第15話 伝説のアイテムって大体使わず終わるよね

 翌朝、レオルドは朝食を済ませると昨夜に調べていた不死鳥の事をギルバートに聞いてみる事にした。


「ギル。聞きたいことがあるのだが、お前は不死鳥についてどれだけ知っている?」


「不死鳥ですか? そうですな。一般的な伝説程度しか知りません。不死鳥の涙はあらゆる病を癒し、不死鳥の血は飲めば永遠の若さを手に入れられる。不死鳥の肉を食えば不死になれる。不死鳥の尾羽は死者を蘇らせる。とこのくらいです」


「そうか……」


(ゲームには無かった説明だな。不死鳥の尾羽は存在したけど不死鳥自体はいなかった。でも、探せばいるのかもしれないな。ただ、どこにいるかわからないし、そもそも俺はここから動いていいのか分からないから、どうしようもないな)


「何かお困りごとでしょうか?」


「……ギル。不死鳥について詳しく知りたい。情報を集めることは出来るか?」


「お任せください」


「理由は聞かないのか……?」


「今の坊ちゃまからは邪な気配が感じられませんので」


「そう……か。なら、頼む」


「はっ!」


 照れてしまったレオルドは恥ずかしさにそっぽを向いてしまう。


 午前中、ギルバートと組み手を行っている最中にレオルドはバルバロトの現状を聞いてみた。


「今、バルバロト達はどうなっているんだ?」


「申し訳ありません。私も詳しく把握しておりませんので」


「そうか……」


 流石のギルバートもバルバロトの現状は把握していなかった。落胆してしまうレオルドだが、常に自分の側にいるのだから仕方がないかと割り切る。


 剣の稽古が無くなったからといって午後は何もしないと言う事はない。ギルバートと組み手を行うのだ。

 相変わらず一撃当てる事も出来ずにボコボコにされるレオルド。


「こっのぉ!」


「ほう。無詠唱ですか。素晴らしいですが、その精度に威力では虫すら殺せませんぞ!」


「ぐがぁっ!」


 ギルバートに向けて水属性の魔法を撃ち込んだレオルドだが、ギルバートはいとも容易く魔法を掻き消してレオルドを蹴り飛ばす。

 まだまだ豚みたいな体型のレオルドを、まるでボールのように蹴り飛ばしてしまうのだからギルバートの強さは底が知れない。


「まだだ……!」


「その意気です。さあ、時間はまだまだありますぞ!」


「うおおおおおお!」


 突っ込むレオルドは殴られ、蹴られ、投げ飛ばされて地面に倒れる。しかし、何度も叩きのめされたレオルドは諦めなかった。


 せめて、今日こそは一撃入れるのだと奮起する。しかし、毎日同じ事を思って頑張っているのだが実を結んだ事はない。残念ながら、今のレオルドがギルバートに一撃を入れることは砂漠の中から一粒の米を探すくらい難しい。


 ただ、それでもレオルドは諦めない。何故ならば、ギルバートにいつまで経っても勝てないようでは死亡と言うバッドエンドを覆す事が出来ないから。

 その為には痩せて、かつて金獅子と呼ばれていた神童レオルドにならなければいけない。


 だったら、この程度で音を上げるわけにはいかないのだ。

 だけど、意気込みは立派でも実力が伴わないので今日もギルバートに叩き潰されてしまうレオルドなのだった。


 目が覚めたらベッドの上で、自身の不甲斐無さに嫌気が差す。

 しかし、凹たれていてもお腹は減るので、ベッドから起きると食堂へと向かった。食堂には既に料理が並べられており、後はレオルドを呼ぶだけとなっていた。


 だが、レオルドが呼び出す前に来てしまい、使用人は慌ててしまう。そういう反応を見ると、悲しくなってしまうが、レオルドは出来るだけ優しく声を掛ける。


「良い。気にするな。俺が早くに来てしまったのがいけないんだ。引き続き仕事を続けてくれ」


「は、はいぃ!」


 優しい口調で使用人を許したレオルドに使用人は頭を下げると足早に食堂を出て行く。その姿を見たレオルドは、やはり自分は恐れられているのだろうと、ほんの少し肩を落とすのであった。


 夕食を済ませたレオルドは、いつものように魔法の勉強を始める。

 とは言っても、ほとんどの事はゲームの内容と変わらないので大した意味は無い。知力が向上するわけも無いので効果があるかは分からない。それでも、魔法の勉強をするのは単純に面白いからである。


 レオルドの潜在能力に真人の記憶があるのだから、魔法については飛躍的に成長するのだからつまらないわけがない。


 だからといって、調子に乗るとギルバートやバルバロトにこっぴどくやられるのだが。

 二人との稽古では魔法の使用も許可されているが新しい魔法を使えば、その度に手酷く痛めつけられる。


 新しい魔法を覚えたからといって調子に乗ってはいけないと戒めてくれているのだが、毎回気絶するまで続けるのはどうかと思う。


「さて、今日はここまでにしておくか」


 本を閉じて、窓の外を見てみると真っ暗になっていた。

 闇夜を月が照らし、僅かな光が窓から差し込んでいるのを見ながらレオルドは眠りに就く。

 途中、深夜に目が覚めてお腹が空いたレオルドが厨房にこっそり向かっている所をギルバートに捕まるというのも日常になっていた。

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