が酷くなったころには、フリューゲル公爵によって遠ざけられていた。そのせいで、二人は今の今まで交流はなかったのだ。
「ふふっ。まさか、こんなに立派になるなんて」
「悪いが、思い出話をしに訪れたわけじゃないんだ。聞きたいことがある。キャロラインが今どこにいるか知りたいんだ」
「キャロちゃんのこと? え? ゼアトにいないの?」
「は? どういうことだ?」
「どういうことも何も、その通りなんだけど……」
「待て待て。一から説明してくれ」
「えっと、キャロちゃんと私が手紙で交流してたのは知ってると思うんだけど、ほんの一ヶ月くらい前かしら? キャロちゃんがゼアトに行くって手紙に書いてたのよ。それからは私の方にも連絡はないわ」
「なんだと……! じゃあ、キャロラインはゼアトにいるのか?」
「それは分からないわ。転移魔法陣を使わずに行くって手紙に書いてたもの」
「なんでだ!? どうして、転移魔法陣を使わないんだ!」
「だって、平民にはちょっと高いでしょ?」
その一言に、レオルドはガツンと頭を殴られたかのような衝撃が走る。テスタロッサの言葉は正しい。レオルドはぽんぽん利用しているが、転移魔法陣の利用金額は平民からすれば高いのだ。
「そうだったのか……! では、キャロラインはどこに!?」
「う〜ん。ゼアトには着いてる頃だと思うけど、何の連絡もないからわからないわ」
「くっ!」
思わず地団駄を踏みそうになるが、ここで無駄に時間を浪費するわけにはいかないと、レオルドは動き出す。
「情報提供感謝する、テスタロッサ。俺はキャロラインを探すためにゼアトヘ戻る。ジーク、ご苦労だったな。これは駄賃代わりだ。取っておけ」
テキパキと動き出したレオルドは、テスタロッサにお礼を述べて、ここまで案内してくれたジークフリートにお金を渡した。
「え、こんなにいいのか?」
「気にするな。お前と違って俺は金持ちだからな」
「うぐ……」
嫌味な言い方にジークフリートは口をへの字に曲げるが、レオルドの言っていることは間違いないので、何も言い返せなかった。そのまま、レオルドは踵を返して、二人に別れを告げようとしたら、テスタロッサに呼び止められる。
「レオ君」
「なんだ?」
「いつか、また、家に遊びに来てね」
「…………気が向いたらな」
呼び止められたレオルドは振り返ることはしなかった。テスタロッサの言葉に、レオルドは少しだけ昔を思い出したが、行く気にはならなかった。だから、曖昧な返事をして、その場を後にした。
レオルドが去った後、ジークフリートはテスタロッサに質問をした。
「テレサ先輩はレオルドのことが好きなんですか?」
「え? どうしてそう思ったの?」
「いや、なんだか楽しそうな雰囲気でしたから」
「ふふ、そう見えたのね。安心して、私はレオ君のことを好きとかじゃないの。ただ、昔のように仲良く出来たらなって思っただけ」
「そうなんですね。でも、意外でした。俺はてっきりテレサ先輩は、エリナみたいにレオルドのことを嫌ってると思ってましたから」
「そうね。確かに私も公爵家だからレオ君とは昔から交流があったから、そう思われても不思議じゃないわね。でも、私はレオ君の素行が悪くなって、すぐに引き離されたの。だから、噂ばかりしか知らなかったから、あまり気にしなかったわ」
「でも、良くない噂ばかりだったと思いますけど?」
「ええ。酷い話ばかりだったわ。でも、それって少し調べれば、すぐに分かることじゃない? レオ君は確かに、使用人に乱暴したり、不当な解雇をしたけど、それだけよ。まあ、学園で起こした事件は、流石に擁護は出来ないけどね」
そう言ってテスタロッサは背中を向けると、そのまま歩き出したので、ジークフリートは慌てて追いかけるように歩き出した。
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