第83話 言ってること違うじゃん!
見事、ミスリルゴーレムを打ち倒した四人は古代遺跡の最深部である奥の部屋へと足を進める。
最奥の部屋へ入ると、四人の目に飛び込んできたのは広大な部屋に大量の書物が保管されている本棚。そして、その部屋の中心には巨大な魔法陣が足元に描かれていた。
レオルドは驚きのあまり固まっている三人を置いて、一人先走り魔法陣へと駆け寄る。土下座するように跪いてレオルドは魔法陣を確かめる。
真人の記憶にあるゲームと同じならば、床に描かれている魔法陣はレオルドが望んでいる転移魔法陣だからだ。
そして、魔法陣の全容を確かめ終わるとレオルドは顔を上げる。真人の記憶にあった転移魔法陣だと確信したレオルドは嬉しさのあまり小さくガッツポーズする。
レオルドが一人喜びにガッツポーズをしている所へ三人が近づく。足音に気が付いたレオルドは振り返って三人の顔を見る。
「ありがとう。お前達がいたから、俺はここまで来れた。本当に感謝しかない」
「それはいいのですが、ここは一体……?」
「そうだな。分からなくても仕方がない。ここは失われた古代文明の名残だ。そして、俺達の足元に描かれている魔法陣は伝説の転移魔法を発動させるものだ」
「なっ!?」
「そ、それは本当なのですか!?」
「驚くのも無理はないだろう。だが、正真正銘本物の転移魔法陣だ。ただ、所々魔法陣が壊れている箇所がある。それさえ修復出来れば、発動は可能だろう」
「お待ちください。レオルド様、貴方は一体どこまでご存知なのですか?」
イザベルはどうしてここまでレオルドが詳しいのか気になって仕方がなかった。それもそのはずだ。何せ、レオルドが説明した転移魔法は失われた古代文明であり、伝説の存在だ。
名前は知っていてもおかしくは無いが、見たこともない魔法陣をどうして転移魔法だと断定する事が出来ようか。少なくとも考古学者くらいの知識はないといけないだろう。
しかし、どう考えてもレオルドに考古学者程の知識があるようには思えない。だが、レオルドは公爵家の人間だ。もしかしたら、転移魔法陣に関する資料も入手している可能性もある。
「悪いがお前に話すことではない」
「ッ! では、ミスリルゴーレムの討伐に貢献した報酬と言うのは如何でしょうか?」
「そこまでして聞きたいことか?」
「はい。何故、この魔法陣が転移魔法だと断定出来るのか。その確固たる証明をお聞きしたいのです」
「ふむ……」
レオルドは焦った。どのように説明すれば納得するのだろうかと。
確かに、言われてみればレオルド以外の三人は転移魔法など聞いた事はあっても見た事は無いだろう。そもそも、失われた魔法の一つなのだから見た事がなくて当たり前だ。
なのに、レオルドは見た事もないはずの転移魔法陣を知っていた。これは問い質されてもおかしくはない。
だが、レオルドは答える事が出来ない。真人の記憶にあるゲームの知識だと言っても信じられないだろう。
誤魔化そうにもイザベルは先程のミスリルゴーレムで多大なる貢献をした。イザベルがいなければミスリルゴーレムは倒せていなかったかもしれない。
その貢献した報酬としてイザベルはレオルドから聞き出したいのだ。足元に描かれている魔法陣が転移魔法だと言う証明を。
「やはり、ダメだ。教える事は出来ん」
「何故ですか! それ程までに言えないことだと?」
「その通りだ」
「でしたら、一つだけお聞かせください」
「なんだ?」
「王族が……国王陛下が望まれてもご説明は出来ないと?」
「……ああ」
「っ……そうですか。わかりました。この話は忘れてください」
もしも、本当に国王陛下が望まれたらレオルドには拒否権は無いだろう。それでも、喋らないのなら罪に問われて、最悪死刑も有り得る。
つまり、レオルドにとっては命よりも大事なものなのだとイザベルは理解した。きっと、これから先もレオルドには驚かされることになるだろう。
(言ったところで、誰が信じる。実はこの世界はゲームなんですって……)
ゲームと瓜二つな現実だ。真人の記憶にある知識はこの世界でも通じる。そして、ゲームの攻略知識は役に立ち、残酷な未来を教えてくれた。
自分が死ぬという未来を。
自分は主人公ではなく、序盤に出てくる
そんな未来を避ける為に今は足掻いているのだ。理解して貰いたいとは思わない。これは、誰がどう見ても醜いエゴなのだから。
それこそ、今発見した転移魔法陣も本来ならば
レオルドの勝手な都合で。
だが、それでもレオルドは死にたくないからねじ曲げるのだ。悲惨な最後は絶対に御免だと、レオルドは最初に誓った。
必ずや運命に抗い、死を回避して、生き残るのだと。
ただ、臆病者な部分もあるので国とは対立したくないという気持ちもある。先程イザベルに聞かれた時は強がっていたが、実際に聞かれることになったらレオルドは間違いなく喋るだろう。
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