第179話 すごろくで言えばまだ半分も来てない
不死鳥の尾羽を手に入れてから、一週間ほど経過していた。書類仕事に
(不死鳥の尾羽を手に入れたけど、本物だっていう確証がないから結局安心は出来ないってわけか……)
蘇生アイテムを手に入れて死ぬ未来を回避できると狂喜乱舞したかったが、曖昧なものとなっており結局安心することは出来なかった。だから、これからも今まで通り死ぬ未来を回避するために頑張らなければいけない。
(振り出し……ってわけじゃないけど、新しい対策を考えなきゃな)
まだまだレオルドは死ぬ未来を回避するために、あらゆる可能性を探さなければならない。なにせ、必ず死ぬのだから。どれだけ理不尽だろうと生き残ると決意したのはレオルドだ。ならば、ここで諦めるわけにはいかないだろう。
ぼんやり考え事をしていたが手はしっかりと動いており、レオルドは書類仕事を終えると息抜きのために自動車製造の工場へ向かう。
現在、自動車製造はマルコ主導の元に進んでおり、あとは耐久性を上げるだけとなっていた。性能テストでは、時速百キロを超えたところまで確認できている。しかし、走行距離が短いので、まだ商品として売るわけにはいかなかった。
今後の課題として走行距離一万キロを目標にしている。最低でもそれだけ走ってもらわなければならないだろう。馬車に変わり、新たな移動方法として確立するためには安全性や耐久性は必須である。
(自動車が完成したら個人用にバイクでも作るかな〜)
まだ完成の目処も立っていないのに呑気なことを考えているレオルドは工場に顔を出して、マルコを含めた作業員達と少しだけ雑談をしてから工場を後にした。
次にレオルドが向かったのは建設中である孤児院だ。発案はレオルドだったが、流石にレオルドの仕事量を考えれば任せるのは無理なので王都から土魔法の使い手を集めて、孤児院のデザインを考えたサーシャに任せていた。
どの程度、出来上がったかを確かめるためにレオルドは現場に顔を出す。孤児院はまだ出来上がっていなかったが、サーシャの監督の下順調に作業は進んでいた。これならば、近い内に完成するだろうと満足したようにレオルドはその場を後にする。
そして、最後に着いたのは現在進めている区画整理をしている現場だ。少しづつではあるがゼアトに移住者が増えてきているので、居住区を増やす必要がある。なので、今のゼアトでは最優先で事業を進めている。
本来なら年単位でかかる作業も魔法を使えばすぐに終わる。とは、言っても更地に変えるのは一瞬だが、建造物を作るのは時間がかかる。サーシャのデザインを元に作業員達が一つ一つ丁寧に作っているが、精密な作業なので苦労している。
それでも、いいものにしようと一生懸命頑張ってくれているのだからレオルドとしては大助かりだ。それに、作業員の大半はゼアトに移住希望なのだ。なら、力が入るのも当然と言えるだろう。完成が非常に楽しみなところである。
息抜きとして色々な現場を見回っていたレオルドは屋敷へと戻る。いつの間にか溜まっている書類を目にして苦笑いを浮かべながらもレオルドは書類を手にとる。イザベルに紅茶を淹れてもらい、ゆっくりと書類を片付けていくのであった。
その夜、レオルドはシャルロットと一緒に転移魔法でゼアトから遠く離れた森の中に来ていた。いつものように魔法の鍛錬である。
「さあ、いつでもいいわよ〜」
「行くぞ!」
開始の合図はなく、シャルロットが手招きをしてから始まる。レオルドは一切の容赦なくシャルロットに向けて魔法を放つ。
「ライトニング!」
空から一条の光がシャルロット目掛けて落ちるが、障壁に阻まれて散ってしまう。そこへレオルドが近づき、物理攻撃に切り替えるがシャルロットは物理障壁、魔法障壁の同時展開をしているので攻撃が当たることはない。
「ちっ!」
舌打ちをするレオルドはシャルロットから距離を取るように離れる。その際に何発か魔法を放つが全て障壁の前に消えてしまう。
「
「ッッッ!!!」
闇属性の魔法で対象を強制的に眠らせる魔法を受けたレオルドは強烈な眠気に襲われる。しかし、すぐさま首を激しく振って眠気を吹き飛ばす。だが、それは悪手である。シャルロットから目を離すということは、戦いの最中にやってはいけないことであった。
レオルドがシャルロットに目を向けたときには姿が消えていた。シャルロットはレオルドの睡眠が効かなかったときに転移魔法で視界の外側へと逃げていた。世界最強の魔法使いを視界から逃してしまったのは痛恨のミスである。
探査魔法を駆使してシャルロットの姿を探すレオルドに数え切れないほどの魔法が飛来する。それらを視認したレオルドは障壁を張り巡らせて全力で防御に力を入れる。森の中に爆発音が鳴り渡り、爆煙がレオルドの視界を埋め尽くす。
(落ち着け。探査魔法で探せばいい…………見つけた!)
魔力の反応を見つけたレオルドは一気に駆ける。爆煙を抜けた先にシャルロットの姿を見つけたレオルドは、さらに加速して拳を叩きつける。
だが、それは囮であった。
レオルドが殴ったのはシャルロットそっくりの土人形であった。崩れる土人形を唖然と見つめて固まるレオルドの背後にシャルロットが現れる。
「しま――」
「駄目よ〜。油断しちゃ」
「がっ!?」
至近距離から魔法を受けたレオルドはその場に膝をつく。意識を失うことはなかったが、しばらく動けそうにない。やはり、まだまだシャルロットには勝てそうにない事がわかった。
「く……なんだ、さっきの土人形は? お前にそっくりなのも驚いたが、どうして魔力反応があったんだ」
「それはあなたを騙すために私が魔力を付与してたのよ。視界が悪いから、あなたはきっと魔力反応を目当てに動くと思って用意したの」
「なるほど。まんまと引っかかったわけか……」
「そういうことよ〜」
タネがわかればどうということはないが、魔力反応に頼っている間は何度も引っかかってしまいそうだ。レオルドは新たな課題にどうするべきかと頭を悩ませる。その後も、何度か模擬戦を行ったがレオルドはシャルロットに勝つことはおろか傷一つつけることは出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます