第15話

「魔王!!」


 魔王が俺の方を向き、睨みつけてくる。

 だが俺の手の中にある光の玉に気付き、直ぐにハッとした表情を浮かべた。


「俺のダチに手を出すな!!!」


 俺はそう叫び、震えながらも回収した光の玉を天にかざした。

 俺の気持ちに反応してか、光の玉は眩いばかりの光を放つ。


「ぐおぉぉぉ……」


 魔王の苦しそうな声が聞こえてくるが、俺は眩しくて目を開けられなかった。

 ――少ししてそっと目を開けてみると、魔王を覆っていた禍々しい黒いオーラは消えていた。


「おのれぇぇぇ……雑魚の分際で邪魔しおって! これでもくらえ、ダークボールッ!」


 オーランでさえ避けられなかったものを俺が避けられるはずもなく、ダークボールは俺の腹のど真ん中に当たる。

 鎧がへこみ、衝撃で内臓をやられたのか俺は吐血してしまう。

 

「トモナリさん! よくも……」


 俺は直ぐに布の袋から薬草を取り出し、口に入れた。

 少しずつ体力が回復していく。


「よくも俺の仲間に手を出したなッ!!!」


 オーランの方に視線を向けると、オーランはあの時のように赤い炎のようなオーラに包まれ、立ち上がっていた。

 魔王はビビったのか、後ずさりを始める。

 

オーランは剣を握っていた右手を前に突き出すと、左手で雷を出し、刃に塗るように右から左へ宿していく。


「逃がすかよッ!」

 

 オーランは電光石火の如く、素早い動きをみせ「ライトニング・スラッシュ!!!」

 と、魔王を斬りつける。


「ぐおぉぉ……己……こんな奴らに……」

 

 魔王は捨て台詞を吐きながら、灰となっていった。

 オーランから徐々に赤いオーラが消えていく。


「ふー……」

 と、オーランは息を吐くと、俺の方へと駆け寄ってきた。


「トモナリさん、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だよ」

 

 オーランはニコリと明るい笑顔を見せると「良かった……」

 と、言って、ペタンっと地面に座り込んだ。


「ごめんなさい。すぐに帰りたいと思いますが、少しの間、こうしていて良いですか?」

「別に構わないよ」


 俺達は数分、黙ったまま体を休めた――。


「なぁ、オーラン」

「はい、何でしょう?」

「俺……必要だったか? お前の実力なら、一人でも大丈夫だったんじゃ……」


 オーランが首を横に振り「うぅん。そんな事無いです」

 と、言って俺に擦り寄って来ると、俺の右手を握った。

 女の子みたいに小さくて柔らかいオーランの手は、微かに震えていた。


「震えているの、分かりますか?」

「あぁ」

「僕……本当はとっても臆病なんです。だからトモナリさんが側に居てくれて、トモナリさんが守ってくれたから、僕は勇気が持てて、魔王を倒すことが出来たんです」

「そっか……それなら良かった」


 オーランがスッと立ち上がる。


「そろそろ帰りましょうか?」

「そうだな」

 と、俺も返事をして立ち上がった。


 こうしてオーランとトモナリは無事、魔王討伐を成し遂げ、帰還する。

 ナレーションが始まり、辺りが真っ暗になるとエンドロールが流れる――。

 オーランの活躍が次から次へと流れて来て、そこに俺の姿があると、ちょっぴり恥ずかしかった。


 最後にオーランが崖に立ち、夕焼け空に染まる町を眺めているシーンへと移行する。

 オーランは赤いマントをなびかせ「トモナリさん、ありがとう……」

 と、言った。


 おい、何だか俺が死んだみたいじゃないか。

 そう思うが何も出来ずに、真っ暗な画面に白字でENDと表示される。

 この後はどうなってしまうのだろうか?

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