第226話 潜ってきた修羅場が違うんだよ
一先ず、レオルドはジークフリートのハーレムメンバーと手合わせをする事に決めた。
大体のプレイヤーは高火力の魔法使いと壁役の戦士を連れていく。人数制限がかけられているので、敵の数も少ないから壁役に敵を集中させて高火力の魔法で薙ぎ払うという戦法を取るのが楽だったから。
潜入なのだから暗殺者や盗賊といった仲間を連れて行くのが一番いいのだが、そこまでのリアルはゲームにはない。
しかし、この世界は紛れもない現実なので連れて行くとしたら、潜入に長けている暗殺者か罠や仕掛けに詳しい盗賊である。
とは言っても、世界の強制力なのか、そういう認識なのかは分からないが、レオルドの前にはジークフリートに惚れているであろうヒロインがいる。
(……なんか、私も連れてけって目でみんな睨んでくるけど、立場ある人間だって自覚してるのか? 貴族の御令嬢を連れて行けるわけないやん……! いや、確かに普通ならそうなんだけど、この世界は魔法があるから戦えない事はない。だから、戦力になりさえすれば連れて行っても……それよりも、実家が許可してるのか?)
手合わせをしなければと考えたレオルドだったが、冷静に考えて彼女達は立場ある者が多い。惚れた男と一緒に戦いたいという気持ちは分からなくもないが、流石に無理がある。
なので、レオルドは最初に確認をすることにした。
「あー、一つ聞きたいんだが許可は貰っているのか?」
「勿論よ。陛下からも許可は頂いているわ。貴方は知らないのでしょうけど、こう見えて私達は強いのよ」
誇らしげに胸を張ってドヤ顔しているエリナの態度にレオルドは内心腹を立てた。
(腹立つな~! そりゃゲームの中では強かったけど、現実でも同じくらい強いのか知らねえんだよ! ジークは戦った事があるから分かるけど、お前らの事なんて知らねえわ! だいたい、なんで陛下は許可を出したんだ? 国の一大事だから戦えるのなら、誰でもいいのか? もうよくわからん! 難しく考えるのはやめよう! まずは一緒に連れていく奴を選ぼう!)
そうは言ったものの、ヒロイン達の実力は分からない。一応、ゲームでの知識があるからどのような魔法を使い、どのようなスキルを持っているか、そして近接攻撃が得意なのか、遠距離攻撃に秀でてるのか、援護に長けているのかと、それくらいのことは分かる。
ちなみにエリナは後方からの高火力魔法が得意なヒロインである。
「とりあえず、ジークフリート、カレン。この二名の参加は確定している。あまり、人数を増やしすぎてもいけない。潜入が主な内容だからな。無駄に人数を増やしては発見される恐れがぐんと上がる。だから、少数精鋭でいく」
「それはつまり、私達は邪魔だって事かしら?」
「そういうわけじゃない。必要性があれば一緒に来て欲しいが無駄に人数を増やすのは得策じゃないというだけだ。それよりも、俺はお前達がどれくらいの覚悟があるのかを試したい」
「何をするつもり?」
「本当はお前達の実力を測るために手合わせをしようかと考えたがやめた。それでは、意味がないからな」
「馬鹿にしてるの? 私達が女だからと言って舐めてるのかしら?」
「馬鹿を言え。女だからと言って弱いなどと決め付けるわけがないだろう。なにせ、俺の側にはシャルロットがいたんだからな」
「それもそうね。だったら、本当になにをするつもりなの?」
「簡単だ。お前達の覚悟が本物かどうかを試す。これから、俺が本気でお前達を殺すつもりで威圧する。言っておくが俺程度の威圧に耐えられないようであれば、戦場に立つ資格はない。これから、俺達が潜入する先には炎帝のグレンが待ち構えているのだからな」
レオルドの説明を受けたヒロイン達はゴクリと生唾を飲み込む。相手は敵であり、確実にこちらを殺そうとしてくる。
しかも、その相手は帝国最強と名高い炎帝のグレン。今、目の前にいるレオルド以上の強さを持ち、幾多もの戦場を経験し、圧倒的な強者。
それほどまでの相手と戦うことになるかもしれないのだから、レオルドの威圧くらいは耐えられて当然でなければいけない。そうでもなければ、今回の作戦には不向きである。
「覚悟はいいか?」
一歩、レオルドが足を出す。ただそれだけであるが、ヒロインたちの多くは怖気づいていた。これから、放たれるであろうレオルドの本気の威圧。それに耐えることが出来なければ、今回の作戦に参加することは出来ない。
ジークフリートの横に並びたいのなら、絶対に耐えなければならない。
彼女たちには国を思う気持ちもある。そしてそれ以上にジークフリートと共に在りたいと思っている。
だから、彼女たちは一つ息を吐いて、気を引き締める。
「そうか。誰も逃げ出すつもりはないか。好いた男のためにそこまでの覚悟を決めたんだな。ならば、越えてみせろ。その覚悟を持って俺を!!!」
敵を射殺さんばかりにレオルドはヒロイン達を睨みつける。そのレオルドから放たれる威圧は尋常ではない。側にいるカレンでさえ冷や汗を流している。当然。直接レオルドに威圧をぶつけられているヒロイン達は無事ではない。
呼吸を荒くして、腰を抜かす者が続出していき、最後に残ったのは――
「…………ゼロか」
――結果はゼロであった。誰一人レオルドの本気の威圧には耐えられなかった。
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