第138話 ほげ~~~~~~ッ!?

「レオルド様、この度イザベルさんとの結婚を許可していただきたく存じます」


「ヴァッ!?」


 ゼアトの屋敷に帰ってきたレオルドにバルバロトは開口一番でとんでもない発言をしてレオルドを驚かせる。

 驚いたレオルドはまだ正気に戻らないようで口をあんぐりと開いたまま固まっている。


「やはり、自分ではダメでしょうか……?」


「いやいや! 急になにがあった!? 聞いてないし、そんな素振りは一度も見た事がなかったぞ!」


「それは、自分達の馴れ初めから話せばよろしいでしょうか?」


「いや、いい。十分わかった。少し、イザベルと話したいから、席を外してもらっていいか?」


「彼女が王家直属の諜報員だということは知っていますよ」


 バルバロトはレオルドがイザベルと何の話をするか見当がついていた。だから、先に教える事にしたのだ。イザベルが王家直属の諜報員である事を知っているという話を。


「知っていて決めたのか?」


「はい。私は彼女を愛していますから」


 堂々とした姿で愛を語るバルバロトに横で控えているイザベルがほんのりと赤く顔を染めていた。その反応を見て、どうやら相思相愛らしいとレオルドは確信した。


「そうか。では、イザベル。お前の方はどうなんだ?」


「はい。既に殿下へは報告済みで許可は得ています」


「仕事はどうするんだ?」


 レオルドの言う仕事とは使用人としてではなく、諜報員としての方だ。


「その点に就きましては大丈夫です。既にレオルド様への監視は解かれていますから。帝国との繋がりも疑われておりましたが、それも晴れておりますので」


「そうなのか……では、バルバロトと結婚は問題ないのだな」


「はい。ですから、後は私達の主であるレオルド様から許可を頂くだけとなっております」


「わかった。お前達の結婚は認めよう。ところで、式はいつ挙げる予定なんだ?」


『え?』


「は? なんでお前達が驚いてるんだ。結婚するんだから式を挙げるのは当たり前だろう?」


「いえいえ、レオルド様。私達は貴族ではありませんから籍を入れても式は挙げませんよ?」


「え?」


「そうですよ、レオルド様。結婚と言っても籍を入れて同居するだけですので」


 ここでレオルドは思い出す。ここが中世のヨーロッパを模している時代設定だという事を。


(あー、くそ! 変な所で似てるんだから! どうするか……手を出すべきか?)


 二人には悪いことをしてしまうかもしれないが、結婚のイメージを変えようかとするレオルドは悩んだ。ここで、二人には結婚式を挙げてもらうようにするか、それとも従来通りにするか。


 この世界というよりは王国で結婚する場合は、貴族だと結婚式が行われる。双方の親類を呼んでパーティを行うのだ。

 対して、貴族以外だと夫婦となる男女はまず領主や町長、村長等に許可を貰わなければならない。これは難しい事ではなく報告すれば、後は勝手にどうぞとなる。

 その後は、夫婦となる男女が教会へと赴き司祭に祝福をしてもらうだけだ。


 なんとも簡単なことではあるが、レオルドも詳しい事は知らない。現代日本人が昔の資料を読んで作ったのだろうが、困った話である。


 話は戻ってレオルドは二人の為に結婚式を挙げようと結論が出た。


「よし。二人とも、一つ提案がある。結婚式を挙げてみないか?」


『ええっ!?』


 二人揃って驚く姿にレオルドは笑う。普段、表情が変わらないイザベルまで驚いた顔をしているのがおかしく見えたのだ。


「レオルド様。大変嬉しい提案なのですが、私達には恐れ多いかと……」


 申し訳なさそうに断ろうとするバルバロトの横でイザベルも同意見らしくレオルドに頭を下げている。


「嫌なのか?」


「いえ! 嫌というわけでは……ただ、私達のような騎士と使用人が仕えている主を差し置いて結婚式を挙げるのは流石に……」


「ならば、構わん。俺は気にしない」


「レオルド様がそうでも他の者が黙っていませんよ!」


「むっ……ならば、黙らせる。だから、やってみないか?」


「しかし……」


「レオルド様。何かお考えがあるのですか?」


「ふっ……」


 意味深に笑うレオルドを見た二人は、転移魔法陣を発見した時のようにレオルドは二人が考え付かないものがあるのだと確信する。

 仕える主を信じる二人は、決心する。レオルドの提案に乗ってみようと。


 そして、レオルドのほうは深く考えていなかった。とりあえず、鼻で笑っておけばそれらしくなると考えていたようで、意味深に笑っただけである。

 ただ、上手い事に二人が信じてくれたおかげで話は進む事になる。


「では、お願いしてもよろしいでしょうか?」


「ああ。任せておけ」


 ドンッと胸を叩いて自信満々なレオルドに二人は、これなら任せておいても大丈夫だと安心する。

 一方でレオルドは悩む事になる。どのような事をすればいいかよくわかっていなかった。


(よくよく考えれば自分が結婚したこともないのに、他人の結婚式を考えるって割と無謀だったかも)


 今更である。最早、取り返しのつかない事になっているのは間違いない。バルバロトとイザベルはレオルドが考える結婚式に期待を膨らませている。


 果たして、レオルドは二人を感動させられるような素敵な結婚式を考え付く事が出来るのだろうか。非常に楽しみである。

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