第225話 勝てる勝てないじゃない

 家族に論されたが、レオルドは揺らいでいた覚悟が決まり、逃げない選択をした。


「母上、レグルス、レイラ。俺は逃げないよ。家族を友を愛する人たちを守る為に俺は戦う。帝国の好きにはさせない。俺が必ず皇帝を倒す。だから、お願いだ。俺の背中を押して欲しい」


 三人はレオルドの顔を見て、もうなにを言っても揺らぐ事はないのだろうと確信した。

 本当なら、行って欲しくはない。相手は帝国最強の炎帝が待ち構えている。

 はっきり言えば、死にに行くようなものだろう。死んで欲しくないから、今回の作戦に反対した。でも、レオルドの覚悟は本物だった。


 決して逃げる事はない。


 どれだけ言葉を重ねようとも、意味を成さないだろう。行って欲しくはないという気持ちはあるがレオルドがそこまで覚悟を決めたのだ。


 なら、背中を押すのが家族としての役目だ。


 だから、三人はレオルドを見詰め、背中を押してあげる事にした。


「レオルド。行ってきなさい。そして、必ず帰ってくるのよ」


「レオ兄様。頑張ってね。私、待ってるから」


「兄さん。ご武運を」


 三人からの激励を受け取ったレオルドは、三人が安心できるように力強く返事をした。


「ああ! 必ず帰ってくる!」


 そして、レオルドは最後にベルーガの前へ立つ。ベルーガは既に会議でも話していた時から決めていた。

 死地へと向かう息子に贈る言葉を。


「立派になったなレオルド。お前は私のいいや、私達の誇りだ。行って来い。そして、見せてやれ。お前という男を!」


「はい!」


 家族に見送られてレオルドは、自身の領地へと戻り準備を整える。


 ゼアトへと戻ったレオルドは、会議で話し合った内容を部下達に伝える。


「ベイナード団長の指揮の下、ゼアトを防衛ですか……」


「大将が指揮を執るんじゃねえのか……」


「ああ。バルバロト、ジェックス。お前達が頼りだ。任せたぞ」


『はい!!』


「ギル。屋敷の事は任せる」


「お任せを」


「それから、カレン。お前には俺と一緒に付いてきて貰いたい」


「え? 私?」


「そうだ。お前の偵察能力は今回の作戦にはピッタリだ。もちろん、戦闘は参加しなくてもいい。流石にそこまでお前に負担はかけられないからな」


「え、あ、その……」


 重要な作戦に自分のような女がいてもいいのかと不安なカレンは頼りのジェックスとレオルドを交互に見る。


「カレン。大将がああ言ってるんだ。胸張っていって来い。それにお前も知ってるだろ? 大将が一番強いってことくらい」


「う、うん……」


「大将。カレンのことよろしく頼むぜ」


「任せておけ。無傷で終わらせてやる」


 その後、それぞれに役割を伝えてレオルドは自室へと戻る。ゲームの攻略知識が書かれたマル秘ノートに書いていたグレンの攻略法を確かめる。


 ただ、運命48ゲームはシミュレーションRPGなのでグレンがどのような動きをして攻撃してくるかはわからない。分かるのはどのような魔法を使い、どのような戦法をするかということだけだ。

 アクションゲームだったなら少しは攻撃のパターンが分かったかもしれないが、今はそんな事を言っても意味がない。


 レオルドが一人自室でグレンの情報を思い出していると、シャルロットが訪ねてくる。


「今、いいかしら?」


「部屋に入る前にノックくらいはしろ。まあいい。何か用か?」


「勝てるの?」


「グレンにか? まあ、勝てる可能性はゼロじゃない。とはいっても負けるほうが高いがな」


「なに笑ってるのよ。死ぬかもしれないのよ? しかも、今までよりもずっと」


「そうかもな。でも、逃げるわけにはいかないんだ」


「背負いすぎなのよ、バカ」


「ははっ。そうだな。俺はバカだ」


「……帰ってきなさいよ。そうしないと私、なにするかわからないから」


 シャルロットの言葉に鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をしたレオルドは、少しだけ沈黙した後、笑って返答する。


「それは怖いな。わかったよ。必ず帰る」


「約束したからね。破ったらただじゃおかないわ」


 そう言ってシャルロットはレオルドの部屋から出て行く。去り際に見えたシャルロットの横顔は少し火照っていたのかほんのり赤く染まっていた。


 それからレオルドは必要な情報を集め終わり、カレンと共に王都へと転移魔法陣を使って戻る事になった。


 王都に戻ったレオルドはすぐに王城へと向かい、今回の作戦に同行するメンバーを集めることにした。


 まずはジークフリート。実力はレオルドも知っている通り、王国では上位に入る。さらに今は覚醒しており、前以上に成長している。


 早速、ジークフリートへ声を掛けたら、問題が発生した。

 なんと、ジークフリートのハーレム要員が自分も同行すると言ってきたのだ。


(おう……っ! ゲームなら違和感なんてなかったけど、普通に考えたらダメじゃねえか! ていうか、足手まといだろ! いや、待てよ? もしかしたら強いのかも……)


 しかし、冷静に考えても、ここはゲームのようにパラメータがないので強さが測れない。

 なので、レオルドは一先ず彼女達の実力を見るために手合わせをする事にした。

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