第254話 エロゲのアイテムは時にチートを帯びる
そういう経緯もあってリヒトーはシルヴィアの護衛となっていた。
そのおかげで厳重に警備されている王城を誰にも気付かれずに潜り抜けてきた凄腕の暗殺者によるシルヴィア暗殺を阻止できた。
「くっ……」
暗殺者もまさかリヒトーが護衛に付いているとは計算外であった為に苦しい顔をしている。本来ならばレベッカという近衛騎士であった。レベッカが護衛だったならば暗殺者もここまでは苦しくはならない。
しかし、リヒトーはレベッカと同じ近衛騎士ではあるが次元が違う。レベッカが弱いというわけではなく単純にリヒトーが異常なまでに強すぎるのだ。
王国で最強と名高いリヒトーが相手だといくら凄腕の暗殺者と言えども分が悪い。暗殺を生業としている暗殺者は対人戦闘に特化してはいるが、同じように要人警護で対人戦闘に長けているリヒトーが相手では勝ち目はないに等しい。
(ここは逃げるべきか……? いやしかし、この男からは逃げ切ることは不可能。対峙した時点で私は詰んでいる。だが——)
窮地に立たされている暗殺者だが、実は他にも仲間がいる。標的であるシルヴィアが運よくバルコニーに出てきたから暗殺を試みようと飛び出したが、まだ隠れている仲間がいるのだ。
しかも、皇帝から貸してもらった古代の遺物を身につけている仲間が。
まだリヒトーは気が付いていない。殺るならば今だと暗殺者は合図を送る。
隠れて様子を窺っていたもう一人の暗殺者はリヒトーと対峙している仲間から合図を受けて皇帝から貸してもらった古代の遺物、
羽織れば透明になれる上に猫のように気配を消して足音も無くせる優れた遺物なのだ。
ちなみに原作の方では男性陣が帝国の宝物庫から見えざる猫を発見して妄想するといったイベントがあったりする。ただし、それがバレてしまい厳重に保管される事になり二度と拝む事は出来なくなったという悲しい結末を迎えた。
そんなスケベアイテムであった見えざる猫はその真価を発揮し、リヒトーさえも欺く。
猫のように気配を殺して獲物であるシルヴィアに暗殺者は忍び寄り、背後から急所目掛けて猛毒を塗っている短剣をシルヴィアに突き刺した。
次の瞬間、見えない壁に弾かれてしまい見えざる猫を身に纏っていた暗殺者が、その衝撃に仰け反ってしまう。さらにはバチッと言う音まで鳴らしてしまった。
「え!?」
リヒトーに守られるように立っていたシルヴィアは突然背後から聞えてきた音に驚いて振り返ると、レオルドから貰っていたネックレスが砕け散った。
「レオルド様から頂いたネックレスが!」
「殿下! こちらへ!」
まさかもう一人仲間が居るとは気が付かなかったリヒトーは焦った声でシルヴィアを引き寄せる。
(まさか、まだ仲間がいたなんて……! くっ! 今のは完全に僕の失態だ)
自分を責めるリヒトーだが今回は帝国が持っていた古代の遺物、見えざる猫を褒めるべきだ。たとえ、レオルドやシャルロットがリヒトーと同じようにシルヴィアの護衛をしていたとしても防げるものではなかった。姿だけでなく気配や足音を消すのだから、そう簡単に防げるものではない。
それよりも運がいいというよりは用意周到なレオルドを称えるべきだろう。あらゆる事態を予測してシルヴィアに貴重な魔道具を渡していたのだから。
シルヴィアがレオルドから貰っていたのは身代わりの首飾り。文字通り身代わりになってくれる魔道具だ。ただし、効果は一度きり。とは言っても致死的な攻撃から一度だけ守ってくれるのだから、その価値は計り知れない。
本当はレオルド自身が使う予定ではあったのだが、一度きりという効果なので暗殺などの恐れがあるシルヴィアに渡したのだ。勿論、レオルドにも暗殺の恐れはあるのだがギルバートやシャルロットとの鍛錬の賜物で不意打ちなどには強いので必要がなかった。
「くそっ! 今のはなんなんだ! そんなものがあるなど情報にはなかったぞ!」
暗殺が二度も失敗してしまったことに腹を立てた暗殺者は悪態を吐く。その様子を見てリヒトーは暗殺者が他にいないことを察した。
「そうか。それは勉強不足だったね。でも、安心してくれ。君達に次は無い。ここで僕が斬るからね」
「くっ! せめて標的だけでも道連れにしてくれる!」
自棄になって暗殺者はリヒトーの背後にいるシルヴィアへ襲い掛かるが、リヒトーがそれを許さない。音を置き去りにするほどの剣速で暗殺者を両断した。
「あと一人。一応訊いておくけど、誰が依頼人なのかな? まあ、予想では皇帝だと思ってるけどね」
見えざる猫を身に纏い姿を隠している暗殺者にリヒトーは語りかけるが反応は無い。
仲間が斬られるのを見た暗殺者は見えざる猫の能力を存分に使ってリヒトーから逃げようとしていた。
壁を伝い、屋根へと逃げた暗殺者は一秒でも早くリヒトーから離れようと跳躍する。背後を確認した暗殺者はリヒトーが追ってきていないことに安堵して振り返った瞬間、絶望する事になる。
目の前には先回りしていたリヒトーが剣を抜いて立っていたのだ。
「姿も気配も足音すらも消すなんてとんでもない魔道具だけど……空気の流れさえ分かれば居場所なんて把握できる」
「ば、ばけも——の…………」
ほんの微かな空気の流れで居場所を把握した
「う~ん、これが透明化の秘密かな? まあ、とりあえず貰っておこう」
念のために他に暗殺者がいないかをリヒトーは確認して、いないことを確かめた後はシルヴィアの元へと戻った。
こうして無事にシルヴィアの暗殺は防がれたのである。
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