第3話 やる気はあっても続かない! それがダイエット!

 レオルドの決闘騒ぎから、三日が経過していた。その間にレオルドは、本当にここが運命48の世界なのかを調べる為に、学園にある図書室に入り浸っていた。

 三日前は決闘に敗れ、レオルドに真人の記憶が浮かび上がり混乱していた。その後、自室に戻りレオルドは記憶を頼りに運命48について考えていたが、よくよく考えれば荒唐無稽な話だ。


 いくら、運命48に出てきたレオルド・ハーヴェストと同姓同名であり、見た目もそっくりだとは言ってもここが運命48の世界と断定などしてはいけない。

 ただ、レオルドには真人の記憶に加えてレオルドとしての記憶も存在した。

 三日前に決闘した相手はジークフリートで間違いなく、決闘に及んだ理由もクラリス嬢の扱いにジークフリートが激昂してレオルドに突っかかったからだ。

 この点だけで言えば、運命48のシナリオ通りであるから運命48の世界と言っても過言ではない。


 だけど、それだけでは納得出来ないレオルドはこの世界についての知識を得る必要があると判断した。

 勿論、レオルドとしてのこれまで生きてきた記憶が存在するから今更ではあるが。

 それでも、もう一度知らねばならないとレオルドは図書室に入り浸るのだ。


「……あー、ダメだ。否定したかったけど、調べれば調べるほど運命48の世界だ。歴史、地理、人物、それら全てが一致している。やっぱり、ここは運命48の世界なんだろうな……」


 レオルドは先日生きることを誓ったが、早くも心が折れそうになった。

 もしかしたら、この世界はただ運命48に似ているだけで別世界かもしれないという淡い期待があったからだ。


 その期待も音を立てて砕けた。


 しかし、だからと言って完全に希望が絶たれた訳ではない。レオルドには今真人としての記憶も存在しているのだ。

 真人の記憶には運命48のシナリオが全て揃っている。

 つまり、未来の事が分かるのだ。ならば、いくらでも死の未来を回避することは可能なのだ。

 だが、やはり先日に思い浮かんだ世界の強制力が最大の障害とも言える。


 シナリオを改変すれば世界に多大な影響を与える事になる。数多の作品で過去を変えてはいけないと真人は知っている。

 だけど、レオルドは死にたくないのだ。例え、世界を改変してでも生きたいとレオルドは思っている。


 ならば、やるべき事は一つ。


 対策を練ることだ。真人の記憶を使えばいくらでも対策を考えられる。それに加えて、レオルドは攻略ヒロインによってはラスボスとして主人公に立ちはだかるポテンシャルを秘めている。

 つまり、真人の人格が宿った今がチャンスなのだ。

 輝かしい過去の栄光時代に戻るとレオルドは奮起する。


 真人は知っている。運命48の設定資料を読んだから。

 レオルドは過去に金獅子きんじしと呼ばれた神童であることを。


 レオルドはハーヴェスト公爵家に生まれて、甘やかされて育った故に性格が破綻してしまったが、幼少期は純粋な子供であった。

 我が侭や癇癪を起こしていたが、ごく当たり前の子供と同程度であった。

 だが、他の子供とは一線を画すところがあったのだ。


 それは武術の才能。


 貴族の子であるから、幼少時より武術、魔法、礼節、経済学、帝王学と言った学問を学ばされる。

 それらの中で、レオルドが最も得意としたのが武術と魔法であった。


 魔法についてなのだが、この話をするにはまず運命48の世界について語らなければならない。


 運命48は十八禁のエロゲではあるが、シミュレーションRPGである。エロ要素も沢山込められており、エッチに関するパラメーターが存在したりする。

 当然、シミュレーションRPGなので戦闘に関するパラメーターも存在するがエッチのパラメーターに比べるとお粗末な出来である。


 世界観はよくありがちな中世ヨーロッパで、貴族社会が存在している封建制度の世界だ。

 三つの大陸が存在しており、レオルドがいる大陸は元の世界で言うユーラシア大陸である。運命48の地図だとグレイダ大陸となっている。


 このグレイダ大陸には人間と魔物しか住んでいない。野生動物もいるが、数は少ない。魔物の餌になるから。

 魔物と野生動物の違いは、魔物は魔力を宿している事と捕食の為に襲うのではなく殺す為に襲う事が違う点である。野生動物は魔力を宿しておらず、捕食する為には殺すが、それ以外では滅多に他の動物を殺すようなことはしない。


 残り二つの大陸には、人間ではない別の生き物が存在している。アルドア大陸にはエルフ、ドワーフ、獣人といったファンタジー定番の種族が生息している。元々、グレイダ大陸にも存在していたが、人間の浅ましい欲に耐え切れずに別の大陸へと移動した。


 最後の大陸は人外魔境の巣窟となっている。一度、踏み込めば生きては帰れないと言われるクローズ大陸。


 ちなみに運命48の最後に追加されたシナリオには邪神が存在しており、クローズ大陸の最奥にいた。

 有料DLCによって増員された六十四人ものヒロインと結ばれるハーレムルートに突入すると挑む事が出来るが、難易度は極悪だった。

 レベル最大にしてパラメーターを最大値まで強化していても攻略法を間違えれば勝てない敵だった。製作陣がこれでもかと言うほど嫌な要素を盛り込んで、尚且つ運要素まで必要とされていたからだ。


 さて、話がずれてしまったが魔法についてである。

 まず、魔法とは運命48に存在するファンタジー要素の一つである。所謂、物理法則を無視した奇跡の技術だ。


 この世界には魔素と呼ばれる物質が空気中に含まれており、人は魔素を体内に取り込み魔力へと変換して魔力を消費することにより魔法を行使することが出来る。この辺りについてはフィクションなのでと製作陣にあっさりと片付けられたのでフワッとした説明になっている。


 さて、この魔法なのだがレオルドは平均よりも多くの魔力を扱う事が出来るので他者よりも強力な魔法を行使できる。

 だから、レオルドは同年代の子供達よりも強かった。


 そして、武術にも才能があって国で行われている武術大会少年の部で最年少優勝者になった経歴がある。


 しかし、そのせいで増長してしまった。ただ、鍛えれば世界最強とまでは行かないが五指に入る実力を持っていたと公式の設定資料に記されていた。


 現在は残念ながらご覧の有様で、レオルドは豚になっている。おかげで、折角の才能も腐ってしまっている。


「まずはダイエットからだ!」

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