第282話 怒ったママンが一番怖いのよ
数日ほど経過して王国から国王と護衛のリヒトーが帝国へやってくる。しかも、なぜかシャルロットも一緒になってだ。
国王は今回の戦争についての話し合い。そして、シャルロットはというと、早速レオルドをからかう為に医務室へとやって来た。
「ぷふぅっ! 聞いたわよ、レオルド! 貴方、死にかけたんですって? しかも、炎帝との戦いじゃなくて胃に穴が空いて!」
「…………開口一番がそれか?」
「だって、面白いんだもの! それ以外なにかある? ないでしょ~~~!」
「くそ! ぶっ飛ばしてやる!!!」
医務室にやってきたシャルロットは盛大にレオルドをからかい、頬をグリグリといじくり回して大笑いしていた。からかわれたレオルドはプルプルと震えて怒るのを我慢していたが、ついに怒りが爆発してシャルロットへ掴みかかる。
「レオルド様! シャルロット様! お静かに。レオルド様もまだ回復していないのですから無理はなさらないでください。それから、シャルロット様もあまりからかうのは止めてあげてください」
「はい……」
「は〜い……」
シルヴィアに注意された二人はシュンとして反省する。レオルドは大人しくベッドで横になり、シャルロットは適当にあった椅子に腰を掛ける。
「それにしても、思っていたよりも元気そうで安心したわ」
「まあ、帝国の医者が優秀だったおかげだ」
「そうね。それよりもどれくらいで完治するの?」
「もうほとんど回復している。それに医者からはあと数日もすれば退院できると聞いている」
「それなら良かったわ。ところでレオルド。貴方、家族には連絡したの?」
「いや、してないが。伝わっているはずだろう?」
「ええ。伝わっていたわ。だから聞いたのよ」
「なぜだ?」
「だって、貴方の家族とっても心配しているのに連絡の一つも寄越さないからって怒ってたわよ?」
「しまった……」
言われて初めてレオルドは家族に報告するのを忘れていた事を思い出す。無事だったのなら、いの一番には報告をしなければいけない人達だろう。大切な家族なのだから当然だ。それを忘れているレオルドがいけないのである。
「結構怒ってる?」
「それは勿論。オリビアはカンカンに怒ってるわよ。帰ってきたら説教だって」
「ひえ……っ!」
折角生きて帰れるのに、待っているのは母親の説教とは悲しい運命である。いくつになっても子供は母親に勝てないのだ。
「ふふっ。まあいいではありませんか。レオルド様。ご家族の方はそれほどまでにレオルド様の事が心配だったのですから」
「そうは言いますが……頑張って勝利したのに怒られるのはちょっと……」
「元はといえばレオルド様が連絡を怠ったのが悪いのですから甘んじて受け入れましょう」
「うぅ……はい」
シルヴィアの言う事は正しいのでレオルドも反論できない。帰ったら説教を受ける事が確定してしまったレオルドはしょんぼりと肩を落とす。
二人の様子を見てシャルロットはにんまりと笑う。前よりも仲良くなっているのを見てシャルロットはからかう。
「なになに〜? 貴方達、いつからそんなに仲良くなってたの〜?」
「い、いいいいいやそんなことはないぞ、うん!」
「そ、そそそそうです! いつもと変わりませんわ!」
「動揺しすぎだから、あはははははっ!」
その言葉に過剰に反応する二人。真っ赤に顔を染め上げてアタフタと慌てる二人にシャルロットは笑いが止まらない。
「ぐぅ……」
「はぅ……」
からかわれて二人は恥ずかしそうに唸り声を上げて黙ってしまう。
(あらあら、これはホントに何かあったのかもね〜)
そんな様子の二人を見てシャルロットは二人の関係が進んだ事を察した。もう少しからかおうと考えたシャルロットだが、あまり刺激すると変にこじれてしまうかもしれないと思い、からかうのを止めて別の話題を振ることにした。
「ところで、レオルド。これからなにをするつもりなの?」
「ん? あー、特には考えていない。まあ、領地に帰ってからゆっくり考えるさ」
「そんな暇があるといいのだけどね」
「どういう意味だ?」
「どういう意味って……シルヴィア、説明してあげなさいよ」
「え? 私がですの?」
いきなり話を振られて戸惑うシルヴィアだが、確かに今後の事をレオルドに教えてあげた方がいいだろうと、咳払いをして説明に移る。
「ゴホン。では、レオルド様に軽く説明いたしますと、まず戦争に勝利したのでレオルド様にはその功績に応じた報酬が王家から支払われます。まだ、私も知りませんが恐らくは領地や爵位といったものになると思いますわ」
「あー、そういうことか」
「ご理解が早くて助かります」
シルヴィアの説明を聞いてレオルドも理解した。完治した暁には王国に帰ることになるのだが、自分の領地に帰るのは先になる。まずは、戦争で貢献したレオルドに王家から報酬が支払われることになる。
それに加えて祝勝会といった催しも開かれるのは間違いないのでしばらくは王都に留まる事になるだろう。
レオルドからすれば、さっさと領地に帰って色々とやりたい事があるのだが、王国に仕える身としては避けられないことだ。
もっとも、今のレオルドならば昔のように傍若無人な態度を取っても許されるであろう。なにせ、武力、知力を王国に示しているのだから。レオルドは知らないがゼアトの防衛戦で見せた数々の凶悪な兵器のおかげでレオルドは王国にとって切り札であり、爆弾のような扱いになっているのだ。
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