第227話 俺の部下は強いんだよ
まさかのゼロにレオルドも流石に驚いた。顔にこそ出さかなかったが内心は相当焦っていた。
(マジか、マジか、マジか!!! 数えるくらいは残るだろうと思っていたのに、まさかのゼロなんて! ど、どどどどどうしよう!)
そもそもレオルドは一つ勘違いをしている。ヒロインたちは決して弱くはない。むしろ、単純な戦力として数えれば優秀な方だ。問題があったとすれば、それはレオルドの方である。
レオルドは少々感覚が麻痺している。レオルドの周りには強者しかいない。それも、殺し合いの経験をしている者ばかり。
だから、レオルドは自身がどれだけの実力を持ち、どれほどの威圧感を有しているかをわかってはいなかった。普段から誰かを威圧していたりすれば分かったのかもしれないが、レオルドはそのような異常性を持ち合わせてはいない。
おかげで加減など分かるはずもなく、レオルドは彼女たちに言ったように本気で殺すつもりで威圧してしまった。当然、本気のレオルドが放つ威圧にヒロインたちが耐えられるはずもなく、結果は見てのとおりであった。
つまり、何が言いたいかと言うとやりすぎである。
(他に候補はいるか……?)
ゲームで出てきたキャラを思い出すレオルドだが、残念なことにいない。いや、正確に言えばいることはいる。ただし、連れて行くことが出来るかと言えば不可能に近い。そもそも接点がないから、呼ぶことが出来ない。
(くっ……騎士から適当に見繕うか?)
適当な人材でも増やそうかと考えるレオルドだが、それは悪手である。レオルドは基本ゲームの知識を元にして動いていた。だからこそ、不死鳥の羽を手に入れる為にジェックスを仲間に加えたりした。
だが、ゲームでは名前がなかったバルバロトのことなどは出会うまで分からなかった。
ということはだ、レオルドはゲームにはいない人物の強さが分からない。だから、適当に選ぶなど以ての外である。
しかし、参加人数が第七皇女を含めて四人というのは些か厳しい。ゲームでは真っ直ぐ進んで皇帝を倒すという単純明快な作戦であるが、現実ではそうはいかない。
まず、第七皇女から聞いた情報を元に練られた作戦が、囚われているセツナの解放である。セツナを助け出す理由は炎帝に対する切り札にするためだ。
皇帝はグレンを側に置き、護衛としているらしく手を出し辛い状況になっている。
それに加えて皇帝は帝国の宝物庫から古代遺跡より発掘された防御系の遺物をいくつか持ち出しており、守りはとてつもなく固いという話だ。
だから、セツナを仲間に加えて五人で皇帝と戦う事になっても、はっきり言って勝ち目はない。
セツナは帝国守護神ではあるが、グレンとは相性が悪く勝ち目は薄い。レオルドとジークフリートが援護して、ようやく対等に戦える程度だ。
しかし、ここでレオルドとジークフリートがセツナと一緒にグレンの相手をするとなると、残るのはカレンと第七皇女だけである。
流石にこの二人で皇帝を取り押さえるのは難しい。なにせグレンだけが護衛を務めているわけではないからだ。
そういうことなので、あと数人は仲間にしておきたい。
(ロイスとフレッドを呼ぶか? ジークと仲がいいはずだし、強さは……分からないけど性格はヒロインよりマシなはず)
ただし、レオルドは二人と面識はない。二人の方はレオルドのことを知っているがレオルドのほうはゲームの知識くらいでしか知らない。
「なあ、レオルド。その、もう一回だけ彼女達にチャンスをくれないか?」
どうしようかとレオルドが考えている時にジークフリートが彼女たちに救いの手を差し伸べた。ジークフリートの優しい言葉に、萎縮していた彼女たちは再び立ち上がるだけの気力が蘇る。
「ジークフリート。お前が彼女達を信頼している事は分かったが、俺程度の威圧にも耐えることの出来ない人間を連れて行くことは出来ない。いざというとき戦意喪失でもされたら、足手まといどころか足枷になる。それでもと言うのなら、俺を納得させるだけの理由を教えてくれ」
しかし、レオルドの言葉が再び彼女たちの心をへし折る。反論することの出来ない事実を突きつけられた彼女たちは何も言えない。
「それは……俺が支える! もし、彼女たちが立ち止まることがあったら俺が助ける! だから、頼む。レオルド! もう一度だけ彼女たちにチャンスをあげてほしい!」
「……国の未来がかかってる大事な作戦だ。不安な要素はなるべく少なくしたい。俺の言いたいことが分かるか?」
「分かる。分かってる。でも――」
「もういい。それ以上は言うな」
「じゃ、じゃあ、いいのか?」
「……カレン!」
レオルドはカレンを呼び寄せる。名前を呼ばれたカレンは返事をしてレオルドの下へと駆け寄った。
「はい。なんでしょうか、レオルド様!」
「これから、お前と彼女たちに戦ってもらう」
「……へ?」
何を言っているのかすぐに理解できなかったカレンは数秒が経ってから間の抜けた声を出した。
「聞こえなかったか? お前にはこれから彼女たち全員と戦ってもらうと言ったんだ」
「いえ、それはわかりましたが、理由をお聞きしても?」
「黙らせるには俺ではなくお前が適任だと思ったんだ。流石にカレンに完膚なきまでにやられれば、誰一人として反論する者はいないだろう?」
「そ、それはそうだと思いますが、流石に全員と戦うというのは少々厳しいかと……」
不安そうにカレンはレオルドと彼女たちを交互に見ている。ギルバートとの鍛錬で強くなっているのだが、比較する対象がレオルドやジェックスにバルバロトといった怪物ばかりなのでカレンはいまいち自分に自信がないのだ。
「ふっ。安心しろ。俺の見立てならお前一人にも勝てんさ。彼女たちは」
「で、でも……私はゼアトじゃ一番弱いし……」
(比較する相手が俺達しかいないから自信がないのか。まあ、今回のことで多少自信が付きそうだから、カレンにとっても良い要素なんだよな。ジークたちも黙らせることが出来るし、カレンも自信がつく。まさに一石二鳥じゃないか!)
カレンが自分に自信がないことを知り、レオルドは今回の件で自信をつけさせようと考えた。それに、ジークフリートたちも黙らせることが出来る。これはいい考えだと、レオルドは話を進めていく。
「大丈夫だ、カレン。日頃から相手をしているギルに比べれば彼女たちなどどうということはない。頼まれてはくれないか?」
「うぅ……レオルド様のご命令なら、やってみます」
「そうか。決心してくれて嬉しいぞ」
カレンの承諾を得たのでレオルドはジークフリート達にもう一度だけチャンスを与えることを告げた。
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