第103話 文句あるなら言えよ! 国王によ!

 色濃い日々を送っていたレオルドだったが、ようやく転移魔法の復活を成した功績についての褒賞が用意出来たとの事で王城へと呼ばれる。


 シルヴィアとの縁談の時に予め教えて貰っているので、特に気負うことなくレオルドは王城へと向かう。

 王城の廊下を歩いている時、やけに視線が気になったがレオルドは真っ直ぐに玉座の間へと向かった。


 今回も以前のように主役であるので玉座の間に続く巨大な扉が開くのを待ち、大層な音とともに扉が開く。


 堂々と中央のレッドカーペットを歩き、玉座の前へと進んで跪く。忠義を示したレオルドに国王は頷き、レオルドへ褒賞を与える事を宣言する。


「これより、転移魔法の復活を成し遂げたレオルド・ハーヴェストに褒賞を与える。まずは一億B、次に子爵位を与え、最後にゼアトの領地を与える。異論はないか?」


 誰も異論は無かった。むしろ、異論など挟むことは出来ない。レオルドが成した功績はあまりにも大きいからだ。それに異論を唱えたとしても、返り討ちにされるのが目に見えている。

 だから、ここは何も言わないのが正解だ。そして、後々レオルドへと接触して縁を結んでおくべきだろうと多くの貴族が同じ事を考えていた。


 今後の事を考えればレオルドには多大な利益が巡ってくるだろう。それを逃す手はない。媚びを売ってでもレオルドと仲良くするべきだ。


「次に転移魔法については我が国の学者達が研究を行っている。恐らくだが、近い内に転移魔法は普及されるだろう。その際には転移魔法を活用した公共事業を行うつもりだ。そして、転移魔法による公共事業で得た利益の内、二割をハーヴェスト子爵へ褒賞として与える事に決めた。異論は無いな?」


 これには静観していた貴族達も驚き、玉座の間は騒然となる。国が主導して行う事業に加えて転移魔法の活用だ。どれだけの利益が生まれる事になるかは容易に想像できた。


 舗装もされていない危険な道を騎士という護衛を雇って無駄に金を払うよりは、多少高く金を払う事になっても転移魔法を利用するだろう。

 それに加えて商人がどれだけ金を落とすかは目に見えている。商人たちは品物を輸入したり輸出するのだから、使用頻度は極めて高いはずだ。


 まだ、具体的なことは何一つ分かっていないが、転移魔法が普及すれば莫大な利益が生まれ、その内の二割がレオルドの懐に収まるようになる。流石に個人が得ていいものではないと多くの貴族たちは反発する。


「陛下。恐れながら少々レオルド殿個人が得るにはあまりにも大きいものかと。これではレオルド殿に国の財産が集中してしまう恐れがあるのでは?」


「ふむ。しかし、レオルドの成した功績を考えてみれば当然のものと言えるが?」


「転移魔法の復活は確かに歴史的偉業とも言えましょう。ですが、そこまで褒美を与えるほどではないと思います。既に一億Bに子爵位と領地まで与えてるのですから、多すぎるかと」


「ならば、お前ならばどのような褒美を与えれば転移魔法の復活に相応しいと?」


「ですから、先程陛下が述べた三つで十分だと思うのです」


「そうか。一つ聞きたいのだが、お前は自分が転移魔法を復活させた褒美として満足できるか?」


「勿論でございます。文句の言い様がありません」


 良く口が回る事だとレオルドは感心していた。実際、反発している貴族も体のいい言葉ばかり並べている。本当に当事者になったら不満タラタラで文句を言うに違いない。


 レオルドとしては、爵位に領地を貰えるので転移魔法による公共事業が得られる利益二割を領地改革に費やしたいと考えている。


 だから、ここで邪魔をされるのは許しがたいことだった。しかし、反論しようにも敵が多すぎる。ならば、ここは静観して国王に全て委ねるべきだとレオルドはただ見守る。


「そうかそうか。ならば、お前には転移魔法で得られる利益は回さなくてもいいな」


「は?」


「そうだろう? 先程、自身が言っていたではないか。自分には不要だと」


「あの陛下……?」


「まだ具体的な案は出来ていないが転移魔法が普及した場合は使用料を取るつもりだ。その際には治めている領主にいくらかは還元するつもりだったが……先程の発言を聞く限り必要なさそうだな」


 貴族達に動揺が走る。国王の言うとおりであれば自分達にも利がある。レオルドに比べれば少ないかもしれないが、十分に期待は出来るだろう。しかし、それが無くなろうとしている。


 これはいけない。反発していた貴族たちは手の平を返すようにレオルドを褒め称える。


 耳障りな言葉にレオルドは溜息を零す。貴族とはこういう生き物だと知っていたし、真人の記憶でも政治家は汚職まみれだった。だから、過度な期待はしてはいけないのだ。


「では、これにて謁見を終わりとする」


 やっと息苦しい時間が終わったと安堵するレオルドであったが、この後に転移魔法復活による式典があると知って落胆する。


 恐らくだが、多くの貴族が群がってくることだろう。前回は馬鹿にしていた者達も態度を変えて近付いて来ること間違いなしだ。


 レオルドはそう考えると、復讐心が沸き起こる。前回、自分を見下した者と馬鹿にした奴らに復讐してやろうと決めた。


 器が小さいレオルドだが、やり返した所で罰は当たらない。当然の権利なのだから。

 そう思うと少しだけ気が楽になり、楽しくなってきたレオルドは胸躍るのであった。

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