第331話 イチャイチャするなら帰って~
カエルを倒したレオルド達は、カエルが守っていた最奥の部屋へ向かう。そこには、レオルドが求めていた古代の遺物があった。祭壇のような場所に、置かれていたのは、一つの宝玉。レオルドはそれを手に取って、しばらく眺めた。
「よし、ゼアトへ戻るぞ。シャル、頼む」
「その前に、それがなんなのか教えてくれないかしら?」
「これか? これは魔法の効果を高める宝玉だ。とは言っても、これ単体では効果を発揮せんがな」
「どういうこと?」
「こいつが効果を発揮するのは、加工した後だ」
「へえ~。どれくらい上がるの?」
「そうだな。二倍から三倍だ」
「うっそ!? それ、凄いじゃない! 私に、頂戴!」
「お前はこれが無くても十分だろうが!」
「でも、装備するだけで、魔法の効果が二倍上がるのは破格よ!? あ、気になるんだけど、耐久性はどれくらいなの?」
「判らん。そもそも、これは壊れん。まあ、加工する前に、この宝玉は一度砕くがな」
「ええーっ! なによ、それ! もう、そんなの国宝級どころじゃないわよ!」
「そうだろうな。これさえ着ければ、お手軽にレベルアップできるからな」
「他の誰かが知ったら、一大事よ」
「ああ、だから、このことは俺達だけの秘密だ」
そこまで言ってレオルドは、ギルバートに目を向ける。トレジャーハンターでもない限りは、国に報告するのが義務なのだが、守っている者はほとんどいない。
なぜなら、古代の遺物はそれほどまでに魅力的だからだ。折角、苦労してまで手に入れた宝を国に献上するなど、よほど忠誠心が無ければしないだろう。
「畏まりました。このことは墓場にまで持っていきましょう」
「ああ、頼むぞ」
ギルバートは、一応レオルドのお目付け役でもあるので、レオルドはギルバートに確認したのだ。まあ、レオルドは今や辺境伯の地位を得ているので、ギルバートが咎めることは滅多にない。
「じゃあ、帰るとしようか」
ようやく、レオルド達はゼアトへ戻ることになる。シャルロットの転移魔法により、三人はゼアトの屋敷へ戻った。帰ってきて、すぐにレオルドはバルバロト達の所在を訊いたが、未だに帰還はしてないらしい。
「そうか……」
「どうするの? 助けに行くの?」
「いいや、俺が選んだ奴らだ。そう簡単にくたばるタマかよ」
信じて送り送り出した四人だ。レオルドは四人が無事に帰ってくることを信じている。だからこそ、レオルドは、四人が帰って来た時の為に、予め準備を進めておく。四人に任せたのはレオルドが、今回、手に入れた宝玉を加工するのに必要なものだから。
時は少し遡り、レオルド達が古代遺跡を攻略している頃、バルバロト達もレオルドに教えてもらった古代遺跡の中を探索していた。
「しかし、大将は一体どこから、ここを知ったのかね」
遺跡の中を歩いていると、ジェックスが唐突にレオルドの事を口にしたので、バルバロトが反応した。
「さあ、我々にはわからんが、レオルド様が今まで間違ったことはしたことがない。だから、我々はレオルド様のご期待に応えられるよう努めるだけだ」
「まあ、そりゃあ、俺だって大将に救われた身だ。今更、大将のことなんて疑いやしねえよ。でも、気にならねえか? 大将は、戦争の時もそうだったが、どっから情報を仕入れてくるか」
そう言われれば、確かに気になってしまう三人。しかし、仕える主が、悪行を働いてたのは、既に過去の事。ならば、なにか悪いことをして情報を仕入れたということはないはず。では、一体どうして誰も知らないような情報を知っているのか。一度、気になれば、ずっと気になってしまう。
「シャルロット様じゃないの? ほら、この子もシャルロット様が使い魔にしてるから、きっと色んな所のお話を聞けるんだよ」
そう言ってカレンが指を差すのは、四人と一緒に付いてきてる黒猫。
「な~お」
四人の視線を浴びた黒猫が鳴き声を上げる。まるで、その通りだと言わんばかりに。
「それなら、確かに納得できますね」
世界最強にして最高の魔法使いであるシャルロットが、側にいるのだから、誰もが知らない情報をレオルドが持っていても不思議ではない。それに、なにより、あの二人は師弟関係でありながらも恋人未満友人以上の関係なのだ。男女でありながらも、距離感がおかしいくらい近いので、シャルロットがレオルドに情報を渡していてもおかしくはない。
そう判断した四人は納得して、レオルドの事について考えるのを止めたが、残念ながら誰も正解していない。まあ、誰もわからないだろう。実はレオルドが異世界の知識を流用しているなど、心でも読まない限りは。
それからも四人は、遺跡を探索し続けて、レオルドから教えてもらった最奥へ辿り着く。道中、罠もなし、魔物もいない。古代の遺跡だという割には、やけにあっさりであったが、レオルドから聞いた情報で最奥が難関だということを知っている四人は気を引き締める。
「よし、一度レオルド様から頂いた情報を整理するぞ。この先が最奥になっているが、番人がいて、二体のゴーレムになっている。赤と青のゴーレムで、魔法剣士ということだ。ここまではいいか?」
バルバロトが一度説明を止めて三人の顔を見回す。三人は大丈夫と言う意味を込めて首を縦に振った。
「このゴーレムで厄介なのが、青が男性の攻撃をすべて無効化、そして、赤が女性の攻撃をすべて無効化という点だ。しかも、厄介なことに一定上のダメージを与えれば男女の判定が変わるらしく、尚且つ、自身に有利な方へ攻撃を仕掛ける」
つまり、青のゴーレムは男性を狙い、赤のゴーレムは女性を狙うということだ。しかも、一定以上のダメージを受ければ、特性が入れ替わるという機能も備わっている。
「ゆえに俺とイザベル、ジェックスとカレンの組み合わせで戦う。ここまで質問はないか?」
「あー、一定以上のダメージってどこで判断すればいいんだ?」
「恐らく、自身の攻撃が効かなくなったタイミングだろう」
「成程。それなら、わかりやすいね」
「他には?」
「どれくらい強いんですか?」
カレンが手を上げてバルバロトに質問をする。ある意味、もっとも重要な質問だろう。
「ふむ……基準は分からないが、レオルド様は自身と同等だと思えと言っていた」
「えっ……ッ!? それって、レオルド様と同じくらい強いゴーレムってこと?」
「……そうなる」
「ええーっ!!! 無理だよ! だって、レオルド様と同じくらいって、私、勝ち目なんてないよ!」
バルバロトに抗議するカレンにジェックスが肩を叩く。
「安心しろって。何があっても必ず俺が守ってやるから」
「ジェ、ジェックス……う、うん。なら、頑張ってみる」
思わず胸がきゅんと高鳴るカレンは顔を真っ赤にしながら頷いた。それを見ていたバルバロトとイザベルは顔を見合わせて、クスリと笑う。
「では、覚悟を決めろ! 行くぞ!」
バルバロトが音頭を取り、三人は覚悟を決めた。そして、四人はゆっくりと最奥へ繋がる門を開ける。
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