第111話 くッ……何が望みなんだ!
「えー、色々とあったが今日からこちらにいるシャルロット・グリンデが俺の相談役になる事が決まった。皆仲良くして欲しい」
起きたら世界最強と称される魔法使いが何故かレオルドの相談役になっているのだから、屋敷の住人は全員が驚いた。
「どういう事ですか、坊ちゃま! ご説明をお聞かせください!」
「気持ちは分かるが……受け入れてくれ」
「しかし、その者が本当にシャルロット・グリンデならば自分が何をしているかお分かりなのでしょうね!?」
「分かっている。爆弾を抱えるようなものだが、どうか受け入れて欲しい」
頭を下げるレオルドにギルバートは何も言えなくなる。そもそも、レオルドはこの屋敷の支配者であり絶対的な存在だ。レオルドの決定ならば甘んじて受け入れるしかない。
「私って結構嫌われてるのかしら?」
「今更聞くな! 俺も他人の事は言えないがお前も色々とやらかしているだろう!」
「覚えていないわ。昔の事なんて」
頭痛がするレオルドはこめかみを押さえる。
シャルロットは過去に何度か建造物を破壊したりしている。そのどれもが時の権力者ばかりであったから、歴史に記されているのだ。
「はあ……シャルロット。頼むから暴れたりしないでくれよ」
「シャルでいいわ。そうね~。レオルドが私を満足させてくれれば暴れたりなんてしないわ」
「ああ、そうか。なら、頑張るしかないか」
なんだか卑猥な響きである。満足させるとはどういう意味なのだろうかと家臣達はあらぬ方向に想像している。自分達が眠っていた間に二人は何をしていたのだろうかと。
それは二人だけの秘密だ。
それからは、基本シャルロットがレオルドの側にいることになった。ギルバートよりもレオルドに近い存在となる。
それも仕方のないことだ。レオルドの秘密を唯一知っているのだから。レオルドは話したのだ。真人の記憶にある
さて、レオルドはシャルロットを仲間に加えて、領地改革を進めていく事になる。
「どこに向かってるの?」
「ん? とりあえずこれを読んでおけ」
「は~い」
レオルドは水路を作る為に川の方へと呑気な声で質問してくるシャルロットに計画書を放り投げる。
受け取ったシャルロットは計画書を読みながら、ふむふむと首を動かしている。果たして、理解しているのだろうか。
「ねえ、これって帝国のを真似たの?」
「いいや。俺独自の方法だ」
「ふ~ん」
大体、この世界は現代日本人が考えた、何ちゃってヨーロッパ風な世界だ。ならば、史実のような技術ではなく、現代日本の技術が介入していてもおかしくはない。
レオルドには現代日本人であった真人の記憶があるので、同じになるのは当然だろう。むしろ、有り難い事だ。帝国という前例があるので誰も怪しんだりしないのだから。
ただ、何故レオルドが帝国の技術を知っているのかは疑われるだろう。
そして、作業が始まる。レオルドは水路を作る為に土魔法でがんがん掘り進めて行く。日々の鍛錬のおかげでレオルドは桁違いの魔力を保有していた。
それに加えてゼアトの住民と魔力共有を施しており、レオルドが本気を出せばゼアト程度ならば更地に変える事が出来る程だ。
護衛としてついて来ているギルバートやバルバロトは目の前の光景に目を疑うばかりであった。僅か数分足らずで水路が出来上がっているのだから驚くのも無理はない。
「ふむ。水路はいいが……問題は浄水場か」
レオルドは水道を作り上げる気だ。水路も必要であるが浄水場も必要だ。生水を飲めば、腹を壊すから浄水場で一度水を綺麗な飲める水にしなければならない。
「……」
水道の大雑把な仕組みは知っているがレオルドは浄水場の詳しい仕組みを知らない。ただ、水を綺麗にして飲める水に変えることくらいだ。
早速、手詰まりかと思われたがレオルドはシャルロットと相談する。
「シャル。お前、浄化の魔法陣は描けるか?」
「私を誰だと思ってるの? そんなの朝飯前よ」
「なら、水を浄化することは出来るよな?」
「浄化の魔法で? 出来るけど、それなら水を魔法で出した方が早いわよ?」
「そうだな。だが、俺やお前みたいに皆が魔法を使えるわけじゃない。だからこそ、必要なものがあるんだ」
「ふ~ん。それがこの水道って訳ね」
「ああ。一応聞きたいんだが、半永久的にとかも可能なのか?」
「ええ。魔法陣が周囲から魔素を取り込んで魔力に変換して半永久的に持続させる事は可能よ。まあ、魔素が尽きたら終わりだけどね」
「なら、これから設置する場所を教えるから頼む」
「ええーっ! ただで~?」
「……何が望みだ?」
「貴方が持っている知識で私を満足させてくれたら考えてあげるわ」
「……なら、ここでは教えられんから後払いだ」
「う~ん。どうしようかな~」
可愛らしく身体を揺らして焦らすシャルロットにレオルドは怒りが湧いてくる。ワナワナと怒りに震えていたが、シャルロットはゲームでも主人公達をよく困らせていたのを思い出して、怒りを鎮める。
「はあ~。もういい。自分でどうにかする」
構ってちゃんなシャルロットを放置してレオルドは一人で魔法陣を描く準備を進める。すると、焦ったようにシャルロットが喚く。
「もう! もうちょっと交渉するべきでしょう! なんで簡単に諦めちゃうの~!」
「面倒だからだ」
「あっ! もしかして、ゲーム――むぐっ!?」
シャルロットがとんでもない発言をしようとしたので、レオルドは慌てて口を塞いだ。レオルドは他の人に聞えないようにシャルロットの耳元に顔を近づけて小声で注意する。
「馬鹿! お前以外は知らないんだぞ。余計な事を喋るな!」
「あんっ……!」
突然、嬌声を上げるシャルロットにレオルドは目が点になる。
「私、耳が弱いの。だからそんなに息を吹きかけられると感じちゃうわ」
無性にシャルロットの頭を叩きたくなったレオルドだが、なんとか踏み止まった。ここでシャルロットの機嫌を損ねて、秘密を暴露されてはいけないと我慢したのだ。
「……さっきのこと忘れるなよ」
「は~いっ!」
「本当にわかってんだろうな……」
頭を抱えるレオルドは、さっさと作業を終わらせようと魔法陣の準備を進める。そうしていたら、シャルロットが手伝う気になったのかレオルドの作業を手伝い始めた。
色々と問題はあるが、順調にレオルドは領地を改革していくのだった。
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