第137話 いよいよ領地へ帰るぞ~!

 さて、約三週間にも及んだ転移魔法の勉強会は終わる事になる。転移魔法陣を研究者達が発動する事が可能になったのだ。

 これで、晴れてレオルドはお役御免である。やっと、レオルドは自身の領地であるゼアトに戻る事が出来る。これには、レオルドも喜んだ。中断していた領地改革も再開できると。


「よくやってくれた、レオルド! これで我が国は更なる発展を遂げよう!」


 褒め称える国王の前に跪くレオルドは深々と頭を下げている。喜んでいる反面、こういう面倒なやり取りは出来れば避けたいと思っていた。


「陛下。転移魔法についてなのですが、最初に私のゼアトに設置するのは本当なのでしょうか?」


「ああ。お前の領地と公爵家の領地、そして王都を繋げようと思う」


「転移魔法陣の最初の設置点に我が領地を選んで頂き、誠にありがとうございます。我が領地の誉れとなりましょう」


 その後も国王はレオルドを褒め称えた。


 ようやく国王との謁見が終わり、レオルドは公爵家に顔を出して帰ることとなる。


「父上、母上、レグルス、レイラ。短い間でしたが、お世話になりました。私はゼアトへと戻ろうと思います。既に聞いてるとは思いますが、転移魔法陣はゼアトに設置をした後にハーヴェスト公爵領と王都の順で設置されるそうです。これで、いつでもゼアトには来れると思うので気が向いたら気軽に私を訪ねてきてください」


 これで、家族の距離はぐっと近くなった。今までは馬車で何日も掛けていた道程が転移魔法陣のおかげで、一瞬で着く事になる。

 それは、離れ離れになったレオルドとの距離が近くなったということ。レオルドに何か不幸な事があればすぐに駆け付けることも出来るだろう。勿論、反対にベルーガ、オリビア、レグルス、レイラの四人に何かあればレオルドはすぐに駆けつけることができるようになった。


 おかげで、別れる事になっても悲観することはない。だって、転移魔法のおかげでいつでも会うことが可能になったのだから。


「……移動は便利になったが、連絡方法が欲しくなるな」


「父上……今はその話はよして下さいよ」


「むぅ、すまんな。一瞬で移動する事が出来るのは素晴らしいが、同じように連絡方法がどうしてもな」


「まあ、分かりますけど……」


 やはり、人とは一つ便利になるとまた便利なものが欲しくなる。だから、ベルーガは次に欲したのは連絡手段だった。レオルドも同じ事を考えたが、実現は難しい。


 レオルドが持つ真人の記憶にある科学を再現する事が出来れば可能かもしれないが、それは難しいだろう。一から十までの知識は無いのだ。それに、あったとしてもこの世界には足りないものが多すぎる。


 なので、難しいというのが結論である。


「はいはい。そういう話は終わりにして、レオルド。寂しくなったらいつでも帰って来ていいからね」


「は、母上。確かに可能ですけど、そのような事で帰るようなことはないですよ……」


「そう? でも、いつでも帰って来ていいのよ?」


「そ、そうですね。時間があれば顔を見せに帰りますよ」


 困ったように笑うレオルドへレグルスとレイラが別れの挨拶を告げる。


「レオ兄さん。またお時間があれば僕に稽古をつけてください」


「ああ、分かった」


「レオ兄さん。楽しみにしててね」


「何をだ?」


 意味深な事を言うレイラにレオルドは問い質したがはぐらかされてしまった。出来ることなら、厄介な事では無いことを願うばかりであった。

 名残惜しいがここでお別れだ。レオルドは王都の近くにある古代遺跡からゼアトの近くにある古代遺跡へと転移して帰ることとなる。


 そして、レオルドは久しぶりにゼアトへと帰ってきたのだった。


「そう言えば、シャルを見てないな。最近、見てないから当たり前になったが……」


 そう言って呟くと、シャルロットがレオルドの前に現れる。


「うおっ! 今までどこにいたんだ?」


「貴方が家族と仲良さそうにしてたから、私は邪魔しちゃいけないと思って家に帰ってたわ〜」


「家って、ゼアトの屋敷にか?」


「あそこはあそこで居心地悪いもの。貴方がいないと皆私の事鬱陶しそうに見てくるし」


「まあ、まだ認めてはいないだろうからな。じゃあ、家ってのは森の奥にあるやつか?」


「ええ、そうよ。そこで、色々と魔法の研究してたりしてたの」


「そうか。所で魔法の袋は量産可能か?」


「う〜ん……難しいわね。今の所、私しか作れないから特注品になるわ〜」


「生産可能なら注文増えそうだがな」


「いやよ〜。お金をどれだけ積まれても作らないわ。だって、面倒だもの。それに、使用用途がろくな事にならなさそうだし〜」


「それは仕方ないだろ。だけど、物資の運搬には使えるんだがな……」


「みんなが貴方みたいな考え方だったら、考えても良かったけど、他の人に作るなんて真っ平御免よ」


「お前がそう言うなら諦めよう。それより、屋敷へ帰るぞ」


「はぁ〜い」


 気の抜けるような返事をするシャルロットと二人でレオルドはゼアトの屋敷へと帰る。

 しばらく空けていたが、今頃ゼアトはどうなっているのかと想像するレオルドだった。

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