第11話 少女、本気を出す
リンドブルムが来たことによる騒動から数日、街は落ち着きを取り戻していた。
この数日間私は依頼をこなしながら、魔法の使い方を研究していた。
その結果、使えるようになったのが――
魔力を広げることにより、その範囲を探知するサーチ
魔力を身体の細胞単位で染み込ませて、身体能力を向上させるブースト
周囲の魔力を硬め盾として使用するイージス
魔力を属性に変換せずに使用することから、世間では無属性魔法と呼ばれている。
本当は属性魔法を研究したかったが、どれほどの威力が出るか分からないので、やめておいた。
そして今日は、ファフニールと勝負をすることになっている。
現在私はファフニールの背に乗り、被害が極力出ない場所に向かっている。もちろんアイリスも一緒だ。あれから、アイリスは私と一緒に行動をしていて、話し方も上達している。
――しばらくして目的地に着いた。どうやら見た感じは砂漠のようだ。確かにここならどれだけ暴れても大丈夫そうだ。
『ここなら大丈夫です。早速やりましょうか。』
既に戦闘体制に入って、ファフニールが話しかけてくる。
「いいわよ。やるからには全力でやりましょうか。」
私は冰刀を作り出しながら言った。
ここなら魔法も色々と試せそうね。ごめんけど試させてもらうわ。
「では、我が合図を出そう。それでは――」
リンドブルムが人化し、右手をあげた。
「はじめっ!」
右手が振り下ろされた。
瞬間私は抜刀の構えをしながらファフニールに接近し――
「まずは小手調べよ!月華一刀流 壱の型 孤月!」
神速の一撃を繰り出した。
しかし、その一撃は金色の鱗に弾かれてしまった。
『いい攻撃ですが、私の鱗にを切り裂くには威力が足りませんね。ではこちらの番です。』
そういうとファフニールはブレスを撃ち出してきた。
「ッ!イージス!」
即座にイージスを展開。それも10枚同時に。だがそれでも防ぎきれないのか、5枚まで一気に割られた。
このままでは危ないわね、何かないかしら。属性魔法・・・はまだひとつしか使えない。けどやるしかない!
『私のブレスが!?』
「
氷で作り出した槍を投げつける!更に投げる瞬間に風を操作して抵抗をなくし、爆発で威力を底上げする!
風魔法を獲得しました
爆裂魔法を獲得しました
威力が底上げされた冰槍は、ファフニールの翼に穴を開けた。
『翼が!?』
「よそ見してんじゃないわよ!」
足元に圧縮した空気を解放して、その勢いで加速、そのままたたき落とす!
「ガントレット!」
『くっ!なめないで!』
尻尾による一撃が私に迫る。けど――
「破拳!」
裏拳による一撃で弾いた後、
「月影落とし!」
一回転し遠心力を付けたかかと落としを頭部に当てた。
これじゃまだ決定打にはならない。なら、魔法を撃ち込む!
魔法はイメージでどうとでもなると、何故か詳しい部下が言っていた。なら、この場を全て凍らせてしまえば、動きを止めれるはず。
「
呟いた瞬間、砂漠は一瞬にして氷に覆われた。
『なっ!?何このふざけた威力の魔法は!?私の耐性を軽く上回ってる!?』
動きが止まってるうちに最大威力を叩き込む!
魔力を限界まで圧縮、属性への変換は無しでいい。ただそのままで限界まで圧縮する。イメージするはさっきのブレス!全てを否定する一撃を撃ち込む!
「
それが放たれた時、触れた地面は一瞬にして蒸発した。
『な、めるなぁ!』
ファフニールの咆哮により、龍の咆哮が霧散した。
やっぱり、まだ足りない!ならば!
イメージするは、全てを薙ぎ倒す聖槍。その名は――
「ロンゴミニアド!!」
『
2つの魔力の塊が衝突したことにより、砂漠に大爆発が発生した。その余波はかなり離れていたはずのリンドブルム達の所ににも届いた。
「えぐいほど派手にやっとるなぁ。戦いの余波がここまで来るとわ。」
その間にも爆音と衝撃がリンドブルムのところに届く。
「そろそろ止めねば地形どころか環境まで変わってしまうな。」
『パパそろそろヒサメたち止めに行くの?』
「そうだな、止めに行くか。」
――その頃
「
『雷撃!』
「『まだまだァ!』」
砂漠だった場所は吹雪と雷が吹き荒れ、所々がガラスに変化していたり、マグマが出来ていたり、氷に覆われたりとまるで禁域のようになっていた。
「既に手遅れであったかぁ。これはすぐにでも止めねば更に酷くなるな。」
そういうとリンドブルムは息を大きく吸い込み――
「両者そこまで!!」
空気が震えるくらいの大声で静止をかけた。
「『なんで止めるのよ!?』」
驚きのレベルで息が合っている。
「むしろこの有様を見て何故止めぬと思ったか、逆に教えて貰いたいわ。」
リンドブルムは呆れたように言った。
『ママたちすごい!』
アイリスは興奮していた。
周りを見てみると辺りが地獄のようになっていた。
「何この地獄絵図?」
「お主らの戦った後に決まっておろう。」
「これって元に戻せるの?」
戻せなかったら、周囲一帯が立ち入り禁止になりそうだ。
「戻せると思うか?」
「いや全く。時間が戻せれば出来るんだけどねぇ。」
『そんなこと出来るのは神様くらいですよ。せめて大地だけでも再生出来ればいいんですけど。』
「再生ねぇ。ん?」
ステータスを開き確認すると、あった。加護により変化した再生魔法が。
「もしかしたら元に戻せるかも――」
そのつぶやきが聞こえたのか、リンドブルム達が反応してきた。
「どういうことだ?本当に時間を戻せるのか?」
『そんな魔法があるんですか?』
「えぇ、再生魔法が私の予想通りに機能してくれたら戻せると思う。」
ただどこまで再生されるかが分からないことが問題だけど。
「これをこのまましていく方がまずいだろう。どうせ変わるなら、これでは無い方がいい。」
「分かったわ、けどどうなっても知らないからね。」
この場所の風景を思い出す。砂しかない光景を。
さぁ、元に戻そう――
「
その言葉と共に元の砂漠に戻るはずだった。
「なにこれ?」
だが実際は、砂漠ではなく自然豊かな大地になっていた。
「おそらくこの場所が砂漠になる前の状態になったのだろう。」
リンドブルムは冷静に分析したが、私の内心はそれどころではなかった。
何?死んだはずの大地まで復活させたの?この魔法まで気軽に使えないじゃない!
「はぁ、なんか疲れたわ。帰りましょうか。」
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