第84話 凡ミスやで……
色々とあったが、レオルドは早速魔法陣の修復に取り掛かる。しかし、ここで大きな問題にぶつかってしまう。それは、どこをどう直せばいいのか分からないのだ。
元々、この転移魔法陣は
ゲームでは魔法陣が壊れている事に気が付いた
だが、どこをどのように修復したかは明確に描写はされていない。基本的には「ここを」「こうして」「あそこを」「そうして」と曖昧な説明文になっていた。
ゲームならば、それで良かっただろうがここは現実である。
ましてや、レオルドは直ることは知っていても直す方法を知らない。ここに来て、己の浅はかさに頭を痛めるのであった。
(くそ〜! ここまで来て何の収穫も無いとかたまったものじゃない!)
なんとかしなければとレオルドは頭を悩ませる。苛立ちから足踏みを何度もするレオルドに三人は首を傾げる。
先程までは自信に満ち溢れていたのに、急に苛立ちはじめて足踏みをしているのだから三人が戸惑ってしまうのは無理もない。
「どうかなされましたか、坊っちゃま?」
「少し考え事をしているんだ……」
「レオルド様。何か手伝える事はありますか?」
「……ギル、バルバロト。本棚にある本を片っ端から調べてくれ。魔法陣を直す方法を知りたい」
二人は返事をすると、すぐさま本棚に近寄り本を手に取っていく。ここにある本の中に魔法陣を直す手掛かりがあるかもしれないと、レオルドも本を手に取って調べていく。
だが、ここで更なる問題が起きてしまう。
「坊っちゃま……」
「レオルド様……」
「……読めん」
なんとレオルド達が手にした本は古代文明のものであり、古代語で書き記されていたのだ。考古学者ならば、古代語を読む事は出来ただろうがレオルドは古代語など読めない。
つまり、完全に詰みである。レオルドはここで思い知る。恐らくゲームでは
結局、何の収穫もなく帰ることになってしまうレオルドはガックリと肩を落とした。だが、すぐに顔を上げた。
確かに何の収穫も得ることは出来なかったが、古代遺跡の発見並びに転移魔法陣の発見。さらには古代文明の事が記されているであろう貴重な書物。そして、ミスリルゴーレムの残骸。
これだけ見ればかなりの収穫と言えるだろう。この事を国王陛下に報告すれば、間違いなくレオルドは賞賛されるだろう。
ただ、やはり、レオルドは転移魔法陣を直して自分で使えるようにしたかった。私物化は出来ないが、転移魔法を習得出来たかもしれないからだ。
ゲームでは習得出来ないが、ここは現実である為、十分可能性はあった。しかし、残念ながら魔法陣を修復出来ないのであれば諦める他ない。
非常に残念ながらレオルドは古代遺跡を後にしようとした。しかし、その時、イザベルが項垂れていたレオルドに声を掛ける。
「レオルド様。こちらの本に内容は分かりませんが、床に描かれている魔法陣らしき絵を見つけました」
「なにっ!?」
慌ててイザベルに駆け寄るレオルドはイザベルが手にしている本の内容を確かめる。すると、そこには確かに床に描かれている魔法陣と同じ魔法陣が本に書き記されていた。
レオルドは喜んだ。ここに書き記されている通りに魔法陣を描き直せば、発動することは出来ると。
早速、レオルドは壊れている魔法陣を修復していく。魔力を指先に集めて、模様を描き直して魔法陣を完成させる。
これでやっと先へ進めるとレオルドは垂れ流していた汗を拭き取る。汗を拭き取ってから、自分がとてつもなく集中していた事に気が付いた。
その事に少し笑みが零れる。しかし、今は転移魔法を試す事が最優先である。
「これから転移魔法陣が本当に動くのか確かめる」
「坊っちゃま、自らですか!? 危険です。お止め下さい!」
「止めるな、ギル。この転移魔法陣は大量の魔力を消費する上に魔力を注いだ人間しか転移出来ないのだ」
「それは坊っちゃまの魔力量ならば可能だと?」
「ああ。だから、俺が適任なんだ」
「理由は分かりました。ですが、ここは一度お戻りになられても良いはずです」
「すまない、ギル。俺が死んだ時は父上と母上には俺が馬鹿だったと報告してくれ」
レオルドはおそらく止められるであろうと予想していた。故に、気付かれない内に魔力を注いで魔法陣を起動させていた。
後は転移魔法が発動するまでの時間、どう稼ぐか問題だったが、それも無事に解決した。
転移魔法陣はレオルドが説明したように魔力を大量に消費することは無い。ただし、ある程度は消費するが負担は大きくない。
そして、魔力を注いた本人しか転移出来ないというのも真っ赤な嘘だ。魔法陣に乗っている者なら全員転移が可能である。今はレオルドしか乗っていない。
ただ、レオルドが嘘をついたのはレオルドが直した魔法陣がきちんと動くか心配だったからだ。
本に記されてる通りに描いただけだから、間違っているかもしれない。もしも、間違えていたらどのような事が起こるか分からないレオルドは三人を巻き込みたくはなかった。
だから、レオルドは自分一人だけで転移を試みた。
光り輝き出した転移魔法陣は一際大きく光を放ち、あまりの光に三人は目を開けてられずに目を閉じてしまう。そして、目を開けた時、レオルドの姿は無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます