第13話 スタンピード2
リンドブルムに乗って梓に向かっている最中、スタンピードが起きたこと、私が拠点をそこに移すことを伝えた。
『なるほどスタンピードか。しかし梓とかいう場所は大半が海に面しておったはず。そこまでのスタンピードは起こるはずがないのだがな。』
そんなことをしていると、目的の場所が見えてきた。
都市の半分くらいが海に面している都市だった。
だが、陸の方から魔物が黒い塊となって攻めてきていた。それは都市を覆ってもあまりあるくらいには多かった。
「あなたが降りるとまた騒動が起きるからここまででいいわ。ありがとうね。行くわよアイリス!」
礼を言って私はアイリスと共にリンドブルムの背から飛び降りた。
――一方地上では
「ねぇアル!いくら私たちでもこの数は無理だよ!」
「そうは言っても姉ちゃん達はここを離れてるから俺らで守るしかないだろ!」
2人のエルフが魔物の大群と戦っていた。
「サーリャ!精霊魔法でどうにかならないのか!?」
エルフの少年が質問を投げかけた。
「無理だよ!さっきから呼び掛けてるけどなにかに怯えて力を貸してくれないの!」
それに対し、エルフの少女が答えた。
「くそっ!姉ちゃん達がいない時に攻めて来やがって!」
「スタンピードだから仕方ないよ!それよりも街に被害が出ないようにしないと!」
すると、1匹の魔物がエルフの少女の方に襲いかかった。少女は気づけなかったのか、対応が遅れた。
「あっ」
「サーリャ!」
魔物の牙が少女に触れる直前――
「月華一刀流 弍の型 月影!」
上空から白い影が落ちて来た。
――リンドブルムの背から飛び降りた時、2人組が魔物と対峙しているのが見えた。どちらも並の冒険者ではできない動きをしていることから、ランクが高いことが分かった。だが、決定打に欠けている。あくまで、一定数までは対応できるがそれ以上は押し込まれる。
その証拠に、処理しきれなかった魔物にやられかけている。
「誰か分からないけど、一つ貸しね。」
『
冰刀を作り出し、構えた。そして――
「月華一刀流 弍の型 月影!」
着地と同時に魔物を切り伏せた。
「大丈夫かしら?」
私は尻もちをついている少女に問いかけた。
「う、うん。私は大丈夫。」
「なら良かった。じゃあもう1人を連れて下がってて。」
「無茶だよ!Sランクの私たちでも危ないんだよ!」
「クソッ!」
「アル!?」
いつの間にかエルフの少年の方も押し切られていた。少女は少年に駆け寄る。
「人の心配より、自分たちのことを考えなさい。」
少年に襲いかかっていた魔物を処理しつつ、2人に注意する。
「このままじゃおちおち会話もできないわね。なら――」
魔力を限界まで高め、キーとなる単語を発する。
『凍れ』
その一言で、周囲にいた魔物が凍りついた。
「今のは魔法!?けどこの威力は一体?」
少女が叫ぶが気にせずに次の動作を行う。先程からサーチに大きな反応がある。しかも健全なようでこちらに向かってきている。
目視できる距離に来た魔物の姿は――
「亀?」
巨大な亀だった。それも山一つあるのではないかと思うほどの大きさだった。
「玄武!?なんでこんなところに!?」
「玄武?あの四神の?」
「四神が何かわかないけどお姉さん逃げよう!あれには魔法が効かないんだよ!」
「魔法が効かない?」
「あれには物理しか効果がないんだ。魔法を当てても玄武はその魔力を自らの糧にしてしまうんだ。」
私の問いに、少年が答えた。どうやら復活したようだ。
けど魔法が効かない相手か・・・面白いじゃない!
「ちょっと!何してるの!?魔法は効かないんだよ!?」
「そんなのやってみないと分からないじゃない。私は、やる前から諦めるのは性にあわないの。」
先程の魔法よりも更に魔力を高め、右手を前に突き出した。手のひらには巨大な魔法陣が現れており、そして――
『
白銀色の魔力の奔流が放たれた。
それは、亀の魔物を呑み込んだ――
はずだった。
亀の魔物が口を開くと、その口に魔法が吸い込まれていった。
「へぇー、ほんとに効かないのね。それどころか自分の魔力に変えるなんて、面白いじゃない。」
「だから言ったじゃない!玄武をあれ以上に強くしてどうするの!?もう誰の手にも負えなくなっちゃうよ!」
「まだまだ試したいことがあったけど、もしもの事を考えるとやめた方がいいわね。」
「何言ってんだ!あんたのせいでもうあの玄武は誰の手にも負えなくなったんだぞ!」
「うるさいわね。いいから黙って見ときなさい。」
騒いでる2人を放置し、
以前鑑定の使い方を学んだ時、真っ先に持っている武器の性能を確認した。結果、全て変質していた。その中でもこの星蒔吹雪は異質だった。
魔力を注ぎ、目覚めさせれば一太刀で対象を消滅させる危険極まりないものになっていた。
だが今回はそれが役に立つ。何せ倒すと何が起こるか分からないのだ。ならば消滅させた方が早い。
「起きなさい」
星蒔吹雪に魔力を注ぎ目覚めさせる。すると黒い刀身に夜空のような輝きが現れた。
それを構え――
「月華一刀流 終の型 虚月」
前の世界でも魂を消し去る一撃を玄武に叩き込んだ。本来は抜け殻が残るが、この太刀の影響で抜け殻すら消え去った。
「討伐完了」
太刀を鞘に戻しつつ、そう呟いた。
ふと後ろを見ると、エルフの2人と冒険者たちが惚けていた。
「どうしたの?そんな大口開けて。」
私がそう尋ねると、エルフの少年が、
「あんた一体何者なんだ?」
恐る恐る質問してきた。
「私は――」
その瞬間、展開したイージスに振り下ろされた剣が当たった。
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