第150話 金に糸目はつけない
木材を調達したレオルド達は、シャルロットが所有している魔法の袋に木材を入れてゼアトへと持ち帰る。
ゼアトにも木工職人はいる。ゼアトは交易の町ではないが、国境に近い為に帝国や王国の商人が利用する事が多い。ただし、お金を落とすのは宿泊施設ばかりである。おかげで、宿泊施設をより良くするために家具工房はそこそこ整っている。
そういうわけでレオルド達は木工職人がいる家具工房へと向かった。
「オイラも馬車を作ってたから、作れるぞ?」
「だが、その道のプロではないだろ?」
「そりゃ、本職の人間には負けるよ」
「なら、頼めばいい。金の事は気にするな」
「オイラ、沢山頑張ってレオルド様にこの恩を必ず返すよ!」
「ああ。そうしてくれ」
そんな事を話しているうちに家具工房へと辿り着いた。三人が中へ入ると、椅子や机が売られている。奥へと進んでいくと店員らしき人物がカウンターの奥に座っており、三人を見てから挨拶をする。
「これはどうも、領主様。本日はどのようなご用件で?」
「ああ。こいつの家具をつくってやりたいんだが、今空いてるか?」
「今の時期は特に大きな仕事がありませんから大丈夫ですよ。修理などの依頼はありますけど、手が空いてる職人はいますので」
「そうか。ならば、マルコ。お前が必要なものを注文するんだ」
「ええっ! オイラが?」
「お前の家で使う家具なんだから当たり前だろう」
「わ、わかったよ、レオルド様」
戸惑いながらもマルコは店員に欲しい物を注文していく。その間、レオルドとシャルロットは暇になったので店内を見て回る事にした。
これといって欲しいものはないが、見て回るだけでも十分に楽しむ二人。一通り見て回ると、丁度マルコと店員の話は終わっていたようでマルコがレオルドを手招きしている。
「終わったか?」
「終わったけど。その……金額が……」
申し訳なさそうに顔を伏せるマルコを見て、レオルドは金額を確かめるべく店員と話す。
「支払いはどれくらいだ?」
「ざっとこんなところです」
軽く三桁はいっていた。確かにこれはマルコにとっては超高額だろう。それをレオルドが支払うからと言って本当に払わせていいのかと遠慮しているに違いない。レオルドはその事が分かると、マルコの肩を叩き安心させる。
「大丈夫だ、マルコ。この程度、俺からすれば大した額じゃない」
「で、でもオイラが何ヶ月も働いてやっと買える様な値段だよ……それは流石にレオルド様には悪い気が――」
「心配するな。何度も言ったが俺とお前がいればこの程度の金なんて寝てても入ってくるようになるんだ。だから、安心しろ」
「レ、レオルド様……ありがとうございます」
涙ぐんで頭を下げるマルコにレオルドは頬をかく。本当にこれくらいならば大した問題はないからだ。マルコが設計した車が実現すれば必ず儲かるのは間違いない。
だが、マルコにはまだそれがわからないので、レオルドに対して申し訳なく感じるのは仕方ないことであろう。
「ところで資材の持ち込みは可能か?」
「資材ですか? どこにあります? 表にでもあるんですか?」
「いや、表にはない。だが、持っているのは確かだから、広い場所はないか?」
「でしたら、うちが使っている倉庫がありますのでそちらへ移動しましょう」
店員に案内されてレオルド達は倉庫へと向かう。木材が大量に保管されている倉庫へと来たレオルドはシャルロットを呼び、魔法の袋に入れていた木材を取り出す。
「これは……なんともまあ、便利なものですね」
「他言しても構わんがこいつは俺より強いから気をつけろよ」
ニコニコと手を振るシャルロットが本当に強いのかと疑う店員だが、領主であるレオルドが嘘を吐いているようにも見えないので信じる事にした。
「はは、商人にとっては信用が大事ですからね。他言はしませんよ」
「俺としては襲われるシャルを見てみたかったがな」
「ちょっと~、か弱い乙女をなんだと思ってるのよ!」
「お前がか弱い乙女なら、この世界の人間は蟻以下のような存在だぞ」
「はははっ。大変仲がよろしいのですね」
「どこをどう見てそう言えるのよ~」
「まあ、俺とシャルの仲は一言では言い表せんからな」
秘密を共有しており、師弟のような関係で、友人のような気軽さの二人だ。確かに、言葉にして現すのは難しいかもしれない。
「それで、この木材はどれくらいで買い取ってくれる?」
「査定しますので少々お待ちください」
店員は他の人間を呼んでから、レオルド達が持ってきた木材を査定していく。しばらく、その様子を見守る三人はどれくらいで売れるのだろうかと考えていた。
査定が終わり、レオルド達と話していた店員が三人に近付いた。
「査定が終わりました。これくらいでどうでしょうか?」
渡された紙にはそこそこの値段が記されていた。これならばとレオルドは交渉を始める。
「この買い取り金を先程の支払いから差し引いてくれないか?」
「いいですよ」
「やけにあっさりしてるな」
「領主様の頼みですし、うちとしても損をしているわけじゃありませんので」
「そうか。そう言ってくれると有り難い」
「家具の方はいくつかありますけど、どうしますか? 持って帰られます?」
「あー、マルコ。どうする?」
「えっ? 出来るなら持って帰れる分は持って帰りたいな」
「わかった。すまないが、用意できる分を頼む」
「畏まりました」
そう言って店員が在庫にある椅子や机を運んできた。レオルドはそれらをシャルロットの魔法の袋に入れて帰る事とした。
「またのご来店をお待ちしております」
「では、残りを頼んだぞ」
家具工房からレオルド達は待っているであろうサーシャの元へと帰るのであった。
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