第121話 決めた! 私、この人の義娘になる!
伯爵へと昇爵したレオルドは実家である公爵家へと帰ってきていた。勿論、シャルロットも一緒にだ。
そう、世界最強の魔法使いシャルロットとレオルドの母親オリビアが対面する時が来たのだ。
「そちらの方があのシャルロット・グリンデ様?」
「そうです。母上。しばらくは転移魔法の為に滞在する事になりましたのでシャルロットと共々よろしくお願いします」
「よろしくね〜、レオルドママ」
「まあ! まあまあ! ええ、ええ。どうぞ、いつまでいても構わないわ。それにシャルロットさん。孫の予定はいつかしら?」
盛大に勘違いしているオリビアにレオルドは咳き込んだ。
「は、母上っ!? シャルと私はそのような関係では無いですよ!」
「えっ? そうなの? でも、シャルロットさんは私の事をさっきママって言ってたから、私はてっきり二人は結婚するものかと」
「え〜、そう見えます〜? だって〜、レオルド! このまま結婚する?」
「お前も悪ノリするな! 母上、シャルは私の相談役みたいなものです。魔法の知識が誰よりも深く頼りになる女性ですが、結婚などは考えていませんよ!」
「でも、レオルド。シャルロットさんはとても素敵な方じゃない。女の私が見ても惚れ惚れしちゃうくらいのスタイルよ? しかも、世界で一番強い魔法使いなのでしょう? どこに不満があるのかしら?」
「や〜ん! レオルドママったら褒め過ぎですよ〜! どうしよう。レオルドママの子になるなら、私、レオルドと結婚してもいいわ」
オリビアの規格外とも言える包容力にシャルロットも骨抜きである。このままでは、本当にレオルドと結婚もありかもしれない。
それに、レオルドは結婚相手としては申し分ない。現在は伯爵だが、今後も功績を挙げて爵位を上げるのは確実だ。
それに、異世界の知識を用いた領地改革は恐らく帝国すら上回る事だろう。将来を見据えればレオルド以上に優良な男は見つからないこと間違いなしだ。
さらには、オリビアとベルーガの血をしっかりと継いでおり、逞しい身体に女性を虜にする甘い
やはり、これだけの要素が揃ってるレオルドとなら結婚しても問題ないのではとシャルロットは本気で考え始める。
「ねえ、レオルド。私の事嫌いかしら?」
「はあっ!? お前はいきなり何を言い出すんだ!?」
「あら、あらあら? うふふっ。レオルド。ベルーガの方に挨拶を終えたら、シャルロットさんと二人でお話したいのだけどいいかしら?」
「えっ、それは! シャルと母上を二人きりにするのは私としては少し心配です……」
「お願い、レオルド。ほんの少しだけでいいから」
「……分かりました。母上が望むのなら」
「ありがとう、レオルド。それで、いいかしら? シャルロットさん」
「私は全然構わないわ〜」
「シャル。一つだけ言っておく。もしも、母上を傷付けるような真似をしてみろ。その時は俺の一切合切を持って貴様を殺す」
今まで感じたことのないレオルドの本気の殺気にシャルロットはゾクゾクとした。今のレオルドはまだシャルロットよりは弱い。
だが、異世界の知識を持っているレオルドが一切合切を用いて殺すと宣言してきたのだ。つまり、何かしら秘策を持っているという事。
シャルロットはそれが何かは予想もつかないが、本気のレオルドと戦えるのなら戦ってみたいという欲が生まれた。
「うふっ、うふふふふ! 素敵よ、レオルド〜。でも、安心して。貴方のお母さんを傷付けるようなことは絶対しないから」
「……まあ、そうだろうな。お前は悪意を持って近付いてくる奴には容赦しないが、そうでないなら悪いようにはしないって知ってるからな」
「もう私の事理解しちゃって〜。うりうり〜」
嬉しそうにシャルロットはレオルドの頬を指先でぐりぐりする。されるがままのレオルドはオリビアへと顔を向ける。
「母上。まあ、シャルはこんな奴ですけど、よろしくお願いします」
「ええ、大丈夫よ。二人の様子を見て悪い人じゃないってのは十分理解したから」
一旦、オリビアと別れてレオルドはベルーガに挨拶へと向かう。
「……お前はなんともまあ……色々と大変だな」
「慣れました。父上、私は慣れましたよ。ははっ」
「よろしくね〜、レオルドパパ〜」
「パ……おほん。シャルロット様、どうか息子の事をよろしく頼む」
「はぁ〜い。任せなさ〜い!」
「そして、レオルドよ。頑張るんだぞ」
「目が泳いでるぞ、クソ親父ぃっ!!!」
「はあっ!? お前、また私に向かってそのような口の利き方を! いいだろう。一度、お前には父親の恐ろしさを叩き込まねばならんようだな!」
「ようし、やってやろうじゃねえか! 久しぶりですね、父上! 貴方と戦うのはいつぶりでしょうか!」
「表へ出ろ、レオルド!」
「私はママの所に行ってるから、じゃあね〜」
シャルロットは二人の男を放置してオリビアの元へと向かう。そのあと、ドタバタとレオルドとベルーガが外に出て行き、ちょっとした騒ぎになるのは当たり前であった。
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