第326話 ちょっとスパルタすぎない?
二週間という猶予を貰ったレオルドはゼアトへ戻り、シャルロットと相談する。シャルロットは唯一、レオルドから
「それで? なにか言い分はある?」
しかし、レオルドは今回の件をシャルロットに相談すると、説教を受ける羽目になった。理由は単純で、シャルロットが常日頃から、ゲームと一緒だと考えるなと、忠告しているからだ。
「いや、まあ、その通りなんだが……」
「はあ……。分かってる、分かってるわ。貴方は二つの人格が融合して、尚且つ二人分の記憶が混在しているから、どこかズレが生じるのよね……」
シャルロットの指摘どおり、レオルドは真人と融合しているせいで、日本人のような感性の時があれば、異世界人であるレオルドの感性もある。だから、時折、頓珍漢なことを仕出かす。
「面目ない……」
「まあ、それについては仕方がないわ。今は聖教国で巻き込まれそうな事件の対策ね。
そう言われてレオルドは、シャルロットに一連の流れを説明する。シャルロットは、レオルドから聖教国での出来事を聞いて、腕を組んで目を閉じた。
数秒ほど、シャルロットは思考の海に沈んでいたが、対策が浮かんだのか目を開ける。
「情報が足りないわね。まずは聖教国の内情を把握しないと対策も出来ないわ」
「やはり、そうか……」
「でも、準備はしておくに越したことはないわ。運命に抗うのなら、当然その辺は出来てるんでしょ?」
「……」
「え、ちょっと待って。まさか、何もしてないわけじゃないわよね?」
目を背けて冷や汗を流しているレオルドに、シャルロットは軽蔑の目を向ける。まさか、運命に抗うと言っておきながら、その目的に対する努力を怠っていたとは、流石に言葉も出ない。
「嘘でしょ?」
「いや、その、実は忙しくて、それに……」
「それに? 言っておくけど、真っ当な理由じゃなければ、ここで私が貴方の運命を決めるわよ」
笑えない冗談である。レオルドは、言い訳を考えたが、どれも今のシャルロットには通用しそうにないと判断して、最後の手段に出る。
「今回は俺関係ないって思って何もしてませんでした!」
土下座である。もう恥も外聞もない。レオルドは、正直に暴露した。
「……まあ、確かに貴方は運命48で、この世界の出来事を知っているけど、完璧じゃないものね。だけど、最低限の備えはしておくのが普通じゃないかしら? ここは紛れもない現実なんだから、未来は不確定でしょう? なら、普通はしておくのが当然なんじゃないかしら?」
ご立腹である。シャルロットは、レオルドの浅慮な行動に怒っていた。しかし、同時に疑問を浮かべる。今までレオルドは常に対策は取ってきていた。
なのに、今回に限って、どうしてそのような軽率な行動になったのか。それが不思議で仕方がなかったシャルロットは、レオルドに質問した。
「ねえ、レオルド。貴方は今回関係ないからって対策を怠ったけど、今まではそうじゃなかったわよね? どうして、今回は対策を怠ったの?」
「うっ……」
「なに? 言えないわけ?」
「いえ、言いますから、その手に展開している魔法を消してください」
言い辛そうにしているレオルドに、シャルロットは魔法をチラつかせて、脅すように問い詰めた。
「ほら、炎帝にも無事勝てたし、概ね順調だから今回も大丈夫かなって……」
「え、なに? まさか、貴方、調子に乗ってるだけ?」
「…………はぃ」
呆れて何も言えなくなるが、レオルドとて人の子だ。慢心すれば調子に乗るのも仕方がない。死の運命に必死に抗うと努力しているが、時には休む事も大事と言えよう。しかし、調子に乗って努力を怠るのは別だ。
「レオルド。反省しなさい!!!」
「え、ちょ、まっ!!!」
元々、レオルドは才能に胡坐をかいて堕落した人間だ。それが、今はかつての、いや、かつて以上の栄光を得たものの、本質はそこまで変化していない。
シャルロットは、そんな腑抜けてしまったレオルドに喝を入れる為、転移魔法でどこかへ飛ばした。
「今日、一日はそこで反省しなさい」
さて、転移魔法で飛ばされたレオルドがどこにいるかというと、グツグツと煮えたぎる溶岩地帯に飛ばされていた。
「こ、ここは……?」
地理について勉強していたレオルドだが、自分が今どこにいるのか分からなかった。
「遠くに海が見える。なら、どこかの島だろう。でも、マジでどこだ?」
自分が今、どこにいるかは分からなかったが、遠くに海が確認できたので、レオルドはここがどこかの島であることを理解した。
「しかし、反省して来いって言ってたから、ただの島じゃなさそうだな……」
シャルロットの言葉を思い出して、レオルドは島を探索する為に溶岩地帯から離れようと歩き出す。しかし、その時探査魔法に巨大な魔力反応を確認した。レオルドは巨大な魔力反応の方向に顔を向ける。
「なんだ? なにかいる? しかも、かなりのデカさだ。恐らく魔物なんだろうが……嫌な予感がする」
その予感は的中することになる。レオルドがその場から離れようとした時、溶岩地帯の奥から巨大な影が飛来した。
「は……? レッドドラゴン……ッ!?」
レオルドの頭上を飛び去ったのは、レッドドラゴンと呼ばれる竜種である。
「やばい……ッ! 今の俺で勝てるか? いや、戦う事を考えるんじゃない! 竜は知的生命体だ。こっちが敵対しなければ襲っては来ないはず! まあ、好戦的な奴もいるけど……。兎に角、今は逃げよう」
そう、竜は知的生命体なので人間の言語を理解する。だから、話し合うことも可能だが、竜の中にも当然人間を良く思わない個体もいる。だから、戦闘になる場合もある。しかし、そうなれば今のレオルドでも勝てるか分からない。
運命48ならば竜のレベルや強さが分かるが、ここは現実なので確かめる術はない。魔力反応の大きさだけでは判断出来ないのだ。
それゆえ、レオルドができるのは逃げることだけ。炎帝に勝ったといえども、セツナの協力あってこそ。単独で竜を葬ることは出来るか分からないので、今は逃げて様子を見るしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます