第332話 ラブラブハリケーン
仰々しい音楽でも鳴り響きそうな雰囲気を放ちながら、門が開いた。四人は、互いに顔を見合わせて、頷き、中へ足を踏み入れた。
すると、真っ暗だった部屋に明かりが灯る。部屋の壁にある
「はは、歓迎するってか……」
「油断するなよ、ジェックス」
「分かってるよ」
そう言って四人は部屋の中央に、剣を床に突き刺して佇んでいる二体のゴーレムを確認する。
「青と赤のゴーレムって言うよりは甲冑にしか見えないんだが?」
「そういうデザインなのだろう。作戦通り、二手に別れるぞ」
バルバロトとイザベルが青の方に向かい、ジェックスとカレンが赤の方に向かう。二組が左右に別れると、赤と青のゴーレムの目に光が宿る。
「来るぞ!」
ゴーレムの目に光が灯ったのを確認したバルバロトがそう叫ぶと同時にゴーレムが動き出した。
青のゴーレムはバルバロト目掛けて直進して、そのまま剣を振りかぶりバルバロトを両断するように振り下ろした。
「ぬぅ!」
バルバロトはゴーレムの一撃を受け止める。だが、ゴーレムの一撃は重く、バルバロトの顔が歪む。
「そこです!」
すると、そこへイザベルがゴーレムに肉迫する。バルバロトに剣を振り下ろしていたゴーレムは、イザベルの一撃により後方へ吹き飛ぶ。
「助かった。ありがとう」
「いえ、これも妻の務めですので」
二人がそうしていると、吹き飛んだゴーレムが立ち上がり、バルバロトに向かい剣を突き出す。その瞬間、剣の先から火の玉がバルバロトに向かって放たれた。
「
バルバロトはレオルド達が改良を加えた魔道具、魔法の盾を発動させる。魔法の盾は大きな形状でバルバロトの全身を守った。火の玉が直撃したが、バルバロトにダメージは一切ない。
「イザベル。俺が誘導する! そこを狙ってくれ!」
「畏まりました!」
魔法の盾を発動したまま、バルバロトが青いゴーレムに突撃する。青のゴーレムはバルバロトと激突した瞬間剣を振り下ろす。
ガキンガキンッと互いの剣がぶつかり合い、火花が飛び散る。その最中、ゴーレムは魔法を発動して、バルバロトに放つ。だが、バルバロトには魔法の盾があるので通じない。
そこへ、イザベルが先程と同じように、ゴーレムへ襲い掛かり、ゴーレムを吹き飛ばす。
「頑丈ですね……」
「ああ。だが、勝てぬ相手ではない。確かに、魔法と剣を織り交ぜた戦法はレオルド様に酷似しているが、レオルド様には遠く及ばない!」
「ふふ、そうですか。なら、前衛を頼みますね」
「任せておけ!」
夫婦の見事なコンビネーションで、青いゴーレムを追い詰める二人。
その傍らでは、赤いゴーレムとジェックスがぶつかり合っていた。
「オラァッ!」
魔剣を用いて赤いゴーレムを吹き飛ばすジェックス。そして、吹き飛んだ所へカレンが先回りして、赤いゴーレムの注意を自身へ引き付け、ジェックスに攻撃させやすくする。
カレンの役目は赤のゴーレムの誘導で、ジェックスが攻撃担当だ。かつて、盗賊だった頃の戦法に近い戦いをしていた。
「カレン!」
「うん!」
ジェックスの合図の下、カレンはゴーレムから離れる。ゴーレムはカレンを狙うが、そこへジェックスが割り込み、ゴーレムを叩き伏せる。
「ラアッ!」
力強い雄叫びと共にゴーレムへ魔剣を叩き付けるジェックス。ゴーレムは、その一撃を耐え切れず、地面に沈むが、次の瞬間、ジェックスの足元から土の棘が飛び出す。
「うおっ!?」
間一髪で避ける事に成功したジェックスだが、体勢を崩した所にゴーレムが襲い掛かる。
しかし、そこへカレンがゴーレム目掛けてドロップキックをお見舞いして、ゴーレムを吹き飛ばした。
「おお! サンキュー、カレン!」
「えへへ、どういたしまして」
二組の戦いは、優勢であった。レオルドから聞いた情報と、息の合ったコンビネーションで赤と青のゴーレムを圧倒している。
二体のゴーレムは特性を変えて、相手を混乱させようとするが、既にそれは意味がない。特性が変わったことに、気がついた二組は攻め手を変更して、ゴーレムを追い詰める。
剣と魔法を組み合わせた戦いも熟知されており、最早ゴーレムに勝ち目はなかった。唯一の有利な点も潰されてしまい、ゴーレムは倒されるのを待つだけとなる。
やがて、限界を迎えたゴーレムは、ドサリと倒れる。あちこちボロボロで見るも無残な姿になっており、立ち上がることはないという事がわかる。
「終わったのか……?」
「そうみたいだな。見ろよ、もうボロボロだぜ?」
バルバロトが怪訝そうにゴーレムを見詰め、ジェックスがボロボロだと指摘する。
「そうですね。我々の勝利かと」
「じゃあ、私達の勝ち……!? やった! やったー!」
イザベルの言葉に、カレンが大はしゃぎする。最初は、勝てないと思っていたので、その喜びようは凄まじいものだった。
「ふう……。よし、それでは、奥にあるという古代の遺物を回収して、ゼアトへ帰還しよう」
そして、四人は部屋の奥へ向かい、レオルドから聞いた古代の遺物を回収した。その後は、シャルロットの使い魔である黒猫に話しかけて、シャルロットを呼ぶ。
「お待たせ~。みんな、ご苦労様。それじゃ、ゼアトに帰りましょうか!」
こうして、古代の遺物は回収され、レオルドの下に集まるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます