第14話 魔族との対峙

「おや?完全に不意をついたと思ったのですが、防がれてしまいましたか。」


 攻撃の主は一切悪びれることなく言った。


「なかなかにいい線はいってたわよ。ただ相手が悪かったわね。後、殺気は殺す瞬間でも出さないようにした方がいいわよ。」


「はは、そんなこと出来るのは心を殺したものだけですよ。」


 それに返事するように白雪を振るった。


「魔族だと!?」


 後ろで1人の冒険者が声をあげた。


「魔族?」


 また新しい単語が出てきたわね。まぁそんなのは重要じゃないけど。


「とりあえず聞きたいんだけどあなたは私の敵ってことでいいのよね?」


 私にとって最も重要なことを聞く。


「ええ、敵ですよ。ですので大人しく死んで貰えるとこちらとしては助かりますね。あなたみたいな化け物と戦いたくはありませんので。」


「あら?女性に対して化け物は失礼じゃない?」


 こいつは敵だ。私の敵だ。そうと分かればやることは決まってる。


『絶界』


 私は全てを拒絶する結界を展開した。


「なっ!なんですこれは!?一体何を!?」


「うるさいわよ?さっき自分で言ったじゃない、私の敵だと。だから逃げられないようにした。それだけよ。」


 後ろにいた冒険者たちを巻き込んだのは致し方ないが、逃げられるよりはマシだ。私は茜吹雪と星蒔吹雪を取り出した。


「さぁ、殺しあいましょうか」


 星蒔吹雪の剣先を目の前の魔族に向け唱える。


『凍れ』


 ――私を助けてくれた人はとても不思議な人だった。初対面のはずなのに、何処か安心するんだ。


 私には5人の姉がいる。姉と言っても血は繋がっていない。それに1人はどうしてるかも分からない。


 その人は私たちを守るために自分を犠牲にした。生きていられるかも分からないのに、私たちのために身代わりになった。けど、現実は非情だった。


 結局私たちは死んでしまった。ううんこの場合は殺されたと言った方が正しい。


 殺された私たちは、神様によってこの世界に生まれ変わることが出来た。けど、人としては難しいらしくて私ともう1人の子以外は別の種族になってしまった。


 生まれ変わる時に特別なスキルを貰った。このスキルのおかげで、どれだけ過酷でも生き残ることが出来た。それは他のみんなも同じだったみたい。


 生まれ変わって何年経ったか分からないけど、お姉ちゃん達と会うことが出来た。みんな冒険者になってて、1番上のSランクになってた。


 私とアルもすぐにSランクになることができたけどお姉ちゃん達みたいにはまだなれてない。


 私たち2人がSランクになった時、みんなでまたブレスレットを作った。それは生まれ変わる前にも付けてたものと同じもの。私たちが家族だとわかるようにするもの。


 それと似たものを その人は付けてた。チラッと見えただけだから分からないけど。私たちのと似てた気がする。


 そしてその人は今、魔族と戦っている。私とアルが力を合わせても敵わないと思う。それほど実力の差を感じた。けど、その人は全く気にしていない。魔族の打ち出す魔法を無効化しながら、倍の威力の魔法を打ちだしている。更に両手に持った武器で攻撃もしているから相手からしたら溜まったものじゃないと思う。


 何よりすごいのが、使ってる魔法全てが無詠唱なのだ。それに威力が桁違いなの、多分私が精霊魔法を全力で使ってもあの威力はでないと思う。それを結界を維持しながらしているのだからすごい。


 アルも戦いに目を奪われてる。多分ブレスレットについても気づいてるだと思う。時々何かを考えてるようだし。


 そんなことを考えていると、戦いが終わりそうになっていた。


 ――「なんなのだ!貴様は!どうしてそんな馬鹿げた威力の魔法をうてる!何故魔力が尽きない!貴様は、一体貴様は何者なんだ!?」


 目の前の魔族が何やら喚いてる。魔法のことなどよく知らないから説明などできるわけが無い。ただ一つだけ答えれることがある。それは――


「何者ですって?私は宵桜氷雨。死神よ。」


 私が死神と言うとこだけだ。


「クソがっ!」


 何か、何か方法はないか?この化け物にダメージを与える方法は!?


 魔族は必死に考えた。そして気づいた、気づいてしまった。


 そうか!奴の後ろには冒険者共がいる。そいつらを見捨てることはいくらやつでもしないはず!ならば!


 魔族はエルフの少女に向けて魔法を放ってしまった。


「ッ!」


 私はエルフの少女に魔法が当たる前に手で弾いた。


 ただ咄嗟にやったので素のままだった。その結果、弾いた方は袖がちぎれ、肌からは血が流れ出していた。


 ダメージを与えたことに魔族は喜んでいたが、すぐにその喜びは絶望に変わった。


 なぜなら――


「やってくれたわね。えぇ本当にやってくれたわ。私が1番嫌う行為をよく平然とやってくれたわね。これであなたはもう、敵でもなんでもない。消し去らなきゃいけない存在になったわ。」


 死神の唯一の逆鱗に触れてしまったのだから。


「ひいっ!」


 魔族はその場から逃げようとするが、既に遅い。


「どこに行こうとしてるのかしら?」


 死神の姿が目の前にあった。


「あなたは許されないことをした。ホントはただ殺すだけにしょうと思っていたのだけど、さっきので変わったわ。あなたは存在ごと消し去る。さっきの亀を消し去ったの見てたでしょ?あれと同じことをあなたにするわ。せいぜい己の行いを悔いながら逝きなさい。」


 右手に握った星蒔吹雪に魔力を込め、終わりの一撃を叩き込む。


「虚月」


 それを放った後には魔族は跡形もなく消え去っていた。

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