第214話 そういう流れなんじゃ

 闘技大会からあっという間に時は流れて、春の季節。


「……ジェックス。帝国の内情はどうなっている?」


「調査した結果だが、大将の言うとおり、かなり危うい状況だった。まず、軍事力の強化。武器の増産。兵器の開発。帝国は近いうちに戦争でもおっぱじめるんじゃないかって、帝国民も不安がっていたぜ」


「そうか……」


 既にジークフリートの身辺調査を行い、ハーレムルートに突入している事を知っているレオルドは対策を練ることにした。


 まずハーレムルートについてだが、大まかな流れとしては帝国戦争編、聖教国陰謀編、魔王編の三部構成になっている。


 だから、これから起こるのは最初のイベントである帝国戦争だ。一応、対策というよりは起きないようにレオルドは裏工作をしていた。ギルバートを帝国に送り込み、戦争を起こす張本人である第二皇子を暗殺しようと企てたりしたが、守りが固く断念せざるを得なかった。


 いくら現役を引退したとはいえ、伝説の暗殺者であるギルバートでさえ突破出来ないとはレオルドも思わなかった。


 これは想定以上に厳しいものになりそうだと考えるレオルドは足りない頭を必死に回転させて、対策を練っていく。


 もしも、戦争になれば最初に帝国が狙ってくるのはゼアトである。王国で防衛の要となっているゼアトを落とすのは理に適っている。


 ただレオルドは戦争になる可能性を考慮して、ゼアトの軍備を強化している。何度も王都へと足を運び、国王と宰相に相談して頭を下げて軍備の強化を取り付けた結果だ。

 そのおかげで、ゼアトは今まで以上に固い守りとなっている。そう簡単には帝国に落とされないだろうとレオルドは自負している。


 しかし、兵器の開発は上手くいっていない。レオルドが持つ異世界の知識は残念ながら、軍事兵器に流用出来る物はない。

 強いて言えば自動車を移動手段に用いるくらいだろう。


 一応、その手の知識を持つ人材を集めて兵器開発に携わせているが、今の所難航している。

 そもそも、秋と冬の数ヶ月しか経っていないのだから、当然といえよう。


 兵器の開発の方は期待できそうにないが、ゼアトの騎士団は着実に強くなっている。レオルドがバルバロトに指示を出しており、騎士の強化を行っていた。

 ただ、懸念するべき点は騎士団の数が少ないという事。レオルドは使える人脈を使って騎士を集めようとしたが、他の貴族から邪魔をされてしまい満足に集める事が出来なかった。


 戦争でも起こそうとしているのか、内乱でも起こそうと言うのかと疑われてレオルドは一部の貴族からは反感を買っていた。


 それもそうだろう。領地を発展させて豊かになっていくゼアトを見れば、多くの貴族は気持ちのいいものではない。嫉妬して少しでも足を引っ張ってやろうと考える者は当然いる。


 その事にレオルドは腹を立てたが、すぐに割り切った。これから先、何度も同じような事が起こるはずだから一々気にしていては埒が明かないと、レオルドは切り替えて前へと進む。


 レオルドは報告書に目を通すと、そこには現在のジークフリートについて書かれている。

 現在、ジークフリートは騎士となり鍛錬に励み、任務をこなしている。基本は魔物の駆除、盗賊や山賊の討伐といったものだ。

 恐らく、闘技大会の頃よりは強くなっているに違いない。スキルについてはレオルドが派遣したカレンから伝わっているので、問題なく成長している。


 ただ、ゲームと違い絆の力が発揮される友好度の数値が可視化されないので、何度も検証しなければならない。

 レオルドは知らないがジークフリートは同期の騎士と握手したりしてスキルの確認を行っている。


 今の所、絆の力が作用されたのはロイスとフレッドの二人のみ。

 女性には試してないのかと言えば試してはいない。男と違って絆の力が作用する条件が厳しすぎる。ゲームでは簡単だったのだろうが、現実になれば色々としがらみが多いので難しいのだ。


 その事をレオルドは考慮していなかった。


 しかし、ジークフリートの強化は必須事項である。何故ならば、戦争に終止符を打つのがジークフリートだからだ。

 これはゲームでの話ではあるのだが、ヒロインの中に帝国の皇女がいる。その皇女が帝都へと侵入する抜け道を知っており、尚且つ皇女の協力者が手伝ってくれて、皇帝の前まで連れて行ってくれる。


 現実でもそうなるかと言われれば怪しいかもしれないが可能性は高いとレオルドは思っている。なにせ、ジークフリートのハーレムメンバーに皇女がいるのを確認しているからだ。


 運命48ゲームの知識を持っているレオルドが行けばいいのではと思うかもしれないが、色々と障害があり皇女の協力者がいなければ突破できないのだ。


「シャルが協力してくれるなら、簡単な話なんだけどな……」


 愚痴を零すがシャルロットは協力してはくれない。シャルロットは国家に関わらないと誓っているのだ。

 だから、レオルドを助けたり協力したりはするけど、国が関わるような事であれば力を貸さないようにしている。


「さて、どうするか」


 偵察部隊を帝国に送り込み、定期的に情報を仕入れているレオルドは戦争に備えていく。

 本当にゲームの通りに進めば、帝国と戦争になりレオルドは前線に立つことになるだろう。


 ちなみにだが、ゲームのレオルドは戦争になると真っ先に逃げ出して生き延びる。ただ、やはり寿命がほんの少し延びるだけで最後は死ぬのであった。

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