第232話 どうして、こうもうまくいかない

 ようやく帝都の近くまで辿り着いたレオルド達は一旦木陰に身を隠して、ローゼリンデに帝都への侵入方法を聞くことにした。


「殿下、帝都までは来ましたがここからどうするのですか?」


 帝都への侵入方法を聞いているレオルドだが、ゲームの知識で知っている。


(用水路から入るんだよね。帝都の地下を流れている水路は城まで繋がってるから、そこから城に潜入するんだよな。まあ、ゲームと一緒ならだけど)


 他にも方法があるかもしれないとレオルドは思っている。


「帝都の地下には水路が迷路のようにあるの。そこは城にまで繋がってるわ。ただ、皇族だけが通れるようになっている秘密の通路だから普段は通れないんだけどね」


「なるほど。つまり、我々はそこを利用するということでしょうか?」


「ええ。私が道案内するから道中はお願いしてもいいかしら?」


「もちろんです」


 方針が決まったレオルド達はローゼリンデの案内のもと、帝都の用水路の中へと入っていく。


 地下の水路を松明たいまつの明かりだけを頼りに進んでいく。

 下水が流れているせいで匂いは最悪だが、ここ以外は安全とは言えないので文句を言う者はいない。


 しばらく進み、レオルドの探査魔法に反応があった。先頭を進んでいたレオルドが立ち止まり、後ろを歩いていた者達も立ち止まる。

 ローゼリンデ以外はレオルドが立ち止まったので警戒態勢を取る。


「前方から三つ魔力の反応がある……。殿下、この地下水路は巡回している兵士がいるのでしょうか?」


 もちろん、レオルドは巡回している兵士がいることは知っている。なにせゲームでも、地下水路では何度か戦闘があるからだ。


「ええ。いるわ。でも、そこまで強くはないし、別の道へ進めば戦闘を回避できるわ」


(ゲームだったら演出上、強制で戦闘なんだろうけど、ここは殿下の言う通りにして戦闘は避けよう)


 レオルドはローゼリンデの言葉に従い、近づいてくる魔力反応と接触しないように道を変えて先を進む。


 それからしばらく進み、また魔力反応があった。レオルドは避けようとしたが先程の反応よりも移動速度が異常に速かった。


「殿下! 前方から急接近する魔力反応があります。何かわかりますか?」


 ゲームの知識にない事態にレオルドは焦る。ゲームでは三度の戦闘が地下水路で行われるだけだ。

 そのどれもが巡回している兵士である。しかし、今レオルドが探査魔法で探知した魔力反応は普通ではない。


「もしかして……!」


 何かを思い出したローゼリンデだが少し遅かった。接近してきたのは四足歩行の魔物が三匹。


「こいつらは!?」


 レオルドは四足歩行の魔物を見て驚きの声を上げる。


(なんで!? こいつらって確か帝国が開発中の軍用魔物じゃん!)


「どうしてソルジャーシアンが!?」


 レオルドと同じように驚きの声を上げているローゼリンデ。レオルドはローゼリンデの叫び声を聞いて思い出す。


(ソルジャーシアンってまだ開発段階で実戦投入はもっと先のはずだったが……。どうして、このタイミングで? まさか、俺達の潜入作戦に気づいて? いや、今はそんなことよりもソルジャーシアンへの対処が先だ!)


 色々と思案するレオルドだったがまずはソルジャーシアンをどうにかしなければならないと判断して部下たちに指示を出す。


「ジーク! お前は殿下の護衛を! カレンはジークの補佐だ! 残りの三人は俺の援護に回れ!」


 先頭に立っていたレオルドは三匹のソルジャーシアンに向かって魔法を放つ。


「アクアスピア!」


 得意の魔法を放つレオルドだったが、一か所に固まっていたソルジャーシアンはバラバラに分かれて魔法を避ける。


「小癪な! アクアエッジ!」


 避けたソルジャーシアンに向かって再度魔法を放つがソルジャーシアンは壁を走って避けると、鋭い牙でレオルドを殺そうと大きく口を開けて飛び掛かる。


「獣風情が!」


 飛び掛かってくるソルジャーシアンの嚙みつきを避けると同時にレオルドは雷魔法を放つ。

 バチッと音が鳴って直撃したのだが、ソルジャーシアンが倒れることはない。


「魔法耐性か……!」


 舌打ちをしながらレオルドはソルジャーシアンから離れる。

 チラリとレオルドは他のソルジャーシアンの状況を確認する。諜報員の三人組が上手く連携して残りの二匹を引き付けてくれている。


(あの三人は問題ないな。魔法耐性が高いのは知っていたが、まさか俺の雷魔法も耐えるほどとは……! だが、動きはすでに見切った。次で仕留める!)


 腰を低くしてレオルドは拳を構えた。レオルドはジリジリと距離を詰め、ソルジャーシアンに向かって一気に踏み込んだ。


「かあっ!!!」


 踏み込むと同時に拳を放ち、ソルジャーシアンを打ち抜こうとしたが避けられてしまう。拳を避けたソルジャーシアンはがら空きになっているレオルドの脇腹を切り裂こうと爪を振るった。

 だが、ソルジャーシアンの爪が当たるよりも先にレオルドは身体を回転させて蹴りを放つ。


 ゴキンッとソルジャーシアンの首がレオルドの蹴りによって折れる。完全に息絶えたのを確認したレオルドは残り二匹を片付けるために三人に合流する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る