第6話 原作勢の会話っている?

 レオルドの辺境行きがあれよあれよと進んでいる時、学園の方ではレオルド退学の話で盛り上がっていた。


 調子に乗っていたレオルドは数多くの悪事を働いていたから、多くの学生から嫌われていた。

 反抗しようにも公爵家という立場の人間だから誰も反抗できずにいたので、今回の件は学生たちにとっては最高の話題なのだ。


 しかし、中には喜べない者もいる。それはレオルドに付き従っていた者達だ。

 今回はレオルドのみが学園を退学となっているが、レオルドに従って悪事を働いていた学生達は後ろ盾が無くなったので次は自分達も危ないのではと危惧している。


「どうする、これから?」


「どうするもこうするも俺達は悪くないんだ! 全部、レオルド様の所為にしとけばいいんだよ!」


 などと言っているが自ら進んで悪事を働いた者達もいる。レオルド一人に全ての罪をなすりつけようとするが、果たして上手くいくかは分からない。


 一方でレオルドとは別の意味で有名になった者もいる。運命48の主人公にして、レオルドとの決闘で勝利したジークフリート。

 彼は今学園中で噂されている。おかげで、質問攻めされるのだが毎回とある女子生徒に助けられている。


「はいはい。これ以上はジークが困るから、ここらでお終いね」


 ジークフリートを囲んでいる生徒達を掻き分けて、手をパンパンと軽く叩いて囲んでいた生徒達を解散させるのは、運命48のメインヒロインが一人、エリナ・ヴァンシュタイン。

 エリナはレオルドと同じくアルガベイン王国の公爵家である。

 ただし、レオルドとは違い多くの者から慕われている。


「大変ねー。貴方も」


「助かったよ、エリナ。でも、もう少し早く助けてくれないか?」


「何言ってるのよ。これでも早いほうよ。あの人数を掻き分けて通るのは苦労するのよ?」


「む、そうか。なら、言い直そう。助けてくれてありがとな」


「どういたしまして」


 笑い合う二人に周囲の人間は色々と考察する。一体どういう関係なのだろうかと。

 そんな二人の間に割り込むように一人の女子生徒が現れる。


「ごめんなさい。私の所為でジーク君に迷惑を掛けちゃって……」


「謝る事なんてないさ! 悪いのは全部レオルドの所為だから、クラリスが謝る必要なんてない!」


「でも、私の所為でジーク君は決闘する羽目になったんだし、やっぱり私の所為だよ」


「もう! クラリス。貴方のそういうところはダメよ。ジークの言うとおり、全部レオルドが原因なの。そもそも、あいつが貴女に酷い事をしたのがいけないんだから」


 謝ってばかりのクラリスをジークとエリナは慰める。そんな二人の甲斐もあってクラリスも落ち着いた。

 三人が絡むのは原作通りで、最初に主人公であるジークフリートが出会うのはエリナだ。エリナとは学園を受験する時に仲良くなっている。流石はエロゲの主人公である。


 エリナは受験前から話題の人となっていたが、ジークは知らなかった。容姿端麗に頭脳明晰な上に公爵家のご令嬢ときた。噂にならないわけがない。魔法の才にも溢れているので、神に愛されているかのような存在だ。実際に原作者かみさまに愛されているわけだが。


「それよりもレオルドが退学になったって本当か?」


「ええ、本当よ。噂になっているけど事実で間違いないわ」


「そうか……悪いことをしちまったな」


「何を言ってるのよ! あんな屑は退学になって当然よ! むしろ、私は貴方がレオルドと決闘すると聞いた時はついにあの豚が死ぬのね――って思ったんだから」


「流石に俺は殺さないさ。そこまで憎い相手でもなかったし」


「ジークは知らないんだろうけど、決闘で勝った場合なんでもしていいのよ。例えば、レオルドを処刑することだって出来たんだから」


「物騒な事を言うな!? てか、決闘で勝ったらそんなことできるのか?」


「国で決められている法だから可能よ」


 事実である。だが、ジークに限った話ではない。大半の生徒が知らないのだ。

 そもそも決闘など滅多にしないのだから、知らないのも無理はない。


「なら、クラリスに決めてもらえばよかったな」


「わ、私? 決闘で勝ったのはジーク君だよ!?」


「いや、確かに俺が戦って勝ったけど、被害にあってたのはクラリスだろ? だから、クラリスが望むようにしてあげればよかったなって」


「別にいいよ。私はもう何の関係もなくなったから、それだけで十分だよ」


「優しいわね、クラリスはー!」


 そう言ったエリナがクラリスを抱きしめる。庇護欲を刺激するクラリスにエリナは我慢が出来なかったようだ。


「まあ、あの豚にクラリスは勿体ないのよ。豚は豚らしく豚と結婚でもしてればいいのよ」


「随分な言い様だな~。昔、なにかあったのか?」


「ほら、一応豚でも公爵家でしょ? 多少の交流はあったのよ」


「あー、そういうことか」


 原作でもその辺りについては言及されている。エリナとレオルドは過去に何度か社交界で会っているが知人という関係である。

 かつて神童と呼ばれた頃のレオルドを知っているが、聡明なエリナは子供の頃からレオルドの人間性を見抜いていたので知人という関係から進展させなかったのだ。


「この話は終わりにしましょ。今度、授業で行われる野外研修の話でもしましょう」


「そうだな。いつまでも同じ話題じゃ飽きるしな」


「私、野外研修で野営をするって聞いたんですが――」


 こうして運命48の世界は進んでいく。レオルドが退場した舞台はどのような展開を見せるのかは神のみぞ知るところだ。

 もちろん、レオルドも関わる事が出来ればどういう展開になっていくのか分かるがレオルドは辺境に飛ばされるので関与できないのであった。

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