第142話 自分の事は棚に上げる
第一号となる有能な人材を手に入れたレオルドはホクホク顔である。思わず、スキップしたくなるほど嬉しいが、周囲の目が気になるのでスキップはしないレオルドだった。
「さて、マルコ。まずはありがとうだ。俺の領地に来てくれて」
「レオルド……さま。本当にオイラの夢を叶えてくれるのか?」
レオルドの後ろを俯いて歩いていたマルコは顔色を窺うように質問する。
「くくっ。愚問だな。お前と俺がいれば必ず実現する。安心しろ。お前の夢は叶い、世界にお前の名前を轟かせてやろう」
さて、どうしてここまでレオルドが自信満々なのかと言うと、理由は一つ。マルコが描いた設計書は自動車だったからだ。
レオルドには真人の記憶があり、真人は製造業の開発・設計を担当していた。もうお分かりだろう。レオルドがここまで自信満々なのは、真人の記憶にある製造業が車に関連していたからだ。
その知識を使えば、帝国の魔法と科学の融合した文明を超えることは不可能ではない。
大陸一の帝国を凌駕する事も夢ではない。
ただ、帝国がそれを許すかどうかだが、それはやってみなければわからないだろう。
「ふっふっふっ。さあ、次は建築士でも探すか!」
「建築士? それならオイラの友達にいるぞ」
「なんだとっ!? どこにいるんだ!」
「あ、案内するから少し離れてくれ」
マルコの発言にレオルドは興奮して、マルコの両肩を掴んで揺らす。がしりと力強く掴まれているのでマルコは痛みを感じており、レオルドに離してもらうように頼んだ。
「すまん。お前に会えただけでも幸運だったのに、まさか求めていた建築士まで会えるとは思わなかったから」
(オイラが女の子だったら惚れてたんだろうなぁ……レオルド様って男のオイラから見てもカッコイイからきっとモテるんだろうなぁ)
顔が近くまで迫っていたので、マルコはレオルドの顔を隅々まで見ることが出来た。おかげで、マルコはレオルドの整った顔面に感心していた。
マルコから見て、レオルドは整った顔立ちをしており男じゃなければ惚れてたという話だ。
イケメンに産んでくれた両親に感謝をしなければならない。それなのに、一時は道を踏み外した豚に成り果てていたのだから罪深い生き物だ。
話はそれてしまったが、レオルドはマルコの建築士をしているという友人に会いに行くこととなった。どのような人物なのかレオルドは事前にマルコに教えてもらう事にした。
「マルコ。お前の友人はどのような人物なんだ?」
「う〜ん……引っ込み思案ですかね。建物のデザインとかよく描いてる癖に他人には見せたがらないんだ。オイラが良いなと思ってもそいつは駄作だなんだって言って破った時もあるんだよ」
「引っ込み思案? どちらかと言えば自己評価の低いネガティブな人間じゃないのか……」
「まあ、そんな感じかな。でも、悪い奴じゃないんだ。ホントに自分に自信がなくて……だから、一人前の建築士なのに仕事をしてないんだよ」
「それはいいのか?」
「建築士は師事して一人前と認められたら、自分で仕事を探すんだよ。だから、自分から売り込みに行かなきゃいけないんだけど……」
「性格上、難しいということか……」
腕を組んで頭を悩ませるレオルドはマルコの友人である建築士を招き入れる事が出来るのだろうかと考える。マルコの言う通りならば、性格上難しいかもしれない。
しかし、権力を行使すれば可能だろう。その場合、使い物になるかどうかだ。出来れば、レオルドも嫌々よりかは合意の元に付いて来て欲しいと思っている。
「ここだ。ここに住んでるんだ」
マルコが指を差した建物は少々廃れた集合住宅であった。どうやら、仕事が無いから稼ぎも少ないのだろうと言うことが分かる。
「……さっき仕事してないと言ったが住む場所はあるんだな」
「オイラと一緒に住んでるんだ」
「は? そんな話聞いていないぞ?」
「ああ、オイラは基本は工房で寝泊まりしてるんだ。でも、ここにオイラが借りてる部屋があるんだよ。そこにオイラの友人もいる」
「お前が食わせてやってるのか?」
「まあ、そうなるかな?」
「ちなみに一つ聞くんだが、男か?」
「女だよ」
(こ、こいつっ! さらっと言ったけど、女と同棲してるのかよ!!)
最早、友人という認識を忘れているのかレオルドはマルコに嫉妬していた。二人っきりの同棲生活が羨ましくて仕方ないのだろう。
レオルドも女性と同じ屋根の下で暮らしてるが、使用人達であり女性という認識ではない。
では、シャルロットはと言うと今の所レオルドにとっては良き友人という認識だ。
これではマルコの事を強く言えないはず。だが、レオルドがその事をすっかり忘れているのは言うまでもないだろう。
「そうか。女性か。付き合ってるのか?」
「え? そんな事考えた事無かったな〜」
「よく考えておけよ。友人と言っても相手は女性なんだ。もしかしたら、お前が考えてる以上に相手はお前の事を思っているかもしれないんだからな」
一度、鏡を見た方がいい。他の人に言ってる場合ではないはずだ。しかし、レオルドがその事に気付くことはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます