第184話 俺の知らないところでフラグを立てないでくれます?
翌日、レオルドは朝早くに目を覚ましており、鍛錬を行っていた。今日、久しぶりにシルヴィアに会う事になるレオルドはほんの少し緊張していた。
(む〜……まさか、お茶会に来るとは。まあ、レイラと殿下は同い年だし、身分だと近いからな。不思議ではないけど……接点なんかあったか?)
木剣を振るいながらレオルドは考える。レイラとシルヴィアの接点について。
しかし、ここは現実なのでレオルドが知らないだけで二人は多少の接点があるのだ。
まずは、同い年の同性として誕生日パーティーなどにレイラは参加している。レオルドも何度か参加はしているが、金色の豚時代には招待状が来ず不参加になっている。その間、レイラは何度かシルヴィアとは顔を合わせているのだ。
そして、今はレオルドのためにとシルヴィアと手紙をやり取りしていた。主にレオルドの近況報告ではあるが、シルヴィアにとってはありがたい情報源になっている。
なにせ、レオルドの帝国や聖教国と繋がっているという疑いは完全に晴れており、監視がなくなり情報が入ってこなくなっていたのだ。
シルヴィアが送り込んだイザベルがいるではないかと思うのだが、疑いが完全に晴れたのでその任は解かれている。
おかげでレオルドのことは噂程度しか知らなかったのだが、レイラのおかげで詳しい事情まで知っている。レオルドの方はそのようなこと全く知らないが。
とにかく、今日はシルヴィア殿下がお茶会に来るということなのでレオルドは鍛錬でかいた汗を流すために浴場へと向かった。
汗を流し終えるとレオルドは自室へと戻り、しばらくベッドで横になる。
レオルドがしばらくベッドで横になっていると使用人がやってくる。どうやら、朝食の準備が出来たようだ。レオルドがベッドから起き上がり、部屋を出て使用人と共に食堂へと向かう。
昨日と同じように家族と朝食を取り終えると、レオルドはレイラに連れられてお茶会をするテラスに行く。まだ、準備中のため使用人が机や椅子を用意している。
「ここでするのか?」
「どこですると思っていたの?」
「いや、そういうことじゃないんだが……殿下はいつ頃来るんだ?」
何気ない質問だった。そう、何気ない質問である。レオルドからすれば。だが、レイラからすれば、まるでレオルドがシルヴィアに会いたくて仕方がないように見えた。
「レオ兄さん、そんなに殿下にお会いしたいの〜?」
「は? なんでそうなるんだ?」
「え? だって、レオ兄さんが殿下について聞いてくるから、そうなんじゃないかって……」
「いや、ただ単に殿下がいつ来るか聞いただけだろう? 俺はそれまで自室で勉強でもしてようかと思ったんだが?」
「あ、そ〜なんだ……殿下はお昼を過ぎたら来る予定だから、まだ時間はあるわ」
「そうか。なら、俺はそれまで自室で勉強でもしていよう。頃合いになったら呼んでくれ」
そう言ってレオルドはレイラと分かれて自室へ戻ろうかとしたら、レイラに呼び止められる。
「待って、レオ兄さん。その、お邪魔でなければ私も一緒に勉強をしたいのだけど……ダメ?」
「別にいいぞ? しかし、珍しいな。お前が勉強をしたいだなんて」
「だって、私も今年から学園に通う事になるから勉強はしておくべきでしょう?」
(そ、そうだった……! レイラとレグルスが学園に入学するんだった!)
レオルドとしては微妙なところだろう。折角、レイラと仲直りしたというのに主人公の毒牙にかかってしまうなんて、あまりにも悲しい。
しかし、レイラがヒロインの一人になっているのは確かなのでどうすることも出来ない。願わくば、レイラがジークフリートに好意を抱かない事を願うだけだ。
「どうかしたの、レオ兄さん?」
心配そうに見てくるレイラを見てレオルドはどうしたものかと頭を悩ませる。レイラには幸せになってほしいと思っているレオルドはジークフリートについて注意をさせるべきかどうかと迷う。だが、やはり恋とは本人の意思が重要だ。
ならば、レオルドは口出しするべきではないだろう。だから、レオルドは何も言わずにレイラの頭に手を置いて、笑う。
「ふ、なんでもない。俺が勉強をみてやろう」
「え、なに!? 急にどうしたの、レオ兄さん?」
「む、すまん。頭に手を置くのはダメだったな」
「そ、それは別にいいのだけど……でも、急にどうしたの?」
「なんでもないさ。それより、勉強だろう? さあ、行くぞ」
「あ、待って、レオ兄さん!」
テラスから出ていくレオルドを慌てて追いかけるレイラ。二人はシルヴィアが来るまでの時間、勉強に費やすことにした。
「レオ兄さん。ここはどう解けばいいの?」
「ん? ああ。ここはこうしてだな――」
二人揃って勉強する仲の良い兄妹の時間が過ぎていく。
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