第12話 スタンピード1

 ファフニールとの勝負が終わって数日、私は手頃な依頼を探しにギルドにいた。


「おい、聞いたか?東の砂漠が自然豊かになってたらしいぞ。」


「聞いた聞いた。なんでも砂漠になる以前の光景らしいぜ。学者が言うには何らかの魔法が使われたとか。」


「魔法だって?一体どれほど魔力があればできるんだよ?」


 すぅ・・・ヤバイ。めちゃくちゃ話題になってる。だって仕方ないじゃない!私だってあんなことになるなんて思わなかったんだから!


「おはようございます、ヒサメさん。早速で悪いんですが、来て貰えますか?」


 あっ、これバレてるわ。


 ――ギルマスの部屋にて


「さて、早速で悪いんじゃが、東の砂漠のことは知っておるな?」


「えぇ、下にいる時周りが話していたから。」


「なら話は早い。率直に聞こう。お主じゃろ?砂漠を蘇らせたのは?」


 あ〜勘づかれてるわ。これ誤魔化したら余計めんどくさい事になりそうね。ここは素直に言うとしますか。


「そうよ。けどこれに関しては意図してやった訳では無いわよ。」


「はぁぁぁぁ。やっぱりそうじゃったかぁ。一応、理由も聞いておこう。」


「ファフニールとの勝負で環境がとんでもないことになったから、元に戻そうと再生魔法使ったら――」


「再生魔法じゃと!?」


「な、何よ?」


「お主それは本当に言っとるのか?」


「そ、そうですよ!冗談なら辞めてくださいよ!」


 何やら2人が慌ててるけどそんなにまずいものなの?


「本当のことだけど、ステータス見る?」


「「見る・・・」」


 そういえばステータスって久しぶりに開くわね。どうなってるのかしら?


 名前:宵桜氷雨よざくらひさめ Lv不明

 種族:龍人

 職業:死神

 HP:ERROR

 MP:ERROR

 攻撃力:ERROR

 防御力:ERROR

 スピード:ERROR


 スキル:

 剣術:MAX 弓術:MAX 格闘術:MAX 暗殺術MAX

 糸術:MAX 槍術:MAX 大鎌:MAX 刀術:MAX

 短剣術:MAX 鍛治:MAX 裁縫:MAX

 闘氣 、 千里眼、 神速、 剛力、 隠密、 気配同化、 気配感知、 再生魔法、 月魔法、 風魔法、 爆裂魔法、 龍魔法、 無属性魔法、 魔法創造、 隠蔽、 無限倉庫アイテムボックス、 鑑定、 魔眼、 天照大神の加護、 月詠の加護


 あら?なんか2つほど増えてるわね?なんでかしら?


「本当に持っとるのう・・・これは面倒なことになりそうじゃ。」


「ヒ、ヒサメさん、あなた一体何者なんですか?こんなのSランクでも有り得ませんよ。」


「そうじゃのう。確かに最初から何かおかしかったがこれは異常じゃ。魔法の取得速度も、何より魔法の創造など有り得ん。」


 あぁ、ここでも私は異質なんだ。


「異常、ね。これまで何回聞いた言葉かしら。一体どこで歪み始めたのかしらね。」


「ヒ、ヒサメさん?」


「いいわ、教えるわよ。ただしこれを聞けばもう逃げられなくなるわよ?」


「そこまでのものなのか?」


「えぇ、少なくともこの国の王様が関係はしてるわ。」


「いいじゃろう。」


「わ、私も聞きます。」


「いいわ。まず、言えることは私はこの世界の住民じゃないわ。勇者召喚で間違えて連れてこられたのよ。」


 そこから私は、ギルドに来るまでの経緯を話した。それ以外にも、元は人間だったこと、前の世界では死神と呼ばれていたこと。それらを話し終えた時部屋の中は重い空気に包まれていた。


「さて、話し終えたけど質問はある?」


「お主が別の世界から来たのは理解したが、スキルについてはどう説明するんじゃ?」


「あれはこっちに来る前に取得してたものよ。それがこっちに来る時にスキルとして表示されただけ。魔法については全部こっちで習得したわ。」


「なるほど。これはこのままではいかんのう。」


「はい、スキルがないと思われてた人物が、実はとんでもない強さを秘めていたと知られると騒ぎになります。」


「そこでじゃ、お主他の国に興味はあるかのう?」


「ちょっと待って、話の繋がりが見えないのだけど。」


「何、簡単な話じゃ。この国で騒ぎになるのなら他の国へ行けば良い。主の強さなら少しくらい問題を抱えておっても重宝されるじゃろ。」


「ヒサメさんなら、大丈夫ですよ!」


 どうしてそこまでするのか?私には理解が出来なかった。


「どうしてそこまでするの?あなた達にとって関わりを絶った方が得になるんじゃないの?」


 このことを隠せば彼らの立場などが危うくなるのは明らかだった。それでもこちらの味方であろうとする気持ちが分からなかった。


「儂らが見捨てるとでも?それこそ有り得んわ。ここは冒険者が集まる場所、冒険者など一つや二つ問題を抱えとるものよ。それで、どうするんじゃ?」


 この人達は大丈夫。何故かそう思えてしまった。そして何故か向こうの世界にいる部下たちと被って見えた。


「興味はあるわ。」


 そう答えるので精一杯だった。


「なら良い。すぐにでも紹介を書こう。場所は水の都、あずさでいいじゃろう。ほれ、お主は下に行ってミーコに手続きして貰っとれ。」


 そういって私は部屋を出された。


 下に行きミーコに手続きしてもらおうとした時――


「大変だぁ!梓でスタンピードが発生した!それも過去最大のだ!」


 戻って来た冒険者の1人が大声で叫んだ。すると一気にギルド内が騒がしくなった。


 スタンピード――


 確か魔物が異常な数に増え、近くの街などを襲う現象だったっけ。


 それに梓は私が移動する場所だったはずだ。私はミーコの所へ急いだ。


「ミーコ!梓のある場所って分かる!?」


「分かりますけど、ここからだと時間がかかります。」


「場所さえ分かればいいわ!それより手続きは私がいないとできないもの?」


「いえ、向こうのギルドへの連絡ぐらいです!」


「だったらギルマスに伝えて、今まで世話になったわと。」


 ギルマスへの伝言をミーコに頼むと私はギルドを飛び出した。


 ――アイリスを宿に迎えに行った後私はリンドブルムの所へ向かった。


「リンドブルムいる?」


 山頂付近で叫ぶとリンドブルムがやってきた。


「なんだ主か、そんなに慌ててどうした?」


「説明は後でするわ、それより梓って所までどのぐらいで着く?」


「ふむ、そこだったら数分で着くぞ。」


「OK。急ぎで私をそこに連れてって!」


「何やら訳アリのようだな。いいだろう!我の背にのが良い!」


「ありがとう。」


 こうして私は、リンドブルムに乗って梓へと向かった。

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