第162話 ワタクシ、何も出来ませんでしたわ
シャルロットの登場で滅茶苦茶になってしまったが、大きな問題もなく終わった。帝国の使者を見送ったレオルドは激しい疲労感に襲われるが、応接室へと向かう。
応接室には、シャルロットを呼びにいって姿を消していたシルヴィアがいた。なにやら、気まずそうに髪の毛を弄っている。
それもそうだろう。あれだけ息巻いていたのに、いざ始まった交渉ではあまり役に立てなかったのだから。
だが、それは仕方ない事であろう。先の交渉はあまりにも帝国が強引過ぎた。下手をすれば戦争にも発展するような内容であった。
それをシャルロットという切り札を使って有耶無耶に出来たのだから悪い結果ではない。
ただ、シルヴィアからすれば自分は特に何もしていないと思っている。これではレオルドにどのような顔をすればいいかと困っているのだ。
「殿下。今回は殿下がいてくれたおかげです。本当にありがとうございました」
「へ……?」
なぜ、お礼を言われるのか理解できないシルヴィアは思わず呆けた声を出してしまう。シルヴィアは一体なぜレオルドが感謝をしているのかを知るために質問をする。
「どうして、レオルド様は私にお礼を? 今回、解決してくださったのはシャルロット様ですよ?」
「そのシャルを動かしたのはシルヴィア殿下、貴方ですよ。私は知っています。シャルは国家が絡む事には手を出さない人間だと。事実、シャルは私の弟と妹が誘拐された時、一切手を貸してくれませんでしたからね。まあ、私が死に掛けた時は助けてくれましたが、それは二人を助け終わっていたからです。だから、予想でしかありませんがきっと殿下は私の為にシャルの要求を受け入れたのでしょう。なら、感謝しかありませんよ」
嬉しかった。ただただ、嬉しかった。レオルドがそこまで考えてくれていた事が。たまらなく、嬉しかった。感極まって泣いてしまいそうになったシルヴィアは、なんとか堪えて微笑みを浮かべる。
「いえ、私にはあれくらいしか出来ませんでしたから」
「それでも、私にとっては殿下は恩人です。いつか、必ずこの恩を返しましょう」
(でしたら、結婚を……なんて、野暮ですわね……)
心の中に留めておくシルヴィアはレオルドに悟られないように笑って誤魔化した。
「ふふっ。でしたら、私が困った時は助けてくださいね」
「はい。必ずや」
一難去ってまた一難ということはないが、レオルドはとりあえず帝国の使者を追い返すことが出来たので一安心する。
しかし、問題は山積みである。帝国が王国へと喧嘩を売ってきたようなものだから、警戒しておかねばならないだろう。
(帝国と戦争はゲームでもあったが、まだ時期じゃないだろう……)
運命48ではヒロインの一人に帝国の皇女がいる。主人公が皇女ルートに入ると帝国と戦争が勃発するのだ。
理由は帝国の皇帝が暗殺されてしまい、皇位継承問題が発生するせいだ。暗殺されたことで 任命することも出来なかったので皇子、皇女の誰が皇帝になるかで揉めることになる。
順当に考えれば、第一皇子が皇帝に任命されるのだが、第一皇子まで暗殺されてしまう。
継承権を争って泥沼化してしまうように思われたのだが、実は第二皇子の仕業である事が判明する。第二皇子は第三皇子、第四皇子、第一皇女の三人と手を組んでおり、皇帝と第一皇子を暗殺したのだ。
第二皇子が皇帝になったまではいいのだが、第二皇子は野心家であった。その初めとして王国を攻め滅ぼそうと考えたのだ。なぜ、聖教国ではないのかと突っ込みたくなるが、主人公がいるのが王国なのだから運命48の展開としては当たり前のことであった。
ちなみに、戦争が始まるとゼアトに帝国軍が攻め込み命乞いをするレオルドを殺すのだ。敵対する意思がなく無様に命乞いするレオルドを容赦なく殺すあたり、帝国の本気度が伝わってくるとはユーザーの意見だ。
さて、話は逸れたが戦争は簡単に終わることになる。それは、主人公とヒロインが帝都へと電撃作戦と称して皇帝と戦うのだ。皇女が抜け道を知っており、協力者がいたおかげで帝都の防衛を掻い潜り、皇帝と戦い勝利する。
主人公達が勝利した事により、ヒロインである第七皇女が女帝として君臨する事になり主人公が補佐をするという結末である。
そして、ハーレムになった場合も戦争が始まる。理由は若干違い、第二皇子がクーデターを起こして、皇帝と第一皇子を拘束してしまう。なぜ、殺さずに拘束したのかと疑問を抱くだろう。
答えは、単なる逆恨みである。有能な兄に、そんな兄ばかり褒める父親に第二皇子は嫉妬に狂い二人を恨んでいたのだ。
その後は、王国に対して難癖つけて戦争を起こす。またもや、レオルドが死ぬことになると思われるが、ここでは死なない。悪運強く生き残る事になる。
そして、主人公とハーレムメンバーが皇帝と第一皇子を救出して第二皇子を倒して幕を閉じるのだ。そこで皇女が晴れてハーレムメンバーになる。
(うーん……考えれば考えるだけ疲れるな)
それもそうだ。ヒロインの数だけ終わりがあるのだ。それに、ここは現実である。もはや、レオルドにも予想が出来ないような展開を迎えている事だろう。
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