第234話 魔道具作るの楽しいんだ……
軍議が終わり、各自の持ち場に戻る中ベイナードはバルバロトに声を掛けて会議室に残した。
「バルバロト。レオルドから授かったという秘密兵器はどうしても見せることは出来ないか?」
どうしても秘密兵器のことが気になっていたベイナードはバルバロトへ尋ねた。知りたくて仕方がないといった様子のベイナードにバルバロトは嫌な顔をすることなく答える。
「構いませんよ。レオルド様からは信用の置ける相手になら見せても構わないと許可を頂いてますので」
「つまり、俺にはいいと言うことか」
「はい。それではお見せしましょう。これがレオルド様とシャルロット様が開発された魔道具、
そう言ってバルバロトが突き出した腕には以前レオルド達が闘技大会で装備していた腕輪が嵌めてあった。
「それは闘技大会で使った腕輪に似ているが……別物か?」
「はい。これはレオルド様が闘技大会で使った腕輪を再現できないかと試行錯誤してシャルロット様の協力を経て生まれた魔道具です。レオルド様が闘技大会で使った腕輪とは異なり、こちらは任意で発動できる上に耐久力はやや上です。しかも予め魔力を補充しておけば何度でも使えますが魔力が切れるとただの腕輪になってしまうのが欠点でしょうか。それに全身を保護するタイプではなく、前方に魔法の盾を生み出すものになっております。それでは一度ご覧になってください」
一通り説明を終えたバルバロトは実際に見てもらおうと一歩下がって盾魔法を発動させる。
「
バルバロトの声の後に水色の薄い盾が浮かび上がる。バルバロトの身長よりも大きな盾だ。ベイナードはその盾を見て驚くと同時に感心していた。
「ほう。これはすごいな。闘技大会で使ったものよりも耐久力は上と言っていたが、どの程度だ?」
「シャルロット様、渾身の魔法にも一度耐えることが出来たそうです」
「それはなんと……! ははっ! レオルドめ、面白いものを作ってくれたな! では、もう一つ聞くがどれだけの数がある?」
「我々、ゼアトの騎士二百名分しかありません」
「そういうことか。どうして、秘密なのか理解できた。レオルドは奪われる可能性を懸念していたのだな」
「申し訳ございません。本来ならばベイナード団長にも用意しておくべきでしたが……」
「構わん。俺が前線に向かう時は俺と同等の相手が出た時だけだ」
「それは帝国守護神が戦場に現れたときでしょうか?」
「ああ。だが、第七皇女殿下の言葉が真実ならば俺が出ることはなさそうだ」
「それはどういう意味でしょうか?」
「炎帝は皇帝の護衛で、禍津風はシャルロット様を狙っているらしく、永遠は皇帝に反逆したらしく今は地下牢と言う話だ」
「なんと、まあ……! こちらにとっては難敵がいないのは有難いですが……」
「こちらにとってはな。だが、レオルドの方は……」
そこまで言ったベイナードは口を閉じる。はっきり言ってレオルドは死ぬと誰もが思っていた。
なにせレオルドが相手をしなければならないのは帝国最強の炎帝だからだ。
無論、レオルドが弱いというわけではない。ただ単純に相手が強すぎるだけ。
だが可能性がゼロというわけでもない。
ただし、皇帝がそれを許すかどうかだが。当然、セツナは地下牢の中でも最も厳重な場所に囚われているに違いない。だから、セツナを助け出し仲間に加えるのは難しい。
「大丈夫です。我々はレオルド様を信じておりますので」
「……ふっ、そうか」
「ですから、我々はレオルド様が帰ってくるこの場所をどのような手を使ってでも守り通しますよ」
不敵に笑うバルバロトを見てベイナードはこう思った。
(存外、帝国は最も敵に回してはいけない者達を怒らせてしまったのかもな)
現在ゼアトは発展途中ではあるが、ここに集まっている大半の者はレオルドを慕っている。そんなレオルドを慕っている者達が、主の帰りを待つ場所を守らんと躍起になっているのだ。
レオルドがこの時のために集めた者達。その全てが帝国に対して怒りを抱いていた。
許してはならぬと。
決してこの地を蹂躙させまいと。
帝国に思い知らせてやる。
レオルド・ハーヴェストの威光を。
ゼアトに住まう者達が一丸となって帝国軍とぶつかることになる。
ベイナードと別れてバルバロトは自身の受け持つ部隊へと戻って行った。
隊員たちは装備を整えており、いつでも出撃出来るといった状態だ。そこにバルバロトが帰ってきたので隊員たちはバルバロトの元へと集まる。
「隊長! いつでも出撃は可能であります!」
「よろしい! だが、まだその時ではない。各自準備を怠らないようにしておけ!」
『はっ!!!』
気合十分といったゼアトの騎士部隊。すでに帝国軍が王国軍の倍はいると知っている。
だが、彼らに恐怖は一切ない。むしろ、胸が高鳴っている。
レオルドは帝都潜入作戦へ向かう前にゼアトの騎士達へ発破をかけていた。
『お前達には期待している。後は頼んだぞ』
短い言葉ではあったが、騎士達には十分すぎる言葉であった。基本一人で解決するレオルドは誰かに頼るという事が極端に少ない。
頼ったとしてもシャルロットやギルバートといった近しい人物のみだ。
そんなレオルドが自分達を頼ってくれる。それは騎士にとっては嬉しい事であった。ならば、期待に応えようとするのは当然の事。
そして命の恩人であり、ゼアトを一生懸命豊かにしようとしているレオルドの大切なものを蹂躙しようとしている帝国に怒りを覚えた。
レオルドが指示を出してバルバロトが鍛え上げたゼアトの騎士達がついにその力を発揮する時が訪れようとしていた。
戦いの時は近い。
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