第165話 大人になるとサブキャラの方が魅力的に見えるよね

 さて、レオルドが気にして仕方がない運命48ゲームの主人公ことジークフリートは順調にハーレムを増やしていた。


 数えるのが嫌になるほどだ。ジークフリートが形成しているハーレムは周囲の男子から羨望の眼差しと嫉妬の眼差しがあった。

 しかも、ハーレムの中には最近転校してきたばかりの帝国第七皇女と聖教国の聖女の姿もある。流石はエロゲの主人公だ。フラグを建てるのは赤子の手をひねるよりも簡単である。


 とは言っても本当に主人公補正があるわけではない。ジークフリートの人間性、人としての魅力があってこそだ。故にジークフリートは主人公たり得るのだ。


「なんだかなぁ〜」


「どうしたんだ、ロイス?」


「ああ? そりゃ、アレよ。おまえの嫁達よ」


「嫁達って、彼女達はそんなんじゃないぞ」


「はあ〜〜〜、やだやだ。自覚がないって怖いね〜」


「自覚って……そもそも、彼女達は友達でそういう関係じゃないって。それに、俺は男爵家の人間だから身分差がありすぎる。ここは学園だから身分差を気にせず接してるけど、本当なら話す事すら恐れ多いのに……」


「かぁ〜っ! モテる男は言う事が違うねぇ〜!」


「だから、別にモテてるって訳じゃないって!」


 ジークフリートは友人であるロイスにヒロイン達との関係について必死に否定する。

 この男、ロイスは運命48ゲームでもジークフリートの友人である。ちなみに、本名はロイス・ドロール。ジークフリートと同じく男爵家の嫡男である。


 運命48での役割としては所謂三枚目だ。ムードメーカーでもあり、尚且つ熱血な部分もあり人気なキャラの一人である。普段はおちゃらけてるのに、主人公が気落ちした時には励ましたり、仲間を守る為に身を呈したりと、普段とのギャップに心惹かれる人間は多かった。


「まあ、お前がどう思っていようとも向こうは違うだろ。誰かを好きになったら、誰かを嫌いになるわけじゃねえけど誰かを傷つける事になるんだ。そこんとこは理解しとけよ」


「うっ……まあ、それくらいは分かってるつもりだ」


「もっとも、あのレオルド・ハーヴェストみたいにとんでもない功績でも挙げりゃハーレムも可能だけどなぁ!」


「それは、流石に無理だろう。だって、転移魔法なんて御伽噺でしか聞いたことなかったんだぞ。それが今じゃ、身近なものになったんだぞ。俺には到底真似出来そうにないさ」


「転移魔法は無理でも他にあるだろ。モンスターパニックで活躍したりってな」


「それも、レオルドのことじゃないか!」


「はははっ! そりゃ、仕方ねえだろ。実際、アイツは学園を退学になってから変わった。それも、とびっきり凄い方向にな。今では、レオルドを王都に呼び戻した方がいいって声も聞くしな」


「本当にな……どうして、変わったんだろうか」


「知らねえよ。元々は神童って持て囃されてたからな。その時の事を思い出したんじゃね?」


「つまり、昔に戻ったってことか?」


「あくまで予想だ。でも、それならなんであんなに酷い姿になったかだよなぁ……。だって、金色の豚って呼ばれてたんだぜ? 俺なら絶対に御免だね」


「何か意味があったとか?」


「あるわけねえだろ! 太るメリットがどこにあるんだよ!」


「えっ、うーん……? 敵から身を守るため?」


「馬鹿かよっ! むしろ、横幅増えていい的になるわ!」


「あっ、そうか。じゃあ――」


「まだ続くんかいっ!」


 見事なツッコミを入れるロイスとまだまだボケるジークフリートの二人。しばらくの間は男同士の話し合いが続いていたが、そこへヒロイン達が合流して大所帯になる。


「二人でなんの話をしてたの〜っ?」


「ああ、コレット。実はお前らの中で誰が一番おっぱい大きいかを議論していたんだ」


「んなぁっ!?」


「ちなみに、一番大っきいおっぱ――ぶへっ!」


 合流してきたヒロイン達の中からコレットが二人が話していた内容がどんなものだったかを聞いたら、ロイスがとんでもない嘘をついた。

 思わず驚いたジークフリートは大きな声を出してしまう。そして、ロイスが笑いながら続きを言おうとしていたら、魔法で吹き飛ばされてしまう。


 幸い、威力は高くないので大怪我をすることはない。ただし、普通に痛いので悶えることにはなる。ロイスは痛みに悶え苦しんでいた。


 その姿を見て、ジークフリートは次は自分の番だと覚悟をする。

 しかし、ジークフリートの覚悟は無駄に終わることになる。


「ねえねえ、ジークは誰のおっぱいが好きなの?」


「えぇっ!? いや、えっ? だ、誰のって、そんなの」


「選べないのかしら?」


「いぃっ!? そういう訳じゃないって! 大体、さっきのはロイスの嘘で――」


「恐らくはそうなのでしょうね。でも、ジーク。貴方、今私達の胸ばかり見ていたけれど?」


 冷や汗が止まらないジークフリートはエリナによって暴かれた。もはや、逃げ場はない。彼女達にはジークフリートがどこを見てるか全てバレていた。

 言い逃れが出来ないジークフリートは彼女達によって粛清されるのであった。


「うわあああああああああっ!!!」


 ジークフリートの叫び声が学園にこだまするのであった。そして、レオルドが知りたくてたまらなかったジークフリートが選んだ道はハーレムであった。


 いずれ知ることになるだろうが、恐らくレオルドは泣き叫ぶ事になるだろう。よりにもよってハーレムルートを選んだジークフリートに向かって。二人が再び出会うのがとても楽しみである。

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