第6話 少女、冒険者になる 1
階段から降りてきたギルドマスターは、そのまま私の方に向かってきた。
「正確には砕いたのではなく、砕けたのだけどね。」
「ほう?砕けたとな?あの水晶はステータスを測るものだったのだがなぁ。それが砕けたとなると確かめねばならぬことがあるのう。」
「厄介事は勘弁して欲しいのだけど。」
「まぁまぁ、ここでは話しにくいじゃろうから、儂の部屋へ移動せぬか?」
「はぁ、仕方ないわね。元は私が原因だし、良いわよ。」
何かどこに行ってもやらかしてる気がするわ。元の世界だけだと思ってたけど、こっちでも同じだなんて。
私とギルマスともう1名、その場にいた猫耳の受付嬢も一緒にギルマスの部屋へと向かった。
「さて、いきなりで悪いがステータスを見せてくれんかのぉ?」
「別に良いわよ。特に面白くはないでしょうけど。」
ステータスと念じ目の前にボードが現れる。やはり、ERRORだらけだ。
そう思いながら、ボードを見せた。スキルは隠したまま。
「なんじゃこのステータスは!?」
「そんなに驚くことなの?」
「当たり前じゃ。本来数字が表示されるべき所にERRORなど初めてじゃ。それにお主何らかの方法でスキル隠しとるじゃろ?」
「そんなことないわよ。元々なかったのだから。」
なんで勘づかれたのかしら?あの王様でさえ疑問に思わなかったのに。
「それは有り得ぬ。スキルは必ず1つは授けられる、それが世界の理じゃからのう。仮に本当にスキルがなかったとしたら冒険者になることは認められるのう。」
それは困るわね。けど、必ず1つは持ってるなんてそれは隠してると思われるわね。どうしようかしら。帰る方法をこっちで探す以上、お金は必要になる。他の方法で稼ぐにしろ、こっちの世界のことをあまりに知らなすぎる。はぁ、ここは正直に言った方が良さそうね。なんでこうなるのかしら。
「降参よ。確かに私はスキルを隠してるわ。けど誤解しないで貰いたいのは、面倒になる予感がしていたから隠しただけよ。」
「ならいいのじゃが、それより面倒になるスキルとは一体?」
「まぁ見ればわかるわ。」
言いながら私は、隠蔽していたスキルを表示した。
「な、なんじゃこんなスキルの量は?生涯で1つでも最大までいい方と言われておるのに、それがいくつもあるじゃと?儂は夢でも見ておるのか?」
「えっと、ギルマス?そんなにすごいのですか?」
猫耳の受付嬢は見えていないのか、そんな質問をしてくる。
「そうか、お主は見えておらぬのか。ほれ、これじゃ。正直儂でもどうしようか悩むレベルじゃ。」
「えっ?なんですこれ?これが人のステータスなんですか!?それになんです、このスキルの量!練度もともかく異常ですよ!」
「だから悩んどると言ったじゃろ・・・」
「それになんでレベルの表記がないんですか!」
レベル?そんなものがあるの?それを聞いて自分のステータスに目を通してみる。
名前:
種族:龍人
職業:死神
HP:ERROR
MP:ERROR
攻撃力:ERROR
防御力:ERROR
スピード:ERROR
スキル:
剣術:MAX 弓術:MAX 格闘術:MAX 暗殺術MAX
糸術:MAX 槍術:MAX 大鎌:MAX 刀術:MAX
短剣術:MAX 鍛治:MAX 裁縫:MAX
闘氣 千里眼 神速 剛力 隠密 気配同化 気配感知
隠蔽 無限倉庫(アイテムボックス) 鑑定 魔眼
天照大神の加護 月詠の加護
所持品:
茜吹雪 星蒔吹雪 戦略拳銃(神威、村雨) コート
脚甲(フレースヴェルグ)
称号:
死神 陽と月の神に愛されし者
よく見てみると、名前の横にLvとある。けど不明とは一体?
「何かLv不明って書いてあるんだけど?」
「「は?」」
ギルマスと受付嬢の声が被る。
「不明じゃと?ますます意味がわからん。」
「いや、こっちに言われても。それで結局私は冒険者になれるの?」
質問するとギルマスは手を額に置いて考え始めた。しばらく考えたあと、
「なれることはなれるじゃろ。ただ実力が分からんので適当な冒険者と戦って貰うことになるが。」
どうやら戦わないといけないらしい。まぁなれるのなら構わないが。どうもめんどくさい。
「それで構わないわ。」
「助かる。儂もこういったことは初めてじゃから対処方が分からなくてのう。」
「では、私は対戦者を探してきますね。」
はぁ、なんでこんなことになるのかしら。ほんと恨むわよ、神様。
それからしばらくして、ギルドの訓練場に連れていかれた。そこに居たのは、大男と言っても差し支えないほどの冒険者だった。それに強い。恐らく今ギルドにいる中で上の方にいるのだろう。これは楽しめそうだ。
「へぇー、嬢ちゃんが相手か。うっかり殺してしまいそうだか大丈夫なのか?」
あら。心配されてしまったわ。それほどまでに自信があるのかしら?
「問題ないわ。それより後ろのメンバーはあなたの仲間なの?」
大男の後ろには、3人ほどいた。
「そうだ。彼らは俺のパーティーだ。だが安心して欲しい。彼らはこの戦いには参加しない。」
「そうなの?てっきり全員で来ると思っていたのだけど。せっかくだし一緒に来てもいいわよ?」
「ハハッ!面白ことを言う嬢ちゃんだ。もしかして魔法とか使えるのか?」
「いや、今はまだ使えないわ。なんせ触れる機会がなかったから。」
「だったらさっきみたいなことはいはない方がいい。俺たち冒険者の中には荒くれ者もいるからな。」
「ふふっ、大丈夫よ。そういうのには慣れてるし、何より私が戦ってみたいの。」
「嬢ちゃん、そっち系だったか。だか、そういうの嫌いじゃないぜ!」
「ギルマス!いいわよね!?」
私は大声で確認をとる。久々に本気を出せそうなのだ、邪魔などさせない。
するとギルマスは渋々といった感じで首を縦に降った。
大男の方もメンバーと話がついたようだ。
「すまんな、仲間を説得するのに手間取った。」
大男はそうは言ってが、あまりに時間は経っていない。
「ほんとどうなっても知りせんよ。僕は手加減ができるほど器用な方ではありませんので。」
魔法使いのような格好をした少年が言った。
「そうよそうよ。あたし達全員でいいとか死んでも知らないからね。」
弓矢を持った女性は言う。
「まぁまぁ仕方ありませんよ。このような方を止めるのも私達の役目ですので。」
神官らしき女性が言った。
4対1
これだけ聞けばただのいじめとしか思わないだろう。だが私は興奮していた。この世界では私のことを知るものはいない。私の事を死神と呼び恐れるものもいない。だからだろう、楽しみなのだ。彼らがどう戦うのか?どんなことをしてくるのか?魔法とはどんなものなのか?
「はじめっ!」
戦いの火蓋は切って落とされた。
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