第168話 子供だからって容赦しねえからな

 被害者の家を出ていくレオルド一行。まずは情報収集の為、村を歩き回り話を聞いていく。

 しかし、思った以上に情報は集まらなかった。


「うーむ……意外と集まらなかったな」


「どうしますか?」


「ふむ……被害者の畑に行ってみるか」


 ひとまず、情報収集を中止してレオルドは被害を受けたという畑へ向かう事にする。被害者の家に行き、女性に畑へと案内してもらう。


 被害を受けたという畑に辿り着く。そして、被害を受けたという場所にまで連れて行って貰う。


「ここです」


 女性が指を差す場所を調べてみると確かに子供の足跡が残っていた。ゴブリンやコボルトとは違うので子供のものだと分かる。

 足跡の続く方向に目を向けるが、途中で消えている。誰かが意図的に消したのかと思ったレオルドは女性に足跡の事を尋ねる。


「この足跡は消したのか? それとも消えたのか?」


「消えてました。私達も足跡を追いかけようとしたのですが、途中で消えている事に気がついたんです」


「……そうか」


 手がかりである足跡が途中で消えてしまったのでは追いかける事が出来ない。また、振り出しに戻ってしまったと思われたが途中で消えている足跡の場所にバルバロトが近づき確かめる。


「これ……一つ聞きたいのだがここは被害を受けてからそのままなのか?」


「えっ、そうですけど?」


「ふむ。レオルド様。犯人はただの子供じゃないかもしれません」


「なに? どういう事だ?」


 気になる事を言うバルバロトの元へと近づくレオルドは消えている足跡を確かめる。


「分かりますか?」


「……さっぱり分からん!」


「これ、意図的に消されてるんです。盗賊とかがアジトを特定されない為にやるんですよ」


「なんだとっ!? じゃあ、この足跡の主は盗賊というわけなのか?」


「まあ、必ずしもそうと決まったわけではありません。でも、手口からすると可能性はあります」


「子供なのにか?」


「子供だから詰めが甘かったのでしょう。本物の盗賊なら最初から足跡を残しませんよ」


「ああ、なるほどな。しかし、盗賊か……」


「どうしますか? 部隊を組みここら一帯を捜索しましょうか?」


(うーん……戦力的にはこの三人で十分だ。でも、子供ってのが引っかかる。何か、忘れてる気がするんだよなぁ……)


 腕を組んで眉間に皺を寄せるレオルドにバルバロトは息を呑む。これ程までにレオルドが悩んでいるということは、とてつもなく厄介な案件なのかもしれないとバルバロトは勘違いしていた。


(あー! あと少しで思い出しそうなのに! モヤモヤするなぁ〜!)


 頭を掻きむしりたくなる衝動を抑えてレオルドは考えるのをやめる。ようやく腕を組むのをやめて、元の表情に戻ったレオルドを見てバルバロトは期待を寄せる。


「この三人で調査を行う。バルバロト、シャルロット。一度、馬を取りに戻るぞ」


 一旦、三人は預けていた馬を取りに戻る。馬を取りに行った三人は馬へ跨ると、レオルドを先頭に村の外にある森へと入っていく。


 特に何かを考えている訳ではないので、レオルドはあてもなく馬を進めていく。アホとしか言いようがなかったが、偶然にも上手くいくこととなる。


「む……?」


 レオルドが気付くと同時にバルバロト、シャルロットの二人が警戒を強くした。


(囲まれてるな。盗賊か?)


 森の中を進んでいたレオルド達を複数の人間が囲んでいる。草木に隠れて気配を隠しているが三人には丸わかりであった。

 しかし、襲っても来ない相手を盗賊と断定するのはどうかと悩むレオルドは腕を組んで首を捻る。


 しばらく、レオルドが考え込んでいた相手に動きがあった。三人を襲うような事をせずに逃げようとしている。


「レオルド様、追いかけますか?」


(あっ、思い出したわ。これ、確かサブイベントの少年盗賊団だ。確か、餓狼の牙が逮捕された後に出てくるはずなんだけど、なんで今なんだ?)


 少年盗賊団。これは運命48ゲームだと餓狼の牙が逮捕されると出現する。内容はジェックスが世話をしていた少年少女達が餓狼の牙の真似事をするようなものだ。

 しかし、所詮は子供の真似事。すぐに、バレてしまい主人公達に叱られて終わりだ。ただし、少年少女達は餓狼の牙を逮捕した主人公達を激しく恨んでおり、恨み辛みをぶちまけるのだ。


 これが意外と心を抉る。


 主人公達は正義という名の下に餓狼の牙を捕らえたのだが、少年少女達にとっては餓狼の牙が正義で主人公達が悪だったのだ。故に責められた主人公ジークフリートが弱音を吐いたりする事になる。


 それが痛々しいので見ている方まで辛くなるのだ。


 さて、そんな少年盗賊団が何故今現れたのか。その理由はまだ分からないがレオルドは一先ず話を聞いてみる為に隠れている子供達に聞こえるように大声を出す。


「そこに隠れているのは分かっている。酷いことはしないから出てきて欲しい。話がしたい!」


 すると、草木の陰に隠れていた子供達が姿を表した。


(逃げると思ったんだが、意外だなぁ)


 真っ直ぐこちらを見てくる子供にレオルドは目を合わせる。


「君がリーダーか?」


「貴族が何の用だ!」


「口の利き方には気をつけろ、と叱る所だが大目に見よう。一つ聞きたいんだが、この先にある村から作物を盗んだか?」


 なるべく刺激しないように優しく問い掛けるレオルドだが、子供の方は気に触ったのか怒鳴り声を上げる。


「お前には関係ないだろ!」


(うーん、埒が明かないなぁ……このままだと、バルバロトが怒りかねんな)


 背後をチラリと盗み見してみるレオルドにはバルバロトが僅かに怒っているように見えた。このままだと、バルバロトが子供達を叱り付けるかもしれない。

 そうなると、余計に話が拗れてしまう。それだけは避けなければならないとレオルドは頭を悩ませるのであった。

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